帝国の首都にて
村にいる人間たちを連れて、ケイとセムトが移動する。彼らは森を抜けて、帝国の北門に辿り着いた。セムトが門に向かって、大きな声で叫ぶ。
「帰ってきたよー!!」
閉じられていた扉が開く。セムトは当たり前だと言いたげな顔をして、門を抜けた。ケイは自分たちに気づいていないかのように振る舞っている門番を見ながら、セムトの後に付いていった。首都の大通りは多くの人が行き交う場所だ。大人数で歩けば、どうしても目立つ。ケイはそのことに気づいて、立ち止まった。茗荷が彼女に声をかける。
「私たちは目的の場所を知っておりますので、先に参ります」
前を歩く転生者たちに付き従っていた忍者が全て、彼らから離れて身を隠す。茗荷もそれに倣って姿を消した。ケイは気を遣ってもらったことに対する礼を言おうとしたが、その時にはもう茗荷の姿は見えなくなっていた。セムトがケイの手を引いて歩きだす。アマーリアとマイルズが無言でその後から歩いてくる。4人はそのまま、セムトの屋敷へ向かった。その屋敷は大通りの目立つ場所に建っていた。大きな屋敷だが、人がいる気配はない。ケイは以前そのことを不思議に思っていたが、今はその理由を知っている。セムトは他人を自分の家に入れることを嫌って、人を雇わなかったのだ。人間の顔が見えない大きな屋敷の廊下を歩いて、4人は応接間の中に入る。
「それじゃ、ここで待ってようか。僕が帰ってきたって知ったら、あの子は駆けつけてくると思うから」
セムトは長椅子に座った。ケイは彼の右隣に落ち着いた。長椅子の空いた場所に、アマーリアとマイルズが並んで腰を下ろす。誰も何も喋らない。静寂が続く空間に、ケイが耐えきれなくなった頃。廊下から、人の足音が聞こえてきた。その人間は走っていた。応接間の扉が外から開けられる。ケイはそちらに目線を向けた。息を切らして立っているその人は、セムトと同じくらいの年頃の片眼鏡をかけた青年だった。
「いらっしゃい。久しぶりだね、アーヴァイン」
「……そうですね」
アーヴァインと呼ばれた青年はケイの方に視線を向けて、大きく息を吐き出した。
「子供を連れて魔の森に行ったかと思えば、数日で帰ってくるなどと……貴方の行動にはいつも驚かされますよ。地属性の魔術師らしく、屋敷で大人しくしていてくれれば良いものを……」
「うん、ごめんね。ちょっと君に話があって、戻ってきたんだ」
「話ですか。貴方から聞く話は、嫌な気しかしませんが……」
「そんなこと言わないで、ね? 君が今の地位に居られるのだって、僕が手伝ってあげたからでしょ?」
「…………ええ。残念なことに、そうなりますね」
アーヴァインはそう言って、ため息をついた。




