話の流れ
茗荷はため息をついた。
「……貴方は、貴方自身の価値に気づいていらっしゃらないのですか?」
ケイは戸惑ったような声を出した。
「それは……みんながボクに優しくしてくれるのは、ボクが農民で力がないからです。それだけだと思いますけど……」
「では、貴方の横にいる男については、どう思っているのですか?」
ケイは困った顔でセムトの方を見た。
「セムトは……えっと、その……ボクじゃなくても、良かったと思います。たまたまボクが最初に出会っただけだから」
セムトが笑みを深めて口を開く。
「そうかもね。でも、今はケイじゃなきゃダメだよ」
そのやり取りを見て、茗荷が目を細める。
「……何が有ったのか、お聞きしても?」
「ええと……話してもいいんですけど、信じてもらえないと思うので……」
「たとえ生まれる前の出来事だと言われたとしても、私は信じます。話してください」
茗荷は迷いなく言いきった。ケイは目を見開いた。
「……気づいていたんですか?」
茗荷は淡々とした声で言葉を発した。
「貴方は神官や魔術師、格闘家と、昔からの友人であるかのように振る舞っていらっしゃる。貴方の年から考えても、この世に生まれてから出会ったにしては不自然です」
ケイは彼の言葉に頷いて、話を続けた。
「……そっか、確かに。茗荷さんが考えているとおりです。ボクはこの世界に転生した人間で、この世界はボクが遊んでいたゲーム……えっと、作り物の中の世界と同じなんです」
「この世界が作り物だと仰るのですね。では、貴方はこの戦争の結末を知っているのですか?」
「いいえ。ボクは、この戦争が終わったのを、見たことがありません。それに、ボクが知っている戦いでは、人が死ぬことはないんです。この世界は似ているだけで、別のものだと思います」
『幻想大戦』はプレイヤーが3つの陣営に分かれて強さを競うゲームだ。世界に存在する3つの国の争いが終われば、プレイヤーが戦う理由もなくなる。だからそのゲームの中では、戦争は絶対に終わらない。ケイはそのことを知っていた。茗荷はケイの言葉を聞いて、真剣な表情になった。
「私はこの戦争を終わらせたいと思っています。1つの国が森に囲まれたこの地域を統一すれば、争う理由はなくなると。私はそれが黒鳶であると信じていました。ですが、貴方が新たな国を作ってこの地を統一してくださるのであれば、私は貴方に協力します。貴方は、どちらを選ばれますか?」
ケイは少し考えて、答えを返した。
「……ボクには、何の力もありません。それは、ボクだけで判断できることではないと思います。……1晩、考えさせてください」




