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無能力者、最強チートな奇人変人に好かれて大陸を統一する。  作者: 文字書きA


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30/80

それは茗荷(みょうが)風鈴(ふうりん)が家に()もって話していたのと同じ時間に起きた出来事。食器を片付けたマイルズが戻ってくる。何かが破裂するような轟音が森に響き渡る。木々が根本から折れて倒れていく。忍者たちが音に驚いて、家から出てきた。アマーリアが(ロッド)を取り出す。


絡め取れ天の網(cupofielux)


光の糸が忍者たちの体に巻き付く。


「アマーリアさん?!」


ケイが叫ぶ。アマーリアは穏やかな声で言った。


「耳をすまして、よく聞いて。今ここに攻めてきたのは、クロトビの人たちよ」


ケイは目を閉じて、耳から入ってくる音に意識を集中させた。人々が走る靴の音。木や草が燃えて割れる音。それらに混じって、(とき)の声が聞こえてくる。


(『幻想大戦』は他の誰かと競い合って、より強くなることを目指すゲームだ。この世界では国同士の大規模な戦争も、日常的なことなんだ。……ボクはそれを、知っているはずなのに。足が、動かない)


立ち止まっているケイの肩に、誰かが手を置く。ケイはゆっくりと顔を上げた。


「任せとけ」


マイルズがそう言って笑った。彼は声が聞こえた方に向かって進んでいく。クロトビの軍隊が村に攻め入ろうとした。


入らないで(mosionibus)


アマーリアが忍者たちを捕らえたままで、呪文を唱える。ドーム状の透明な壁が村を包んだ。マイルズが村の周囲を囲む大軍を見ながら、セムトに声をかけた。


「お前はあっち、俺はこっちだ。ケイを守りたいんだろ?」


セムトは無言で頷いて、反対方向に駆けていった。マイルズはそれを見送って、前に向かって走った。


「待って……!」


ケイの言葉は届かない。2人の男は振り返らない。


「心配しなくていいわ。彼らの方が、強いもの」


アマーリアが微笑む。ケイは青ざめた表情で、口を開いた。


「……ボクには、何も出来ないんですね。こんな時に……」


「ケイちゃんは何もしなくてもいいのよ」


「でも、2人がボクを守るために戦ってくれてるんです。アマーリアさんだって、結界を張ってくれてるじゃないですか。ボクが職業(クラス)を変えていたら、少しは皆の役に立てたのに」


「……そうかしら。アタシはケイちゃんが農民で良かったと思うけど」


アマーリアは笑みを深めた。ケイは目を見開いた。


「どうして、ですか?」


「だって、これはゲームじゃないもの。対人戦は楽じゃないのよ。少し手が滑っただけで人を殺してしまう可能性もあるんだから。それにね、ケイちゃん。戦う力が無ければ、相手が油断してくれる。戦場から逃げることも、簡単になるわ。もし私たちが負けて殺されることがあっても、ケイちゃんだけは逃げ()びて、どこか遠くで生きることができる。それは私にとって、他の何よりも嬉しいことだわ」


アマーリアは真顔で告げた。ケイは言葉を失った。

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