忍者たち
茗荷は風鈴と共に近くの小屋に入って、扉を閉めた。
「なあ三、ケイとかいう娘は何者なんだ? あの悪魔のような男を手玉に取っている上に、高位の神官にも可愛がられている。よほどの手練なのでは……」
「俺もそう思って探っているが、現状では何の収穫もない。ケイという娘は農民だ。特別な能力を持たない唯一の職だな」
「……何だと?」
風鈴が鋭い眼差しを茗荷に向けた。
「そんな阿呆な話があるか。あの魔術師は、出会ったばかりの我らに《種》を植えたのだぞ。娘が農民だというのなら、既に《花》になっているはずだ」
「俺もそう思ったが、娘は《花》になっていない。それどころか、あの魔術師を手懐けて、従えているようだった」
「それは本当の話なのか?」
風鈴は茗荷の言葉を疑っている。当然だ。実際に彼らを見ていた茗荷であっても、信じられないと思っているのだから。
「ああ。姉上も考えていたのではないか? 帝国一帯に根を張る事が出来るほどの魔術師が他の魔術師を食い物にもせず、首都で燻っていたのは何故かと」
風鈴が茗荷に射抜くような視線を向けた。
「お前には、その理由が分かったのか?」
「言えば、姉上に笑われそうだがな」
「笑わないさ。お前は里の中で1番聡い子供だった。その結論はおそらく、最も真実に近いのだろう」
風鈴の言葉を耳にした茗荷は、苦笑を浮かべて口を開いた。
「買い被りだ」
彼は声を潜めて、話を続けた。
「あの魔術師は地属性だ。地属性の人間は、根を張った場所から動かないものだ」
「そうだな」
「だが、あの魔術師は動いた。それも、同じ帝国の領内に移動するのではなく、どの国の領土にも入らぬ魔の森に居を構えている。他の人間に《種》を植えることもなく、地に新たな根を張っているわけでもない。あの男は、自らの属性に抗っているのだ。そんな事が出来る魔術師を、俺は他に知らない。あの男だけが例外なのか、それとも……ここにいる人間が全てそうなのかもしれぬ」
風鈴は無言で先を促した。茗荷はそれに応えて、話を続けた。
「ケイという娘は、まだ若い。村を出たばかりの年に見える。格闘家と神官は同い年だろうな」
「何が言いたい?」
風鈴は首を傾げている。茗荷は彼女に視線を向けて言った。
「此の地に集まっている者たちは、数日前に会ったばかりのはずだと言いたいのさ。娘と他の者とでは年が違いすぎるし、魔術師は帝都から出たことがないのだから当然だ。それなのに、彼らはずっと昔から知り合いだったかのように振る舞う。……まるで、この世に生まれる前に出会っていたようだ」
茗荷はこんな時に嘘や冗談を言うような男ではない。風鈴はその事を知っている。それでも彼女は、彼の言葉を信じられなかった。




