精霊
4人の食事が終わる。それと同時に家の扉が開いて、アマーリアと風鈴が家から出てきた。アマーリアは大輪の薔薇を抱えていた。茗荷がケイに話しかける。
「申し訳ありませぬ。私は姉上と話し合わねばならぬことがありますので、これにて……」
「あ、はい。分かりました」
ケイは茗荷が持っていた食器を受け取って、立ち去る彼を見送った。マイルズが口を開く。
「その花は前と同じように植えるんだろ? 食器を片付けるのは、俺に任せとけ」
彼は4人分の食器を持って去っていった。ケイはアマーリアから薔薇を受け取った。
「これ、どこに植えたらいいんでしょうか。あのツボは、前に植えた花で埋まってますし……」
「大丈夫。同じ場所に植えられるよ」
セムトが花に手を伸ばす。
【分かれて離れていた同じ根を持つ花だから】
ケイが持っている薔薇が薄く光る。家の入り口にある花が同調して、同じ紫色の光を放った。ケイがツボに近づくと、薔薇の形が崩れて重なった。紫色の光の塊はケイの目の前で生きているかのように動いて、再び薔薇を形作った。
「……これ、本当に花なの? というか光になるなら、植えてなくても良いんじゃないの」
「そんなことないよ。地面にちゃんと根を張っている花がないと、他の花も生きていけないもの」
セムトは薔薇の花びらに触れて笑った。
「それにね、花が生きてたら良いこともあるんだよ」
彼の指の先。小さな光が2つ浮かぶ。光が点滅を繰り返す。
「初めまして」
光が声を発した。
「初めまして、お姫様」
呆然としていたケイは、光の声を聞いたことで我に返った。
「あ、うん。初めまして」
光はケイの周囲を回ってから、花の上に乗った。そして何度か点滅してから、完全に消える。セムトが笑みを深めた。
「花の精霊だよ。可愛いでしょ?」
「そうだね」
「あの子達は花が大きくなればなるほど、力を増していくんだよ。大事に育てていれば、あの子たちが実体化できる時間も長くなるんだ。どう? いいこと、あるでしょ?」
「……いいこと、なのかな。人の体に生えてた花から精霊が出てくるなんて……。それに、生まれたばかりの精霊なのに凄く流暢に喋ってたよね。あの精霊たちは、茗荷さんや風鈴さんと繋がってたりするんじゃないの」
「そんなことないよ。ただ、彼らの経験と知識を受け継いでいるだけ。今は接続が切れてるから、この花に何かしたとしても、彼らには何の影響もないんだ」
ケイはセムトの目を見た。彼は真剣な眼差しでケイを見ていた。




