昼食(後編)
「おう、悪いな」
マイルズが鉄板を火にかける。ケイは荷物の中を見た。緑、赤、黒。様々な色に、様々な形。
「この袋に入っているのって、全部食材なんですか?」
「そうなるな。肉類は加工してある。毒を持ってる食材は入ってねえし、火を通せば全部食える。どれでも好きなのを持ってこい。焼いてやるよ」
ケイは緑色の細長い植物と、紐で縛られた茶色い塊を取り出した。まな板代わりの木の板に食材を置いて、ナイフで刻む。彼女はそれを鉄板の上に落とした。マイルズが鉄板を移動させて、全体に満遍なく火を通す。ケイは袋から木製の食器を出して、マイルズに木べらを渡した。
「多くねえか?」
その場にいるのは4人なのに、ケイは6人分の食器を出していた。その事について指摘されると、彼女は遠くにある家を指して言った。
「アマーリアさんはずっと家の中で儀式を行ってて、きっとお腹が空いてると思うんです。風鈴さんも、起きてたら食べたいと思うかもしれませんし……」
「そういうことは気にしなくていいんだよ。あの2人なら、食事くらいは自分たちで用意できるだろ」
マイルズの言葉を聞いたケイは納得して、余った2人分の食器を袋に入れた。マイルズが鉄板を持ち上げて、木べらを使って炒めた食材を食器に移した。ケイはセムトと茗荷に食器を渡した。その後に袋から人数分のパンを取り出して配った。
「美味しそうだね。ケイもこっちに来て食べなよ」
セムトがケイの手を引いて、自分の隣に座るように促す。ケイは自分の分の食事を持って、彼が示す場所に移動した。
「何も考えずに使ったけど、これで良かったのかな」
「この緑のはスピナコスっていって、火を通すと甘くなる野菜だから大丈夫。こっちの茶色のはカランシアの肉を塩漬けにして燻製した物……まあベーコンみたいなものだと思えばいいかな。どっちも普通の食べ物だから、怖がらなくていいよ」
ケイはセムトの言葉を信じて、野菜を口に運んだ。焼いたネギのような甘みと香りが口いっぱいに広がる。ケイは口の中のものを飲み込んで、笑った。
「美味しい……」
「そうでしょ? 僕もこれ、好きなんだ。ケイが気に入ってくれて良かった」
セムトがケイに笑いかける。マイルズは食事には手を付けずに、同席している茗荷に目を向けた。茗荷は既に食事を済ませている。
(俺もサッサと食うか)
セムトはケイに気を取られて、他のことが目に入っていない。茗荷は凄腕の忍者だ。目を離せば何をするか分からない。そう思って、マイルズは手早く食事を終わらせた、




