生き方
ケイがジョウロとスコップを片付けた、その時。家の扉が開いて、アマーリアと茗荷が外に出てきた。ケイは弾かれたようにそちらを見た。茗荷が彼女に近寄って、笑いかける。
「貴方のお陰で、私は無事に人に戻ることができ申した。感謝してもしきれませぬ」
ケイは目を見開いた。
「ええと……ボクは何もしてないですよ? 《花》を取り除いてくれたのはアマーリアさんですし……」
「いいえ。貴方があの男に進言してくださらなければ、私は一生解放されなかったでしょう。私を助けてくださったのは、間違いなく貴方です」
茗荷がケイを抱き寄せる。ケイは戸惑った。
「だって、それは人として当たり前のことじゃないですか? 人間に種を植えて支配するなんて、間違ってると思います」
茗荷が苦笑を浮かべて目を逸らす。セムトは悪びれる様子もなく言った。
「僕は被害者だよ。帝国に高レベルの魔術師がいることを知ったクロトビの王様が、その人間を殺してこいっていう命令を出したんだって。それを受けて、忍者の人たちが僕を殺しに来たんだ。殺されそうになったから抵抗しただけ。そうでしょ?」
茗荷がセムトを睨みつける。
「……貴様」
セムトは笑顔を崩さなかった。
「あれ? 何か間違ったことを言ったかな。相手の力を見誤ったのは、君たちの方だよね?」
「セムト。言い過ぎだよ」
ケイに窘められて、セムトが黙る。アマーリアが笑いながら口を開いた。
「茗荷くん、だったかしら? セムトに《種》を植え付けられた人が何人いるのか、知っていたら教えてほしいのだけど」
「『蛇』の一族は私の兄と姉を含めて12人。『蛟』の一族は頭領を含めれば14人です」
ケイは驚きの声を上げた。
「てことは、全部で26人ってこと?! ちょっとセムト、いくらなんでもやり過ぎだよ!」
マイルズとアマーリアが目配せで意思疎通する。マイルズがため息と共に言葉を吐き出した。
「ソイツのことを擁護するわけじゃねえがな、26人は少ねえ方だ」
ケイは絶句した。マイルズは彼女に構わず、話を続けた。
「俺とユズは、子供の頃に村を出た。その後に世界中を回ったんだが……。ある町で、ソイツと同じ地属性の魔術師と戦ってな。その町の住人は皆、魔術師の《花》にされていた。人数を数えてたわけじゃねえが、300人は居たと思うぜ」
「そんな……それって、1番多かった時の話ですよね? 1つの町を丸ごと支配するような人が、何人もいるわけが……」
ケイが掠れた声を出す。マイルズは腕を組んだ。
「そうだな。俺もそう思いたかったよ。だがな、例外は無かったんだ。魔術師は己の属性に縛られる。地属性は居場所として定めた地域に根を張る。水属性は流れに逆らえねえ。火属性は感情も言動も激しい。風属性は享楽的で落ち着きがない。闇属性はネガティブで、光属性はポジティブだ。1つの属性に偏った人間は、どうしたって人が変わったようになっちまうもんなんだよ」




