表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能力者、最強チートな奇人変人に好かれて大陸を統一する。  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/80

儀式

ケイが荷物の中から白い布を取り出して、床に敷いた。アマーリアは布の上に茗荷(みょうが)を寝かせて、その覆面を取った。彼女はそのまま上半身に手をかけて、彼が着ている服を上だけ脱がせる。ケイは彼の姿を見て、目を見開いた。


「薔薇が、2輪……?」


彼の頭と心臓、その両方に薔薇が根を張っている。その花の色は黒に近い、濃い紫色だった。セムトがケイの後ろから腕を回して、彼女に抱きつく。


「頭だけだと心が壊れちゃうし、心だけだと頭が壊れちゃうからね」


耳元でセムトの声が聞こえて、ケイは身を固くした。アマーリアが茗荷の体に(ロッド)を当てて、呪文を唱える。


神よ貴方の子供達に(prashotsa)恵みをお与えください(lusflirude)


茗荷の体が薄く光る。彼の体から生えている花が浮き上がる。セムトがケイを抱く力を強めた。ケイは首だけを動かして後ろを見た。彼は泣きそうな顔で彼女を見ていた。


「大丈夫だよ、セムト」


ケイは右肩に乗っているセムトの頭を撫でながら、彼に話しかけた。セムトは無言でケイの手にすり寄った。アマーリアは2人に構わず、儀式を続けた。


それは全ての不浄と毒(deilumenad)を消し子らの平穏と(venenaquae)幸福を招き願う(corpus)神の光なり(exedunt)


アマーリアが杖の先で花の周りに円を描く。花の根が茗荷の体の表面に浮き上がる。


神の愛はこの世の物事(aquadeidat)全てを見て全てを知る(tibipacemp)故の愛なれば(acemetli)どのような障壁も超え(bertatem)子らに届くべきである(somniandi)


彼女の呪文が聞こえるのと同時に、ケイの耳元でセムトが囁く。


「ケイ。僕のこと、好きって言って……?」


「……え、何、急に……」


「耐えられないんだ。苦しくて、辛くて、寂しくて……。お願い」


「……そっか。うん、じゃあ……えっと、好き、だよ。だから、安心して」


ケイが微笑む。セムトは安心した様子で、彼女の肩に顔を(うず)めた。家の入口から一部始終を見ていたマイルズが、冷めた視線をセムトに向けていた。


(そもそもテメエが他人の体に《種》を植えなければ済んだ話だろうが)


マイルズは、自分の思考を口には出さなかった。少し離れた場所から見ていた彼は、周囲の状況を誰よりも理解していたからだ。セムトは《花》が取り除かれても、抵抗する様子を見せなかった。にも関わらず、アマーリアは呪文を唱えるだけで疲弊している。


(ユズよりアイツの方がレベルが高えからだろうな。だとしたら厄介だぞ)


アマーリアとマイルズのレベルは同じだ。セムトがその気になれば、この場にいる人間を支配することなど容易(たやす)いだろう。


(今はケイに懐いているから、ケイが望まねえことはしねえだろうが……気を抜いたらやられるかもしれねえ。注意しておかねえとな)


マイルズがそんな事を考えたのと同時に、アマーリアが茗荷の体に生えた2輪の薔薇を抜き取って、安心したように息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ