翌日
次の日。ケイはアマーリアに起こされた。
「おはようケイちゃん」
アマーリアは真新しい木桶を持ってきていた。桶の中には透明な水が入っている。ケイは桶の水で顔を洗って、アマーリアから渡された布で水を拭き取った。
「おはようございます、アマーリアさん。……この水、どこから汲んで来たんですか?」
ケイが桶の中を覗き込む。中に入っている水は、桶の底が見えるほどに澄んでいた。
「この近くの川からよ。水が綺麗なのは、アタシが聖別してるからだけど」
「なるほど。……濁った水を綺麗な水に変えられるのは、高レベルな神官の証ですよね。アマーリアさんは、どうやってレベルを上げたんですか?」
「特別なことはしていないわ。毎日、創造神に向かって祈りを捧げていただけよ。この世界では、自分の職業に合った行動をするとレベルが上がるの。ケイちゃんの場合は農作業ね。根気強く続けていれば、どんな場所でも作物を育てられるようになると思うわ」
ケイは真剣な顔でアマーリアの話を聞いていた。そして少し考えてから、口を開いた。
「この村に畑を作ってもいいですか?」
アマーリアはその言葉に頷いて、ケイを連れて外に出た。
「まずは草を刈るところからかしら。アタシも手伝うけど……」
アマーリアは背後に視線を向けた。ケイもつられてそちらを見た。ちょうどセムトとマイルズが2人を追って、家から出てきたところだった。
「当然、手伝ってくれるわよね?」
アマーリアが問いかける。ケイは慌てた。
「い、いえ! ボクがやりたいって言ったことなので、1人でやります!」
男たちは不思議そうな顔をした。
「どうして? 僕も手伝うよ。ケイだけじゃ大変でしょ?」
「遠慮しなくていいぜ。この優男だけじゃ頼りねえだろうしな。体力仕事は俺がやる」
ケイは返答に困ってアマーリアの方を見た。アマーリアは笑みを深めた。
「こういうときは頼っておけばいいのよ。あの男たちは、ケイちゃんにいいところを見せたくて仕方ないんだから」
「そうなんですか……? じゃ、じゃあ、えっと……お願い、します」
ケイが戸惑った様子で頭を下げる。マイルズが彼女の頭を乱雑に撫でた。
「おう、任せとけ」
アマーリアが杖を大地に突き刺して呪文を唱える。
【神よ貴方の土地を人に貸し与えよ】
大地が光り輝く。セムトがしゃがんで、土に触れた。
【ここに重なって】
村を覆っていた草が動きだして、セムトの周りに集まる。そしてひとりでに抜けて、彼の足元に積み上がった。




