波池とおじさん《間食》
そんな少し臭う……いや、大分臭う三人の運命が交差した……って何ですの!
何で私のカメラアングルが下半身ピックですの! 早く回想に行ってくださいまし。
==================
★ショート:波池の休日★
==================
波池は手のひらサイズの草魔獣を眺めながら、残飯を与えながら成長を観察していた。
「お前、そのワームまだ飼ってんの?」
そう言い放ったのはかつて大陸最大の東西対戦で乙女部隊の料理番をしていた料理長、星々だ。例にもれず、この人も女性で男性という例外はこの波池ただ一人であった。
「酷いなぁ料理長、この子が残飯処理してくれるからこそ、今までのように調理しても何も問題ないんですから」
波池が飼う草魔獣は、口に含んだ物の成分を分解し、大地の命の元となる特級肥料を生成する特殊な魔獣だった。
「この子が食べれば食べる程、大地の実りが増えるんだから凄い奴ですよコイツ」
「なぁ、前々から思ってたんだが」
「何です? 料理長」
「お前、アタシの前でだけ元の口調に戻るよな」
「そうですか? わっかんないすよ僕には」
頬を搔きながら、チラチラと料理長の顔を見る波池。
「そういえば、先日ハンター常時とかいう人が客で来たんすよ。知ってます? 料理長」
「……あいつがここにも現れたのか?」
「その物言い、やっぱり知ってる人ですか。東西対戦に詳しそうだったし、あの人異常な燃費体質でしたよ」
波池は一目でその異常な存在を認知していた。
「アイツは東西対戦を終結に向かわせたただの変態だよ。アタシも気に入ったから付き合わないかって誘ってやったのに、自分はロリコンだとかいう理由で一発で振られちまったね、そういや」
「……アイツ、許せねぇ」
「何怒ってんだい? もしかしてヤキモチかい? アハハ」
「そ、そうですけど何か!」
「言うようになったねぇ。そんなアンタにほら、土産さ」
ポイッと雑に投げられたソレを両手で受け取る。
必ず両手で受け取るように料理長に教育された癖である。
「この子は……?」
「海魔獣さ。アンタが大切そうにその子を育ててたからワームのプレゼントさ。アタシからの開店の餞別と思って受け取りな」
「……え、えぇぇ!? あの料理長が、僕に!?」
「何だいその良い草は。まるでアタシがアンタに何もあげてないみたいじゃないかい」
「そうじゃないっすか! むしろ毎回奪っていったのは料理長っすよ!」
「そりゃアンタ、アタシのものに餌付けしようとする乙女たちには信賞必罰よ」
「それって……」
「と・に・か・く、その子は液体系の分解と、プランクトンを特級繁殖させる液体を体から出すから、しっかり活用しなさい」
「え、ええ!? 液体系って、まさか」
「そのまさかよ、油の分解もその子にお任せよ!」
「凄い、凄いよ星々!」
「なっ、いきなり呼び捨てなんて……波池、良い度胸してんな!」
「わっ、ごめんなさいぃぃぃ」
イチャイチャする二人はやっと訪れた休息、月に一度の休みを堪能する。
======================
★ショート:波池の休日★続く?★
======================
======================
☆ショート:おじさんの約束☆
======================
秘妃美の部屋を後にした男は、ニチャァと笑みを浮かべていた。
「これが最後の写真、動画か……」
男は心の中で、寂しさと切なさに苦しんでいた。
笑みを浮かべているように見えて、男は不器用にも悲しさを紛らわせる癖で不気味な笑みを浮かべてしまっていただけだった。
階段を下る途中、秘妃美の事を探る男と女と出会ったが、もう男の出番は終わったため、特に表立った行動はとらなかった。まぁ、疑る視線を送ってしまったのは保護者だった者として、見逃してほしい。
そのまま帰路についた男は、途中墓地へ立ち寄っていた。
静寂の中、風の音さえ聞こえない場所で男は一つの墓石の前で礼をする。
「秘妃美ちゃん、自分の力だけで生きていくみたいです。この画像、見えますか? 秘妃美ちゃん、貴女に似て身長が伸びないで胸ばかり育って、本当にそっくりですよ? ほら、この動画も見てください、この嫌そうな顔も貴方にソックリだ。本当に、何で2年分だけしか色々残してあげなかったんだ! って当初は思ってましたが、女の子はあっという間に大人になっていくんですね。最後に余計なお節介と思いつつも、深夜の十四歳でも出来る高時給の皿洗いのアルバイト、紹介したんですが振られちゃいましたよ。食べる事が誰よりも好きだったから、貴女達夫婦が他界した後、ある日秘妃美ちゃんを元気づけようとご飯に連れて行ったんですよ? 奮発して、沢山注文したのに秘妃美ちゃん、ほとんど食べてくれなくて。想像以上に残っちゃって、無理して口に放り込んでムシャムシャって食べて見せたんだけど、あの日以来僕の前で笑ってくれなくなって、物凄くショックだったなぁ。そういや、お前もよく一緒に飲んだ時に僕に対してジト目を使ってきてたよな? 親友ながら、ショックだったぜ? まぁ、お前たちにはまた会いに来るからよ、またどこかで秘妃美ちゃんみかけたら報告するようにするよ。ほら、ちゃんと画像や動画、堪能したかい? それじゃ、削除するぞ」
ピッと端末から秘妃美のデータが消失する。
「さて、僕も大切な生娘の元へ帰りますか」
男は、ニチャァと不器用な笑みを浮かべ自分のいるべき場所へと帰ってゆく。
======================
☆ショート:おじさんの約束☆続かない☆
======================
「……ちょ、何でカメラアングルがヒップへ戻ってきてるんですのぉ!」
「一体誰に言っているんだルナ? む、そういえばアノ後、まだシャワーも浴びれていなかったか」
「何の後の事か、わかりたくありませんわぁ!」
「クンクン……臭う」
「豚骨臭ですわぁ!」
「まぁ、ここはDODOだ。最新のシャワーを借りるとするか」
「あら、人権取り戻せますの?」
「シャワー、久し振り」
「そうと決まれば、シャワーボックスへ移動するぞ」
手を引かれた月海と秘妃美は喜々として歩み出す。
続く!