物語食べ
「さてと、じゃあそろそろ冒険者ギルドに行きましょうか?
それにしてもユーリ、あんた食事したことないって、いったいどうなってんのよ?」
みんなすごいのね、「物語食べ」なんて初めてみたわ。
「さっきから言ってるけどその「物語食べ」って何よ」
え、口で食べることよ?
本の中の人たちって、みんなそうしてるでしょ。
でも、普通は「チューブ」で食事するでしょう?
赤ちゃんのへその緒と同じよ。
生まれるまで赤ちゃんとお母さんは「チューブ」で繋がってるの。
でも、生まれたらすぐに切ってしまう。
だから、身体に「代わりの」チューブを付けないと……
「も、もうわかったから!
いや全然分かんないけど……ほら、最後の一口頑張って食べなさい。
あーん……よしっ、いいわよ」
あ、あーん……んむんむ。
口の中が幸せ……とっても不思議……んむんむ。
「あ、あの……今日のお肉は少し弾力があるので、また私が代わりに噛みましょうか?」
んむ? ありがとうクリスティーナ。でも、もうコツが分かったわ……んむんむ。
「甘やかしちゃダメよクリスティーナ!
むしろこういう固いもので噛む力を養わないとダメなのよ。
小さい子どもなんかにも「グミ」とかよく食べさせるでしょ?」
「あ、グミってそういう為のものなんですか?
てっきり見た目が可愛らしいから人気なのだとばかり……リリアーナ様って物知りですのね」
んむんむんむ。でも、それならリリアーナ。私もっ……んむんむ、グミ食べてみたいわ?
「ま、確かにそっちの方がいいかもね……、ギルドの近くで買えるはずだから後で買ってあげる。
って、いつまで「んむんむ」してんのよ!
もう行くんだから貸しなさいっ!!」
んぼっ!? ……ん? リリアーナの手もなんか……ぺろぺろ、おいしいかも?
「きゃー!
指舐めなんじゃないわよ!
ったく、こんなの「ぱくっ」すぐ食べちゃいなさいよね?」
あ、あともう少しだったのに……。
リリアーナってば食いしん坊なのね?
あら、どうしたのクリスティーナ?
「リリアーナ様ずるい……はっ!?
べ、別に何でもありませんわっ!
では、私はお昼から用事がありますのでこれで……」
「あ、そうなの?
じゃあ、また夜になったら来るわね?」
あら、クリスティーナは来てくれないの?
「そういう言い方するんじゃないわよ。
クリスティーナだって用事があるんだからしょうがないでしょ?」
あ、ごめんなさい。
クリスティーナと一緒にいるのが楽しいから、つい。
また夜になったら来るわね。
「そうそう、それでいいのよ。
じゃあね、また後でクリスティーナ!
行くわよユーリ!」
あ、待ってリリアーナ。
じゃあまた会いましょうね? クリスティーナ。
「は、はい。
それではお気をつけて行ってらっしゃいませ。
また会いましょうね……(いつか、きっと)」
あれ、今何か言ったクリスティーナ?
「ほらほら、置いていくわよ!
わわっ、ちょ、ちょっと引っ付くなってば!」
……ユーリ様、私はいつかきっとあなたのもとに帰ってきますわ。
リリアーナ様、あなたもお友達と思っていいんですよね?
でも、ひとつだけいいですか?
この大きな猫のきぐるみ……いったいどうしたらよいのでしょう?