不死身の騎士団編 第一話「謎の少女」中編
おいおいおい、なんなんだこいつら、ぜんっぜん役に立たねえじゃねえか!?
こんなことなら見習いでも連れてきた方がよっぽどマシだったんじゃないか?
大体あの装備は何だ? 一流の冒険者らしいと言われればそういう風にも見えるが、よく見ると使ってる素材は「モドキ」ばかりだ。
前衛のやつが身に付けてる「赤き龍の衣」、後衛のやつが付けている「青き龍のフード」、どれも「色付き」の龍からしか取れない「最高級の装備」……に見える。
だが全部、「色なし」の龍の素材に後から色を付けただけの「粗悪品」だ。
見栄を張りたいのか、どこかで騙されただけなのか……どっちにしても間抜けだ。
「おい、サボってないでこっちを手伝えよ!!!」
え? 今あいつ、俺にサボってるって言った?
どういうことだ? サボるどころか他の倍は動いているはず……だよな?
……?
…………まさか、俺の動きが見えてないのか?
「こっちはもう3匹も倒したんだぞ!!
騎士団の副隊長様も大した事ねえなぁ!!!」
ん、やっぱ見えてないみたいだ。
しかし、ポンコツばっかりだと思ったが意外と勘働きのよさそうなやつもいるな。
そうなんだよ、俺は全然大したことないんだ。
本当は田舎でのんびり暮らしたいだけなのに、村に来た騎士団長に無理やり連れて来られて気づけばいつの間にやら副隊長。
なぜか皆、俺が副隊長を辞めさせてくれと言っても聞いてくれないし……なあ、お前よかったら俺の代わりに……え?
「何だあの汚いゴブリンは?
さっさと死ねやおらぁ!!!
……ぐぇっ!」
あれ?
新しい副隊長が「泥ゴブリン」にやられたように見えたけど……まあいいや。
そんなことより、泥ゴブリンが出て来たってことは……
「ユリウス、どこ行くんだ?
お前のデート相手はあっちだぞ?」
安全な場所に移動しようとしたら、いつの間にか仲間たちが俺の周りに集まって来ていた。
「い、いや……前髪を直そうと思って」
「ほら、ヘアバンド貸してやるよ」
「あと、なんかさっきから眠くて」
「じゃあ、気合い入れてやるよ……おらぁ!!」
「あ、ありがとう?」
適当なこと言って逃げようとしたが、どうやら無理そうだ。
後、どうでもいいけど今俺を殴る必要あった?
「う、うわぁぁぁぁあああああああああ!!!!!
何だっ、あの化け物は!?!?」
はぁ、もう来たのか。
せっかちさんには困っちまうな。
ていうかどうしてあいつらパニクってんの?
高ランクの冒険者なら「泥鬼王」なんて見飽きてるだろ?
まさかこいつら本当は低ランクの冒険者で、「高ランクのふり」をしてるだけってことは……さすがにそんなことあるわけないか。
だってもしそうなら、あいつらも俺たちも全員死んじまうしな。
――
ん……、ふぁ……っふぅ。
いつのまにか寝てしまってたみたいね。
みんな起こしてくれたらいいのに……あ、うふふっ。
みんなも寝ちゃってたのね。
そんなにくっついてて暑くないの?
わたしもくっついちゃう、ぎゅー!
うふふ、とっても幸せね。
でも、みんな汗かいてるみたいだから何かで拭かないと……あら?
机の上に綺麗な紙がある……これって何かしら?
ええと、低級の冒険者をリサ……
「はい、そこまでー」
――
ユーリったら、散々私をほったらかしにしたくせに何見てんの……?
ああ、これってさっきメアリーが言ってたやつか。
ユーリが手に持っていた紙を取り上げて、内容に目を通すと、話半分に聞き流していた冒険者ギルドの「作戦」の詳細が書かれていた。
どれどれ……任務値は「泥洞窟」?
あそこか、あそこにいる魔物って奥に行くと「泥まみれ」の魔物ばっかりで気持ち悪いのよね。
特にゴブリン。
普通のでも気持ち悪いのに、泥まみれって……ああ、想像しただけなのに気分が悪くなってきちゃう!
「ねえねえ、それなあに?」
ちょっと、今見てるんだから引っ付いて……引っ付くのはいいわ。でも、邪魔しないで。
「はーい、じゃあこっちを見てるわね?」
そうそう、それでいいわ……、って、何を見てるの?
「冒険者をリサ……リサイクル……?
……? …………っ大変!!!」
あ、資料っていくつも置いてあったのね?
じゃあ、今から皆起こして皆で寝ましょう!
「リリアーナ!
今すぐ私をこの場所に連れて行って!!!」
……嫌って言ったらやめてくれる?
――
お前ら本当に高ランクの冒険者なのか?
ったく、そんな腕で高ランクになれるなら俺も転職したほうが良い気がしてきたぜ。
あそこの岩陰にいるのは……爆弾とかげか、刺激しなけりゃ問題ねえな。
無視して進むぞ……って、バカ野郎……ぐ、ぐぁああああ!!!
……
じょ、冗談だろ?
味方が密集している状況で爆弾とかげを爆発させやがった。
ぜってえ殺してやる…………っち、俺がそうするまでもないな。
やっぱりこいつら素人じゃねえか。
冒険者ギルドはいったい何を考えてこいつらを選んだんだ?
大体俺たちの討伐目標って何なのか教えないのも気になる。
今の爆発で、うちの奴らにも何人か負傷者が出たしもう今日は帰るか。
おい、道案内担当のやつ……って、まさか今とかげを爆発させたやつか?
……勘弁してくれ、これじゃあ帰れねえよ。
まあ、大した魔物もいないようだし適当に……ん!?
何かいる、これは何だ?
隊長が何か叫んでんな珍しい……ちっ、よく聞こえねえ。
副官が持っている旗は……赤!?
やばいぞ、お前ら全員体制を低くして後退しろ!
急げっ、きっと今の爆発でやばいのが目を覚まし――
ここは……ああ、そうだ地獄だ。
周りにあるのは仲間を模した悪趣味な置物ばかり。
俺の身体も現実と違って随分と不格好だ。
ああ、こんなことなら素直に「イイこと」のひとつでもしてもらえばよかったな。
「なーんだ、やっぱりしたかったんだ?」
っつ!?
何でお前がこんなところに……って、どうせ夢なんだ……理由なんてねえか。
「おっと、これはチャンスですねー。
でも、この身体じゃイイことは無理かなー?」
へっ、どうせ夢なんだ……せっかくならサービスしろって……は?
お前その体……なっ、どうなって……おえぇ!!!
「女の子の身体見て吐くなんてデリカシーないぞー?
こんな身体でも「イイこと」出来るんだから……出来るよね?」
その鎧は俺の部隊の……そうか、誰かがお前にたぶらかされたってわけか。
「たぶらかすだなんて人聞き悪いなー。
お願いしたら貸してくれただけだよ?」
ふっ、女に免疫ないやつばっかなんだ……俺も含めてな。
可愛い顔で笑いかけられただけで参っちまうんだよ。
「……今の私でも?」
あ……ああ、もちろんだ!
俺はいつも、お前の笑顔で舞い上がっちまってたよ!
「ふふっ、嘘つきだー。
今、語尾が過去形になってたぞー、まったくひどい男だ!」
ああ……そうだな。
俺より弱い女に命を救われるなんて、本当にひどい男だよ俺は。
――もう、ホントは全部わかってるんだ。
周りにある悪趣味な置物……あれは全部、俺の仲間なんだろ?
俺が無事なのは、「貸してもらった」鎧を着て部隊に潜り込んでいたお前が、あの凶悪な魔物の攻撃から俺をかばったからなんだろう?
俺の腕が不格好なのは、お前に俺をかばうだけの面積が「足り無かった」から何だろう?
全部わかってる。
俺がしっかりしていれば、こんなことにはならなかったんだ。
女神よ、連れていくなら俺にしてくれ。
俺の部隊は未婚の男しかいない、これからなんだ。
幸せになるのはこれからだったんだよ。
ガキを作って、飯を作ってもらって、ガキを説教して、やりすぎだって怒られる。
まだここにいるやつは誰一人、そんな「幸せ」を味わってねえんだ。
頼む、俺はもういいからっ、だから、こいつらだけは助けてくれ!
「そう、あなたは後回しでいいのね?」
……? 女神が来てくれたのか?
…………
………………ああ、何て美しいんだ。
でも、あの髪の色はまるで「死神」のような気も……ぐぷっ!?
「次に同じこと言ったら今度は「玉」を潰すわ」
へ……へへっ、なんか悪いことを言っちまったか?
女神さま方も怒ることがあるなんてな。いい土産話ができた。
だがお生憎様、玉はもうとっくにつぶれて……る。
「なら、治してから潰すわ」
な……治せんのかよ。……やっぱ女神だった……な。
いつも読んでくださってありがとうございます!
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次回の更新予定日は「火曜日」です。




