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いつか見た光:中編

夜になってしまって申し訳ありません。

少しお仕事の関係で遅くなってしまいました。


いつも読んでくださって本当にありがとうございます。

後編は明日更新予定です。

 ふぅ、これで今日の分のノルマは終わりだな。


 目が見えない分、身体をちゃんと鍛えておかないと。


 それこそ、少し転んだくらいで周りを心配させないくらいには……っと。


「……ごくり。

 あ、汗ふいてもいい?」


 え……っ!?


 だ、誰かいるんですか!?


「わ、私よっ、あなたのナタリーよ!」


 あ、ああ……あなたですか。


 いえ僕のものにした覚えはありませんが……


 それよりもいったい何の用ですか?


 今日はもう姉も帰りましたけど。


「あ、この間のお詫びに女性に大人気のヘアオイル持ってきたの」


 ヘアオイル……確か髪に塗るやつですよね、ありがとうございます。


「え?

 いえ、これはあなたのお姉さんに……つけてみたいの?」


 はい、なんだか面白そうです!


「じゃあ洗面所に行きましょうか?」


 え、ここじゃダメなんですか?


「ベッドに垂れたら怒られちゃうもの」


 そ、そうですよね、わかりました。


 大丈夫、落ち着いて身体を動かせば問題ない……うわっ!


「ナタリータクシーしゅぱーっつ!!」


 ちょちょ、ちょっとこれっ、なにこれ!?


「ぜーんぶ、ナタリーに任せなさい!」


 も、もうっ、僕は小さな子供じゃないんですからね?


 ふふっ、でも……なんかいいな。


 こんなに楽しいのは初めてかも……うっ!


「どうかした?」


 いいえ、何でもありません。


 それより、何であなたはあったばかりの僕にこんなに優しくしてくれるんですか?


「それは……」


 教えてください。


「……わかったわ。

 私ね、ちょっとだけその……行き遅れちゃって」


 行き遅れ?


 それは婚期を逃したってことですか?


「は、はっきり言わないで!」


 それで、僕に優しくってことは……まさか僕を?


「ええ、まあ最初は冗談半分だったけどね。

 今はちょっと本気になってきたかも……驚いた?」


 最初から半分は本気だったということに驚きました。


 でも、僕にお嫁さんが来てくれるなんて夢みたいです。


 こんな男と一緒にいたって楽しくないですから。


「そんなことない!」


 ナタリーさん?


「確かに普通の人と比べたら退屈なのかもしれない。

 でも、わたしにとってはすっごく特別なの!」


 あの……抱きつかれるのはいいのですが、何か柔らかいものが……たぶんその……。


「え……きゃ!

 ご、ごめんなさい!」


 だ、大丈夫です。


 せっかく話してもらったのに申し訳ないのですが……いまひとつあなたが何で僕を好きなのかよく分かりませんでした


 でも、こんな僕でも構わないのなら……これからよろしくお願いします。


「い、いいの!?」


 ええ、とはいえあんまり長くは……うっ、げ、げほげほっ!


 しまった、こんな時に――





 ――


 わぁ、ここのお花とってもきれい!


 勝手に入っても怒られないかな……いいよね!


 すごい、どれも見たことないくらいかわいいしきれい……あれ?


 あそこの窓の所にだれかいる……男の子?


 何であんなところでぼーっとしてるんだろ。


 まあいいわ、それよりこの花もらいっ!


 こっちもっ、こっちも欲しいっ!


 あとこれもっ……まだ見てる。


 なんかいやな感じ……あれ、泣いてるの?


 もっ、もしかしてこれっ、あなたの大事なものだったの!?


 ご、ごめんなさい、ほらっ、返すから窓開けて!


 窓開けてってば……どこを見てるの?


 おーい、ちょっと聞いてるの……わっ!?


 な、何よ急に動かないでよ! びっくりするで……どうしたの?


 大丈夫だったら、別に怖いものなんてどこにもないわ……もしかして私の声に反応したの?


 あなた、もしかして目が見えないの?



 きょ、今日も来てあげたわよ。


 べ、別にあなたに会いたかったわけじゃないんだからね!


 それよりいいもの持ってきたんだ……じゃーん。


 これはね、「ヘアオイル」って言ってすっごくいい香りがするの。


 使うとすっごく髪がなめらかになって男の人がみーんなメロメロになっちゃうんだから!


 え、あなたも使ってみたいの?


 だ、だめよ!


 これはママのだから本当に使ったら怒られちゃう。


 そ、そのうち私が自分で買ったら好きなだけ使わせてあげる!


 うん、約束ね。


 じゃあ、あなたは私と結婚するってことで!


 ふふーん、約束する内容はこっちで決めていいの。


 可愛い女の子の特権ってやつなんだから!



 お母さーん、私ねっ、ちょっと年が離れてるけどね好きな男の子が……え、どうして家に何もないの?


 お父さんはどこ行ったの?


 お仕事の都合でこの町を離れる?


 え、いやよ、私まだあの子と一緒に……そんな……嘘でしょ?





 ――


 あ、先生。さきほどは……え、お金ですか?


 でももう少し待ってくれるはずじゃ……


「新しい患者さんが入る予定があるんです。

 お金を払えないならもう治療はできません。

 もっと生きたいならお姉さんに言って早くお金を……」


 ……


 わかりました、もう結構です。


 今までありがとうございました。


「そうですか?

 では、お大事に」


 ……


 大丈夫。


 救護院の人たちがお金払いの悪い僕を厄介者にしていたのは知っていた。


 こういう時のために身体を鍛えていたし、目が見えなくても耳も手も足もちゃんと使える。


 せめて、最後くらいは自分の好きなところに行こう。


 これこそ男って感じがする。


 ああ、いま僕はようやく男になったんだ!


 もう誰の手も借りない。


 自分の足だけで歩くんだ。


 この暗やみの中を照らしてくれる温かな光がきっとどこかに……ぽふっ。


 あ、あれっ、ここにはこんなに柔らかいものはないはずだけど……?


 あの部屋をでてから右に一回、左に二回で……このまま真っすぐ進めば外に出られる……うん、間違いない。


 でも、じゃあこれは何だろ?


「リグレット……くん、寝てなくていいの?

 いったいどこに行くつもりなの?」


 この声……ナタリーさん!?


 っていうことはこの柔らかいのは……ご、ごめんなさい!!


「だ、大丈夫。

 好きなところ掴んでていいから。

 じっとしてないとまた転んじゃうわよ?」


 僕は自分で立てるっ!!!


「え……あ、ごめんなさい」


 い、いえ、僕の方こそ怒鳴るつもりはなかったんです……。ごめんなさい。


 それより、どうしたんですか?


「ええっと……べ、別にあなたに会いに来たわけじゃないんだけどね?」


 え、今の言葉なんか前にもどこかで……ぐっ、くそっ、またっ、げほっげほっ。


「だいじょうぶっ!?

 すぐに救護院の人を……!」


 い、いいんです……ほらっ、薬も持ってるでしょう?


 これで……はいっ、この通り……げほっ!


 だ、大丈夫です。


 それより行きたい所があるんです、一緒に行きませんか?


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