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自慢させて:前編

 ねえねえおかあさんっ。


「どうしたの、マルッテ?」


 おとうさんってどうして働かないの?


 みんなが言うの、わたしのおとうさんはろくでなしだって……



 ねえねえお母さん。


「何かあったの、マルッテ?」


 お父さんにも出来そうな仕事って何かないのかな?


 もう私、皆から馬鹿にされたくない……



 ねえ母さん?


「その荷物はどうしたの、マルッテ?」


 私もう限界……今からこの村を出るわ。


 すごい冒険者になってきっといつか私がお母さんを幸せにするから……





 ――


「おいっ、今度の依頼はこれ……ゴブリン退治だっ!」


 私が冒険者ギルドの食堂でご飯を食べていると、一緒にパーティーを組んでいる男の子「ルーク」が声をかけてきた。


 今食事中だって見て分かんないのかしら……ったく。


「んむんむ。ゴブリンってなあに?」


 無視しようと思ったけど一緒に食事をしていたユーリさんが依頼に興味を示してしまう。


 以前助けてもらったお礼にと、せっかく食事に誘ったのに……もう!


「よくぞ聞いてくれたっ!

 ……って、ユーリさん?

 ま、まあいっか。

 ゴブリンとはそうだな……えっと……て、敵だ!」


「ゴブリンとは人型の魔物のことだ。

 大した力はないが好戦的な性質を持っていて、獣だけでなく人も襲う。

 群れていなければ簡単に倒せるが、隠れるのが上手いから油断すると非常に危険だ」


「んむんむ。

 そうなの……とっても怖いわ……んむんむ」


 ユーリさん、そんな奴らほっといて私との食事に集中してください!


 せっかく気合を入れて髪型も整えて来たのに……ルークのやつ、覚えてなさいよ。


「だろっ!?

 さすがユーリさんだ。

 冒険者のくせにゴブリンをバカにするやつの気が知れねえぜ、魔物相手に弱いも強いもねえ。

 人は転んで頭をぶつけただけで死ぬこともあるんだ。

 どんな魔物でも命がけで戦わないと簡単に死んじまう!」


 でも、ゴブリンって雑魚じゃない。


「マルッテ、お前この間のこと忘れたのか?

 ユーリがいなかったら今頃はどこかの家の借金奴隷か、そのままあの世行きだったんだぞ?」


 わかってるわよ、ジル。


 だからこうしてお礼してるんじゃない!


 ユーリさんってすごいわよね……


 回復魔法のことはよく覚えてないけど、起きたときのあの迫力ったら……むふふ。


「迫力……?

 ユーリさんより俺の方が強いぞ?」


 はぁ?


 誰がそんな話して…………じゃあ、賭ける?


 わたしとユーリさん、ルークとジルでそれぞれパーティーを組んでどっちがゴブリンを多く狩れるかって……


「戦力を分散させるのは非効率だ。

 ルークも言っていたが油断すると命を落としかねない」


「大丈夫だってジル。

 マルッテだってあれから頑張って特訓したんだ。

 それに、ユーリさんに安全地帯にいてもらってその近くで狩る作戦だろ?」


 その通りよ! じゃあ、始めるわね?


 よーい、どん!


「よっしゃ行くぜっ!!!」


「仕方ないな」


 やった、上手くいった!


 ゴブリンなんてもうこりごり、行くわけないでしょ?


 さっ、ユーリさん一緒に食事の続きを……


「私も急がなきゃっ!」


 ゆ、ユーリさん!?


 ちょっと待って、私本当に行くつもりじゃなかったの!!!





 ――


 結局こうなるのね。


 ていうか、まさか依頼がこの村から来てただなんて……


「さっ、ゴブリン倒しましょう!」


 なんでこんなにやる気なの?


 そういえばユーリさんって、すぐやめたって聞いたけど元冒険者なのよね。


 もしかしたら強いのかしら?


「マルッテ、あれはなあに?」


 え……ああ、あれはスライムです!


 とっても柔らかいから依頼で見かけたら一回は触りたくなるんですよね。


 なんていうかネコッタの肉球みたいで……って、ユーリさん?


「あの、なんか沢山きて……くっついてくるの」


 こんなにたくさんのスライム一体どこから……って、離れなさいよ!!


 まったく、私ですらまだ触ったことないっていうのに。


「別にこのままでも大丈夫よ?

 それより、あの女の人こっちを見てるけど何か用かしら」


 女の人?


 そんなの一体どこに……げ。


「マルッテ、あなた帰って来たのね!」


 母さん……べ、別に関係ないでしょう?


 依頼が終わったらすぐに帰るから!


「お家に帰りたいの?

 ならすぐに帰りましょう!」


 いえ、帰るっていうのは家にって意味じゃなくて、私が暮らしてる町にって意味なんだけど!?


「スライムなあなたも一緒にどう?

 ちょうどケーキが焼けたところなの!」


「ケーキ!

 あのね、この絵本の……これのこと?」


 ちょっと待ってってば!


 ていうかユーリさん、スライムくっつけたまま村に入ったらダメですよっ!!





 ――


 よしっ! これで5匹目だ。


 マルッテはともかくユーリさんもいるんだ。


 せめて10匹くらいは倒しておきたい。


 それにマルッテのやつ、この間町のアクセサリー屋で綺麗な首飾りを見ていた。


 あれくらいなら俺だって買えるから……ありがとうルーク、大好きよ!


 ……へへっ、なんてな。


「集中しろ。

 右から2番目の木の上に1匹隠れてる」


 おっと、まじか!?


 ……ほんとだ、あの手に持ってる手斧をこっちにぶつけるつもりだったのか。


 やっぱゴブリン相手でも命懸けだな。


 まあでもあれくらいなら――


「おい、ちゃんと前を見ろっ!!!」


 え……?


 あ、やべっ…………これ無理じゃね?


「ルーク!!!」


 どうやらここまでか。


 今までありがとな、ジル。


 マルッテのことはお前に任せたぞ?


 あーあ、でもどうせならスケルトンとか格好いい魔物に殺されたかった……


「ほぅ、お前さんなかなか趣味がいいな?」


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