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死にぞこない:後編

 そういう意味じゃなくて……え、なんでロナウドがここにいるのよ!



 まさかと思って辺りを見回すけどリックの姿はない。


 よかった……


 って、何安心なんてしてるのよ。


 目の前ではドールマンとロナウドがいやらしい目で私の身体をなめ回していた。


 こいつらハナからグルだったのね。


 出口は……だめっ、重たそうなスーツケースで塞がれてる。


 少しでも手間取ったらきっと捕まってしまう。


 だけど、裏口からなら……!


「お前のじいさんの部屋ってそこか?」


 私が全力で裏口まで走ろうとした瞬間、ロナウドが口を開いた。


 そうだ……おじいちゃんを置いていけない。


 こいつらが腹いせに何かしたら、それこそ本当に死んでしまいかねない。


 ……結局私の人生って何なのだろう。


 おじいちゃんを守って、約束を守って、だけど私のことを守ってくれる人なんて一人もいない。


 もう好きにすればいいわ。


 その代わり、ちゃんとお金は払いなさいよね。


 あんた達どうせ慣れてるんでしょうから……せめて気持ちよくして欲しいわ。


 あとはもう、どうでもいいから。


「へっ、お前みたいな女に金?

 むしろこっちが払って欲しいくらいだ!」


 ……


 何よ、それ?


 あんたたち、どれだけ私を惨めな気持ちにすれば気が済むのよ……!


 お金が払えないならもう帰って……きゃ!


「うるせえ」


 何こいつっ、力強すぎ、これ……むり……リック、ごめん……!!


 え、何で私いま謝ったの?


 大体あいつがこいつらを連れて来たっていうのに。


 いえ、ドールマンが来たのはその前だっけ?


 はぁ、痛いし苦しいのはもう嫌。


 わかったからせめて優しく……


「シェリーから離れろ!!!!」


 え、あれってリック?


 ……そんなわけないかぁ。


 あいつはもう変わっちゃったんだもの。


 だけど、もし本物なら最初はあなたがいいな。


 早い者勝ちだから頑張りなさい……よね。


 息苦しさに負けてしまった私の意識は、ここで途切れた。




 目が覚めると誰もいなかった。


 そう、もう気が済んだってわけね?


 あはははは……あはっ、あ……はぁ。


 もう死のっかな。


 あ、そしたらおじいちゃんの面倒が……って、私こればっかりね。


 初めての後は歩けないっていうけど、実際は大したことなかった。


 される前と変わった感じがしない……てっ、誰よこんなところにごみを捨ててったやつ。


 大きなごみは捨てるのにお金がかかるっていうのに……リック?


 え、嘘でしょ!?


 目を開けて!


 お願い目を開けてよ!!


 なんでこんなことに……なんで……ま、まさか?


 私は来ていた服を急いで脱いで身体のチェックをする。


 変な跡はついてない……と思う。


 ブラもホックがしっかり止まったまま。


 下着の中も……湿ってない。


 助けてくれた?


 誰が?


 だってリックはもう変わって……なかったの?


 そういえば……いつもあいつ、ロナウドと私の間に遮るように立っていた気がする。


 私を守ろうとしてくれてたの?


 なのに私はそれに気づかなかったのね?


 ……


 大丈夫、私はもう目が覚めたわ。


 こんなところで私は死なない!


 あなたのことも死なせない!


 たとえ体を売ったって絶対すぐにポーションを買ってくるから……きゃん!


 あ、ごめんなさいっ! 慌てていたから外を確認せずにドアを開けてしまって……。


 あの、大丈夫でしたか?


 え、何で慌てていたかって……あ、ちょっと待って勝手に入らないで!


 知らない女の子とメイド服を着た女性が勝手に家に入ろうとする。


 あれ、このメイド服って確かオルガノット家の……って、入っちゃダメだってば、もうっ!


 この忙しい時になんなのだろう、あ、でももし本当にオルガノット家の方ならお金を貸してもらえるかも。


 ね、ねえあなた達……え?


「いたいのいたいのとんでけー!」


 え、えっ、えっ?


 何をしてるの、そんなところ触ったら怪我がひどく……。


「ん……ここは……?」


 嘘っ、意識を取り戻したの!?


「ああ、……ああ?

 いや、うん……そうだと思う」


 ふふっ、何よそれ。


 自分のことも分かんないの?


「自分のこと……そうだ。

 僕は何もわかっていなかった。

 君に振り向いてもらうのに楽をしようとしたんだ!」


 ちょ、ちょっと落ち着いてってば!


 話なら後でいくらでも聞いてあげるから、それより二人にお礼を……


「いいや、聞いてくれ!

 辛い稽古なんてしなくても、女の扱いならまかせとけって。

 あんな奴の口車に乗せられて……

 僕は君の心に、もう少しで一生消えない傷をつけるところだった」


 リック……、ま、まあ年頃の男の子なんてそんなもんよ。


 やることしか考えてないってことくらい、私だって聞いたことあるもの。


「いいや、僕が愚かだった。

 誓う、もう二度と楽なんてしないと、君を傷つけたりしないと誓う!

 絶対に一流の役者になって、君のおじいさんのような男になるから!!!」


 リック……。


 あなたなら、きっとなれるわ――


「いや、それはどうじゃろうな。

 少なくとも儂の目の黒いうちは……簡単にはいかんぞ?」





 ――


 やっぱりおじいちゃんが演じる「ユージーン・オルガノット」は最高ね。


 あら、拗ねないの。


 あなたが演じる若き日のユージーンも素敵よ。


 ちょっと女性の役者に触りすぎだったけどね。


 ぷっ、うそうそ。


 ……あ、ほら見て!


 男性俳優部門はおじいちゃんが一位だけど、若手俳優部門ではあなたが一位よ!


 おめでとう、リック……え、この指輪って、え、えっえっ?


 夢みたい……、私をあなたのものにしてくれるのね?


 ええ、そうね約束だものね。


 でもね、もう一つの約束のことは忘れてね?


 今夜あなたに一生消えない傷をつけてもらえなかったら、今度こそ死んでやるんだから!

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