プロローグ
よくある話ですが自分でも書いてみたかった(切望)
黄昏の朱が闇色に染まりゆく時刻。魔物が住まう森を疾走する者達がいた。
それはこのシャンディア国の第一王子アレクセイとその側近となる予定であった4人である。
「クソ!なぜわたしがこのような事に!」
王子は荒い息とともに不平をこぼす。
何故かと問われれば、身から出た錆びとしか言いようが無いのだが、本人に自覚はなく、また周囲の人間も、気性の激しい王子の不興を買いたくない為に口をつぐんでいた。
そもそも自覚があれば、罪人として追われる事も無かったであろう。
「居たか!」
「向こうだ!!」
追手の声が微かに聴こえ、振り向くと遠くに松明の灯りが多数浮かんでいる。
猟犬を放ったらしい。にわかに吼える声が耳に届いた。
これに慌てた王子は、切り立った崖を登り、猟犬を撒くことを思い付く。
順番に登り、最後にジルディアード=トア=アリュセイア(通称ジル)が肉付きのよい身体で汗だくになり、ゼーハーと苦しそうに呼吸をくりかえしながら登っていく。
後少しで上に出ようというその時、王子から信じられない言葉をかけられた。
「お前はここで追手を攪乱しろ。そのブクブクと肥えた体型では、逃走の速度が落ちるのだ。わたしのために此処で囮となれ!」
言うなりジルの手を踏み砕く。
痛みと衝撃に耐えられなくなり、あえなく崖下に転落してく。
数秒後地面に叩きつけられ、頭部を強打する。痛いはずの手も頭も身体でさえも、麻痺してしまっているのか何も感じず、ピクリとも動かすことが出来ない。
ただ猟犬の迫り来る気配と声が耳に届いた。だが姿を見る前に、ジルの意識は混濁していくのであった。
スプラッタは苦手なのです。