表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

青薔薇と星の国

 クリスマスが終わっても、年が明けても、セイラさんの行方は、わからないまま。


 どこに居るんだろう……。


 私と同じ世界に居るはずなのになぁ。

 マンションの部屋も、わかるはずなのに。

 どこに居るの、セイラさん。

 会いたいよ……。


 二月。

 もうすぐバレンタイン。

 セイラさんに、チョコ渡したいけど。

 会えないんじゃ、渡せない。

 土曜日だけど、今日のアルバイトは休み。

 何もやることがないから、部屋でぐうたらしますか。

 気晴らしに、散歩もいいな。


 掛け時計を見る。

 十一時半。

 マンション近くは、いろんなショップがあるから、ウィンドウショッピングしようかな。

 早速、準備しよ。



 あ、これ、大学で噂になってるカフェだ。

 SNS映えするパンケーキが、あるんだよね。

 行ったことないから、わかんないけど。

 帰りに、ここでカフェランチしようかな。



 しばらく歩いて、駅前にやって来た。

 新しいショップがある!?

『青薔薇と星の国』?

スタンド看板が出ているけれど、なんのショップなんだろう。

 


夜咲星楽(やざきせいら)のタロット、星座占い 秘密は必ず守ります』


 占いのお店かぁ。

 興味あるけど、お金が心配……。

 やってみたいけどなぁ。

 入り口は、地下なんだね。

 一回くらいは、やってみようかな。


 階段を降りて、洋風の扉を開ける。

 中は薄暗くて、なんだか不思議。

 天井には星のオーナメントが吊るされて。

 心地よいベルの音。


「いらっしゃいませ」


 なんだか、聞き覚えのある声。

 顔がはっきり見えない。


「どのような、ご相談でしょうか?」

「えっと、初めて占ってもらうので、良くわからないんですけど。会いたい人がいるんです。上手く説明できないけど、すぐに別れることになってしまって。その人に、もう一度会えるか、占ってもらえますか?」


「わかりました。どうぞ、こちらへ。暗いので、足元に気をつけて」


 通された場所には、青薔薇の一輪挿しが置かれた丸いテーブルと椅子が置かれた、あまり広くないスペース。


「お掛けください」

 声の主に促され、座る。


「待ち人でしたね。早速、占いましょう」

 なれた手つきで、タロットカードをシャッフルして、並べていく。


「出ました。あなたの待ち人ですが、もうすぐ。いえ、もう既に、会えていますよ」

「どう言うことですか?」


「まだ、わからない?」

「えっ?」


「僕から、また会いに行けばよかったよね」


 まさか、占い師さんは……。

 夜咲星楽(やざきせいら)さんは……。


「セイラさんなの?」

「そうだよ!」

「こんな近くに居たんだね」

「会いに行きたかったんだけど、僕も人間として色々やることがあって。ごめんね」


 私は、首を横に振る。

「全然。寂しかったけど、セイラさんを信じていたから」

「ありがとう。ありすちゃん」


「占い師さんになったんだね。似合ってる!」

「僕にできそうなことが、これくらいしかなかったんだ」

「凄いよ!」

「ありがと」

「素敵なお店だし、お客さん、たくさん来るでしょ?」

「それなりにね」


「ねぇ、セイラさん。午前中は何時までやってるの?」

「十二時までやってるよ」


 お、ちょうどいい!


「午前中終わったら、一緒にランチしませんか?」

「ランチ? 一緒に?」

「ダメかな?」


 ちょっと間が空く。

 ダメそうかな……。


「いいよ。ありすちゃんからのお誘い、初めてだから断れないよ!」

「じゃあ、決まりだね!」

 やった!

「もうすぐ終わるから、待っててね」

「はーい」



 あれ?

 なんだろう。この気持ち。

 セイラさんに会えて嬉しいはずなのに。

 胸がキューっと締め付けられるような……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ