二人だけの場所
「そうだ。僕たち、二人だけの場所に行かない?」
優しく抱きしめてくれた後、セイラさんが言う。
「二人だけの場所?」
どこだろう。
「わかってるくせに」
セイラさんの笑った顔。
相変わらず、カッコいい。
惚れ惚れしちゃうよ。
「も、もちろん。わかってるよ」
二人だけの場所。
それは、もちろん。
「星の国。でしょ? セイラさん」
「正解。あの時、行けなかった場所に案内したいんだ」
「どこ?」
「楽しい所だよ」
「お城? あ、違うね。どこだろ?」
「フフフ。お城の近くにあるんだ」
「お城の近く……?」
「とりあえず、行こっか! 目を瞑ってて」
セイラさんに言われるまま、目を瞑る。
「はわわわ」
不思議な力に引っ張られるような、そんな感覚。
初めて星の国に、誘われた時と同じだ。
***
「目、開けていいよ」
言われるがまま、目を開けると。
「わぁあ!」
そこには、あの時見た、懐かしい光景が広がる。
また、芝生に座ってたけど。
「戻って来たんだね。星の国に!」
「お帰り。で、いいのかな? きっと星たちも、ありすちゃんを待ってたはずだから」
「ただいま! セイラさん。お星様」
「それじゃあ、案内するね。行こ。立てる?」
「あの時とは、違うからね。大丈夫なはず!」
足に力を入れて……。
「ほら! 立てた!」
「ちょっと、残念だったなぁ。またありすちゃんを、お姫様だっこできると思ったのに」
わわわ!
セイラさん!?
「何言ってるの!? いきなり、びっくりしたぁ!」
「だめだった? 」
「だめとかじゃなくて……。えっと、なんて言えばいいのか……」
「あはは」
セイラさんの笑い声。
「顔、赤くなってるよ」
「えっ、赤くなんて。なってないはず」
ほっぺを触ったり、顔を隠したり。
どうしよ!
「まぁ、いいか」
ん?
そう言うと、セイラさんは……。
「よいしょ」
「ふぇえ!?」
セイラさん!?
いきなり背後に来たと思ったら、お姫様だっこですかぁ!?
「重たくない?」
「大丈夫」
私をだっこしたまま、すたすたと歩きだす。
「どこに連れていってくれるの?」
「着いてからのお楽しみ!」
お城につづく湖を横目に、セイラさんは歩いている。
私はとりあえず、あの時見た光景を思い出す。
星の国に着いた時、見たものは……。
確か、お城とメリーゴーランドと、あと、観覧車。
もしかしてセイラさん、遊園地に連れていってくれるの?
「何か、考え事?」
セイラさんの声で我に返る。
「『どこに連れていってくれるのかな』って、考えてた」
「そっか。もうすぐ着くから、待ってて」
「うん!」