星のツリー
新しいミルクティーを手に、戻って来たセイラさん。
ミルクティーを、わたしのカップに注ぐと。
「ありすちゃん。お茶をしたら、ツリーの飾り付け、手伝ってもらえないかな?」
「いいよ」
クッキーを食べながら、答える。
「ありがとう」
また、ニコってしてくれた。
セイラさん、さっきは悲しそうな笑顔だったけど、今は。
ティータイムが終わり、セイラさんは言う。
「ツリーはね、このお城の中庭にあるんだ。こっちだよ」
テラスから、広い中庭に移動すると、中庭の真ん中あたり。
真っ白で、大きなツリーが立っていた。
セイラさんと並んで、見上げる。
「おっきいね。これにかざりつけるの?」
「そう。このツリーに飾り付けるんだよ!」
ツリーの足元。で、いいのかな?
そこに、きれいなお星様のオーナメントがたくさん入った、箱が置かれてる。
「きれいだね。セイラさんが、よういしたの?」
「僕と、この空に輝く星たちだよ」
セイラさんは更に続けて。
「神様に、届けたいんだ。このツリーの輝きを!」
セイラさんの目が、星のように輝いた。
「早速、飾り付けよう。時間がなさそうだから」
「うん!」
その前に、『じかんがない』って、どういうことだろう。
ま、いっか。
星のオーナメントを手に、セイラさんと飾り付け。
わたしの身長より、ちょっと高いところに飾りたいな。
だけど。
「うーんしょ。とど、かない……」
なんとしてでも、飾りたい!
なんとしてでも!
「フフフ。届かない?」
まずい。
セイラさんに見られちゃった。
「待ってね。手伝うから」
そう言うと、セイラさんがわたしの後ろにやって来て。
「よいしょ」
わわわ。だっこされた!
だっこだよ! だっこ!
「これで大丈夫? 届いた?」
「う、うん」
びっくりしたぁ。
付けてすぐに、降ろしてくれたけど。
お姫様だっこといい、今のだっこといい。
あんなこと、しぜんにできるなんて。
ホレてまうやろー!!
ところでセイラさん、いくつなんだろう。
天使さんは、年とるのかな?
「ん? どうかした?」
不思議そうに、わたしの顔を覗いてる。
顔、赤くなってないよね!?
「あ、あの。セイラさんって、今、いくつなの?」
「えーっとね。人間でいうと、十五歳だよ」
おぉ。十五歳。
おとなだぁ。
わたしだけが、思ってることなのかな?
「意外だった?」
「うん。天使さんだから、ねんれい? それがないんだと思ってた」
「天使でも、年齢はあるんだよ」
「そろそろ、完成だね。最後に、この大きな星をツリーの天辺に付けよう」
セイラさんが手にしている、白くて大きなお星様。
「はしごないし、あんなに高いよ?ぜったい届かないよ」
「届くよ!」
「ムリだよぉ」
「僕なら、出来るんだなぁ」
「どうやって?」
「こうやって!」
セイラさんがゆびをパチンって、ならした。
あれれ?
なんだか、体がういてる?
「ういてる!? ういてるの!? セイラさん!」
「浮いてるよ」
セイラさんもういてる。
「すごーい!」
セイラさんといっしょに、お星様を付ける。
「これで、完成だよ! ありすちゃん!」