ひとりぼっちのクリスマスイブ
聖なる夜に、奇跡を信じるならば。
また、貴方に会えますか?
十二月二十四日。
クリスマスイブの夜。
街には、クリスマスソングが流れ、イルミネーションが煌めく。
行き交う恋人たちは、レストランやらバーやらで、それぞれの過ごし方をしている。
コンビニまで、小さなケーキを買いに外出すると、必ずすれ違ったり、視界に入ったり。
現在二十歳。
大人になって初めてのクリスマスイブ。
大学進学の為に、上京した。
大学近くの安い マンションに帰れば、誰もいない。
彼氏なんていないから、誰かとクリスマスイブを過ごせるわけもなく。
アルバイトで小学生の家庭教師をやってるけど、今日は休み。
部屋で一人、ケーキを食べる。
言うなれば、『クリぼっち』。
実家に居た頃からも、一人だったけど。
私が小さい頃。物心つく前から、家族全員でクリスマスを過ごした事がない。
「亜李朱、ごめんね。今日はクリスマスイブなのに、パパもママもお仕事で」
「わたしなら、だいじょーぶだよ! パパもママも、おいしゃさんなんだから。おしごとだもんね」
「ごめんな。亜李朱。寂しい思いをさせて」
父の大きな手が、私の頭を撫でてくれた。
「それにね、いい子にしてると、サンタさんが来てくれるんだよ! だから、さびしくなんかないよ」
一人っ子の私。
両親との三人暮らしで、両親は共に大学病院の外科医と麻酔科医。
本当は、寂しいけど。
一緒にケーキ食べたい。
友達はみんな、一緒に過ごしているのに。
ーーどうして、わたしだけ違うの?ーー
そう思っても、現実は何も変わらない。
『寂しい』なんて伝えても、両親を困らせるだけなんだ。
幼心に思った、七歳のクリスマスイブ。
ダイニングテーブルには、ピザとかチキン、サンドイッチもあった。
「冷蔵庫に亜李朱のケーキ、入っているからね」
冷蔵庫を確認すると、母に言われた通り、イチゴのショートケーキ。
寂しさを紛らわす為、ウサギのぬいぐるみと、シルクハットを被ったクマのぬいぐるみを椅子の上に置いて。
こうしていると、不思議の国で、ティーパーティーをしているみたいな気分。
だけど、全然楽しくない……。
「誰か、一緒に居てくれないかな……」
食事を終え、リビングでお絵描き。
黄色いクレヨンで、お星様をたくさん描いて、その周りを紺色のクレヨンで塗っていく。
「ここは、星の国。大きなお城があって、王子様がいるの」
ウサギとクマのぬいぐるみに、言い聞かせる。
「かんらんしゃとか、メリーゴーランドがあるんだよ!」
ぬいぐるみだから、返事なんてするわけないよね。
「遊園地みたいだね!」
えっ!?
年上のお兄さんみたいな声。
ぬいぐるみの方を見るけど、違うみたい。
空耳なのかな?
「こんばんは!」
空耳じゃない。確かに聞こえる。
「だれですか? どこにいるの?」
周りを見渡すけど、誰もいない。
「ここだよ」
「どこなの?」
「それじゃあ、目を瞑ってて。僕のいる世界に、連れて行ってあげる」
謎の声に言われるがまま、目を瞑る。
「いいかい? 僕が『いいよ』って言うまで、目を開けちゃダメだよ」
すると、不思議な力に吸い込まれ。
「目、開けていいよ」
目を開けると、そこに広がる景色は……。