王の証明
番外 アホ話 エロいことはしないけど全裸なのでR-15?
政務を幼帝がするようになった後
幼帝は母親譲りの美しく少女めいた顔立ちをしている。彼がまだ幼く、男女の別もつかぬ年だということもあるだろう。年を経て声変わりする齢になればもっと男らしい姿になるだろう。
とはいえ、臣たちの間では異なる意見を持つ者もあった。
「…ほう。そちらはつまり、余が男子か疑わしいから、女子ではなく男子である証を立てろと、そう申すか」
「い、いえ、そんなことは…」
幼帝は涼しい顔で微笑している。先帝を知る臣はその表情に先帝の面影を見る。そして、先帝がそのような顔をしていた時のことを思い出し、矢面に立つことになった者に同情の視線を向けた。
いずれは起こることだったとはいえ、不用意なことを言ったのは間違いない。皇帝に娘を嫁がせ縁戚関係になるというのがこの国で政治的権力を得る時の常道であるとはいえ、そして早く引き合わせた方が正妃の座を射止められる確率が高くなるかもしれないとはいえ、まだ男女の交わりも知らぬ幼帝である。そのような政治的駆け引きの材料だとは思いいたらず、ただ己の女顔をなめられたと思うかもしれない。実際のところ、幼帝ほどの聡明な君子となれば、王としては性別は些末な話である。ただ皇子を得るため、あてがう人材が変わるというだけで。
幼帝は手にしていた笏を置き、傍らに控えていた、人の姿を取った麒麟に言う。
「ナズナ、手を貸せ。余の衣は己で脱ぎ着するには向かん」
「え、は?」
麒麟の戸惑いを意に介さず、幼帝は玉座から立ち上がる。遅れて幼帝の意をくみ取った臣たちが蒼い顔で慌て始めた。
「主上、お戯れはおやめください!」
「戯れ?余が男子だと示すには余の陽物を見せてやるのが早かろう。どうせ、余の性を疑っているのはそち一人ではあるまい」
「だからよいって、衆目の前に肌を晒すなど…」
「余の玉体に恥ずべきところは一つもない。疑わしいというなら、いくらでも見るが良い」
彼らは思いいたるべきだったのだ。物心ついてからこの方、侍女に細やかに世話され着替えさえ人の手で行う幼帝に、己の裸体を見られることに対する羞恥心が存在するわけがないのだと。しかも、性への自覚、芽生えも迎えていない、幼い子供なのである。己の肌を見られることに対する恥じらいなどあるわけがなかった。
ほどなくして、幼帝は身に付けていたもの全てを脱ぎ去り、全裸になった。堂々と仁王立ちをして己の体格相応の陽物を臣下に見せつける。
「さて、これでも余が男子であるか疑わしいと申すか、そちら」
「主上はまぎれもなく男子でございます!!」
さてこれで騒動が収まるかといえば、そうは問屋が卸さない。幼帝はそのまま黒龍を呼び寄せる。
「カレル、絵師を連れて参れ。余の玉体を描かせる。このようなことがあるたび衣を着替えるのは面倒だ」
「は、連れて参ります」
「主上、夏とはいえお風邪を引かれてはなりません。衣をお召しになってください」
居たたまれなくなった臣下の進言も、幼帝は面倒だと突っぱねた。麒麟は陶酔に近い表情を浮かべている。止められるものがいない。
そもそも幼帝の羞恥心も大概だが、霊獣たちの方が衣服に対する認識は酷いのであった。獣は衣をまとわぬものなのだから当然といえば当然なのだが。基本的に防寒具か防具か装飾品だとしか思っていない。肌を見せることに対する羞恥心は殆どないし、何なら煩わしいと脱ぎたがる。揺れるのが邪魔だからと下着は脱がないでくれるが。
黒龍が絵師と彫師を連れて戻ってきた。
「来たか。その方らに余の玉体を芸術として残すことを命じる。誇張はいらぬ。ただありのままに記せ」
「は、はあ…」
「カレル、説明もせずに連れて参ったのか。怠慢であるぞ」
「主上からの命であれば、どのような命であれ謹んで拝命するものかと」
「只人の大半はそなたらのような偏った変態ではないのだぞ。…ああ、もうよい。余自ら説明してやる。余が女子のような顔をしているから女子ではないかと思うものがいるようなので、余が男子であるとよくわかるように、玉体を絵に残させることにした。いちいち脱いでみせるのも面倒故な」
「…は、御前、承りました」
絵師は了解するやいなや、紙に筆を走らせ始める。といっても、作品のアイデアスケッチなどにあたるクロッキーのようなもののようだが。彫師も同じくそういうことならと隣でスケッチを始めている。諸々の感情よりも芸術家としての職業意識が勝ったらしい。
先帝も経緯は違うが玉体を絵に描かせている