――01 目覚めのおっぱい。
魔法とか何も関係ない1話ですいません。
――01
目を覚ますと、そこにはおっぱいがあった。
もう一度言おう、おっぱいだ。
いや、正確に言えばそれを僕がおっぱいだと認識したのはもう少し後だった。
目を開け、自身に覆いかぶさる謎の質量をその手で確かめたその時――僕はそれが女性のおっぱいだと悟ったのである。
「……は? なんでここにおっぱいが?」
言葉にし、改めて今自分が置かれている状況がわからなくなった。
一度、記憶を遡ってみることにしよう。
僕は大学に入学したての十八歳で、名前は小林渡だ。
「いやいや、どこまで遡ってるんだ僕は……」
目の前のおっぱいを一度揉んで、心を落ち着かせた。
こういう時、やはりおっぱいは頼りになる……
おっぱいのおかげで平穏を取り戻した僕は、もう一度思考を試みることにした。
確か、僕はついさっきまで自宅にいた筈なのだ。
そう、段々記憶が鮮明になってきた。
慣れない大学の授業を終え、まっすぐ大学の寮に帰ってきた僕はまず風呂に入った。
そして食堂に行き晩御飯を食べ、自室に戻り携帯でお気に入りの動画を見た。
明日は一限があるのだと思い出し、少し早めにベッドに潜り込んだ。
そして――僕は眠りについたのだった。
「あぁ、これって夢なんだ」
もしも僕の記憶通りなら、目が覚めた瞬間におっぱいの下敷きになっているわけがない。
現実の僕に、裸で覆いかぶさってくれるような優しい女性の知り合いはいない。
「まさか……痴女か……?」
もしや、男子寮に忍び込んだ痴女がたまたま僕の上に裸で覆いかぶさった可能性も考えたが、それは現実的ではない。もしそんなことが本当に起こっているのなら、それこそ夢だと思いたい事件である。
「どんだけ欲求不満なんだよ……まったく……」
言って、もう一度その程よく実ったおっぱいを触る。
今度はただ揉むのではなく、その弾力を測ってみようと人差し指でツンツンしてみた。
すると、驚くべきことが起こったのである。
「こいつ……生きているっ?!」
そう、無生物である筈のおっぱいが、反応したのである。
詳しく言えば、僕が人差し指でそのおっぱいをツンとした瞬間――確かにそのおっぱいはピクリと動いたのである。
「ぐすっ……ぐすっ……」
その時、鼻をすするような音が聞こえた。
「もう……やだ……」
同時に、女性の泣き声のようなものも聞こえた。
「あたし……汚れちゃっ……た……」
ぷるぷると震えるおっぱいに別れを告げて目を閉じる。
すれば、僕の思考は急速に加速していった。
もし、目の前にあるおっぱいがこの声の持ち主の物だったら。
これは夢なんかではなく、現実のことだったら。
おっぱいの持ち主の女性は泣いていて、汚れちゃった……と確かに言ったのだとしたら。
これは、まずい。
いや、まだこの一連の流れは僕の夢説のほうが濃厚である。我ながらなんて性癖を持っているんだと嘆きたくなる内容だが、夢ならばオールオッケー問題なしだ。
だが、本当に現実に起きたことだったら?
なにか、寝る前に僕は大変な過ちを犯していたとしたら?
考え、ある嫌な予感が脳裏を過ぎった。
入学祝いに先輩に貰った酒が、部屋の冷蔵庫に入ってはいなかったか?
いやいやいやいや、僕はまだ十八歳の未成年で、お酒なんて飲んだこともなくて。
まさか寝ぼけて冷蔵庫にあるそれを飲んでしまうなんてアクシデントは起きない筈だ。
「……アルコールなんて……だいっきらい……」
その時、瞼の向こう側にいるおっぱいがそんなことを言った。
心臓をなにかに突き刺されたかのような、鋭利な刃物で心の中を切り裂かれたかのような感覚が、その時僕の体の内側に広がった。
わかった。わかったよ。そういうことか。
初めてはこういう感じで終えるとは思わなかったが、仕方ない。
犯してしまった罪は償わなければならない。
僕に一人のおっぱいを養える蓄えはないし、ましてやバイトすらしていない。
高校を出たばかりの青臭いガキンチョで、恋愛経験だって殆どない。
だが、僕だって男だ。覚悟を決めて目を開けよう。
確かに、自室で酔っ払った僕がいったいどうやっておっぱいと出会い。
こういう経緯に至ってのかは謎だが。
そこにどんな光景が広がっていようと、きちんと受け入れるのだ。
心の中で覚悟を決めた僕は、決死の覚悟で目を見開いた。
先程とは違い視界が多少開けており、日光が僕の眼球を襲った。
強烈な光に目を閉じかける僕だったが、なんとか堪えた。
次第に日光の強烈な光にも慣れ、ぼやけた視界に人の頭のようなシルエットが浮かんできた。
やはり、あのおっぱいには頭が付いていたのだ。
ということは、あの女性の泣き声も然り……
――ぽつり ――ぽつり
その時、僕の頬に生暖かい雨粒のようなものが降った。
その正体を確認しようと、僕は意を決して視界に映るそのシルエットを見た。
すれば――
「あんた……だれよぉ…………」
ぐしゃぐしゃな泣き顔でこちらを睨む、一人の少女がそこには居た。
かなり豪快に泣いたようで、その顔をしっかりと拝むことは出来なかったが、おそらくかなり整った顔をしているように見える。
ふむ、こんな綺麗な少女を僕は泣かせてしまったようだ。
僕は知らぬ間に、最低なゴミクズになってしまったようである。
こんな綺麗で可愛い……少女を……少女を……少女を……
「自首します」
こうして、僕は青少年保護育成条例に――見事引っ掛かった。
なるべく今日の内に2話投稿します。
じゃないと、これなんの話だってなりますよね。
はい、すいません。