そうだ異世界ぶっ潰そう。2
この公園がある街は、それなりに都会だし、人口も多い。
公園がある位置も、街の中心部で、近くには駅もあり、夕方にもなると、帰宅途中の人や車が多く行き交うはずだ。
なのに……
今日は、まだ一人も誰も公園前を通っていないし、そもそも電車や車が走る音が一切聞こえていない。
はっきり言って異常だ。
だが、
そんな、公園の外の世界の異常など全く気にした様子もなく、遊具で遊ぶ二人。
二人が遊び始めてから、軽く1時間以上経つのに、いまだ沈むことなく街をオレンジに照らし続けている夕日に目もくれず、終わることのない夕暮れ時の公園を走り回る杏里と現。
「ねぇ現‼︎今度はあれをしない?」
「うんいいよ‼︎」
今度は鉄棒に向かっていく。
だが、
「あれ?」
ふと、何かに気がついたように立ち止まる現。
「現?どうしたの?」
現につられるように立ちどまり、首を傾げながら問いかける杏里。
「いや、今何時なのかなって、今日は6時にはお母さんが帰って来るから、それまでには帰らないといけないんだ」
「そうなんだ……」
つまらなそうに、少し沈んだ様子で地面を蹴る杏里。
「うん、それで何時だろう、さっき公園に来
たのが4時だったから、そろそろ帰らないといけない時間だと思うんだけど、どこかに時計あったっけな……」
キョロキョロと辺りを見回しながら不安げに語る現。
「現‼︎」
自分を無視して帰ろうとする現の態度が気に入らない様子の杏里が、声を荒げて現の名前を呼ぶ。
「な、何?」
突然大きな声で名前を呼ばれ、驚く現。
「いいじゃん、今日くらい、もっと遊ぼう
よ‼︎」
頬を膨らませ、駄々をこねる杏里。
「でも……」
しかし渋る現。
すると、何か決心したとばかりに拳を握り、語り出す杏里。
「実は、現に話したいことがあるの」
「……何?」
「実は私、この世界の神様なんだ」
「えっ⁉︎」
「それでここは神の領域、だから時間も進まないし、現は気にしなくていいよ」
そう言って、笑顔になる杏里。
気にしなくていいといわれても、それを信じていいのか、戸惑う現。
「でもここはいつもの公園だよ?」
「うん、見た目だけならね、でも、今は私が来たから神の領域になってるの」
杏里は、あたりを見回しながら告げる。
「それに、今外の世界は危ないわ、だから全てが終わるまであと少し、ここにいて」
「全てが終わるって?」
疑問を口にして首を傾げる現。
「そうね……はっきり言って今、あなたの世界の全ては終わろうとしているの」
「……どうして?」
「それが決まりだから」
「じゃあお母さんとももう会えない?」
「そうなるわね」
「そっか……」
シュン……と肩を落とす現。
「……さみしい?」
そんな現の顔を覗きこんで問いかける杏里。
「ううん、さみしくない」
現は、パッと切り替えたように否定した。
「……じゃあ今日友達と遊ぶ約束をしてたってのは?」
そして逆に杏里に問い返す。
「それは本当、だから神の領域であるこの場所を開いたんだもん」
淡々と答える杏里。
「でも来なかったんだ」
周囲を見回して悟る現。
「ううん、来たよ」
だが、杏里はそれを否定した。
「えっ⁉︎でもさっきは来なかったって」
先程の会話の矛盾に戸惑う現
「だって、その時はまだ現は友達じゃなかったから」
今は友達でしょ?
「私はこの世界の悪を司る神なんだ。だから今日、その私を殺しに正義の化身が来る予定だったんだ……」
「……たぶんそれが現なんだと思う」
だから、
少女は、現に微笑みかけながら、少し寂しそうに語りかける。
「……それで、最後に私を殺してくれればいいから、だからそれまでは」
あそぼ?