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それが世の常私の役目。

夕方の小さな公園。


山に隠れかけている夕日が、公園に残された遊具達をオレンジ色に照らしている。


現在の公園には、日中たくさんいた子供達の姿はなく、子供達の賑やかな笑い声の響いていた公園は、今日の仕事は終わったとばかりに静まりかえっている。


夕日に照らされた遊具達も、満足そうな、でも少し寂しそうに動きを止めて日が落ちて夜が来るのを待っている。


「キーコー、キーコー……」


そんな、静かな公園に、まるでリストラされたサラリーマンみたいに力なく、うつむきながらブランコに腰掛ける少年の姿が一つある。


少年は、ブランコに乗りながらも、漕ぐことなく座り続けているので、ブランコ自体は一切音を発していない。


「……キーコー、キーコー……」


少年は、自分の口で擬音を発しながら、寂しそうに足を蹴り上げ、靴を飛ばす。


トン……トン……、


と、5メートルほど飛んだ靴は、何回かバウンドして止まる。


だが、靴の行く末に興味がなかったのか、その様子を見ることなく、うつむき続ける少年。


「これ、落としたの君?」


すると、可愛らしい女の子の声と同時に、少年のうつむく視線の先に、少年が飛ばした靴が差し出される。


どうやら、少年の靴が落ちていることに気づいた女の子が、わざわざ届けてくれたようだ。


少年の靴を持つ手もまた、女の子のもので随分と小さく可愛らしい。


「…………っ‼︎」


誰もいなくなったものとばかり思っていた少年はら突然話しかけられ、少し驚きながら顔を上げる。


すると、そこには、白いワンピースに、麦わら帽子、綺麗な長い黒髪の女の子が、少年の顔を覗き込むように立っていた。


「うふふ、やっと顔上げた‼︎」


そう言って、無邪気に笑う女の子は、まるで夕方に登る太陽みたいで、とても眩しく輝いていた。


「……もう、誰もいないかと思った」


そんな女の子に見とれながら、ボソっと、独り言のように呟く少年。


「うん、私も‼︎」


少年の発言に、元気に手を上げて同意する女の子。


「実はお友達と遊ぶ約束をしていたのだけど、学校の用事で遅くなっちゃって」


来てみたら誰もいなかったの‼︎と、腕を組んで困った様子の女の子。


「じゃあなんでまだ帰ってないの?」


遊ぶ相手がいないなら帰ればいいじゃないかと、女の子に問う少年。


「君を見つけたから‼︎」


ニコッと、満面の笑みで少年に手を伸ばす女の子。


「えっ?」


豆鉄砲をくらい、惚ける少年。


その様子に、満足した様子の女の子。


「私の名前は"杏里"よ‼︎よろしくね……えっと、あなた、お名前は?」


女の子は、自ら名乗り、少年にも名前を問う。


「僕の名前は……うつつ、現実の現で現っていうんだ」


「現ね、よろしく‼︎」


「うん、よろしく杏里ちゃん」


さっきまでの暗い雰囲気はどこへやら、すっかり元気になった少年が、にっこり笑って少女を見つめる。


「うん‼︎じゃあ、お互い名乗ったところで、一緒に遊んでくれる?現?」


手を差し出す杏里。


「うん‼︎遊ぼう‼︎」


手を取る現。


こうして、手を取り合い、今日の仕事を終えて眠りにつこうとし始めている遊具達に、もう一仕事させにいく現と杏里。


……だが、



二人は気づいていない。


良き遊び相手を見つけられ、無邪気にはしゃぐ二人とは反対に、夕日のオレンジに染まる街の方は、不自然なまでに静まり返っていることに。


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