表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/59

第55話 山本の作戦

第55話 山本の作戦


私とグレイアムは屋台に戻ると、上杉の皆を集めおやじさんの話を聞かせた。


「すぐに行こう」


「雑賀孫市」の山本がそう言った。


「屋台は私が見ているから、安心して行っておいで」


信玄殿がそう申し出てくれ、私たちはそれに甘える事にした。

安田が車を回してくる、そう言い残して一足先に総本部の庭を出て行った。

「前田慶次と混同した織田信長」が、来場客の目をひく…。


「しかし私ら、この格好で良いのだろうか…?」

「何言ってんのさ謙信、俺らこういう時のための『戦国』コスじゃん」


ぺさんの少女向け絵物語から抜け出したような、やたらイケメンの伊達政宗が笑った。

甘粕景持とやら、マイナー武将のグレイアムが私をちらりと見た。


「俺らはまさに戦うための格好をしているって訳さ…謙信以外はな」


そういう私は戦国のあの世からこの世へと着て来た、あの青鈍色の法衣に、

薄い黄色の袈裟、黒の燕尾帽子という僧形だった。

ゲームで言う「初期装備」みたいなものだろう。

この仮装のために、私は無精ひげまで伸ばすはめになった。


私たちは安田が運転する車と、グレイアムの運転する車に分乗して品川を目指した。

品川には上杉の倉庫をはじめ、井上会系の倉庫がたくさんある。

途中にあるコンビニの駐車場で一旦停まり、集まって話をした。


「俺と安田はこの先の交差点で別れて、敵の後ろに回る」


山本が戦地からの情報をもとに、スマホで地図を見ながら言った。


「了解、俺らは何をすればいい?」


グレイアムも同じ地図を見ながら聞いた。


「俺らが先行して敵を引き付けて誘導する、謙信たち三人でそれを迎え撃って欲しい」

「オッケー。安田さん、今度は捕まっちゃだめっすよ」

「ひどいな、政宗は」


皆で同じ地図を見ながら、戦場の地理を頭に叩き込む。

政宗が聞いた。


「山本さん、突撃の合図どうします? 電話にします?」

「そうだな、でも声は出したくない」

「…LINEで『龍』、それでいかがか」


私がふと思い出して、皆に提案した。

山本は不思議そうな顔をした。


「『龍』?」

「『龍』は『懸かり乱れ龍』…上杉軍総攻撃の合図だ」



二台の車はコンビニの先の交差点で二手に別れた。

戦場では品川の組が戦っていた。

敵は神政会、戦況はこちらの不利。

私とグレイアムと政宗の三人は、戦闘の集団から少し離れたコンテナの影に潜んだ。

私たちは戦闘集団を挟んで、山本たちとは反対側にいた。


息を殺して、車の中で装備した武器をもう一度確認する。

みんな拳銃を持っていたが、私は仮装に使った小道具の刀も持って来ていた。

「姫鶴一文字」、台湾で直政殿がくれたあの模造刀だった。

刃はつけてある、確かに見つかれば捕まってしまう。

車の座席の下に隠して運んだ。


LINEに山本より準備完了のトークが流れて来た。

私は「龍」とだけ入力し、送信した。


山本と安田が敵の後ろに立ち、発砲する。

それに驚いた敵がこちらへと逃げて来る…。


…実はこの山本の作戦を私は知っていた。

知っていたと言うより、体験した。

啄木鳥戦法、この作戦は失敗に終わったはずだった。


「そなたはする仮装を間違えたようだな、山本…!」


私たち三人が敵の前に出て、挟み撃ちにした。

それを幸いと、疲弊した地元兵らが私たちと入れ替わるように引いた。

そして私たちの後ろについて、援護に回った。


「さあね…そうでもないさ」


山本は仮装の小道具として、背中に背負っていた大型の銃を抜いた。

アサルトライフル…!

そうだ、だから「雑賀孫市」なのか。


山本がアサルトライフルで掃射し、そこから先は乱戦だった。

撃ち漏らした敵を私たちで攻撃する。

そんな中、私は集団から離れたところでこそこそと動く二つの点を見つけた。

…あれが敵の総大将と小姓か。

私は刀を抜いて前に出た。


「な…謙信、危ないって!」

「その装備じゃ防御ないだろが! 戻れ謙信!」


政宗とグレイアムが慌てて私を引き止めようとした。

向かいから山本の掃射と、安田の精密な狙撃が流れて来る。

当たりはしない、信じる。

信じるから当たらない。

私は戦闘集団に飛び込み、駆けて通り抜けた。


倉庫の間を抜けて、道路に出る。

地図だとこの先は出島になっている、出入りは中央の道路一本。


「道路封鎖!」


私は敵を追い回しながら、後ろの味方に叫んだ。

敵は追い込んだ、しかしお側の小姓の銃撃が邪魔だ。


「どいてろ謙信!」


後ろから「前田慶次と混同した織田信長」の叫ぶ声がした。

走りながら、私は道路の端へと横にそれた。

きっと安田なら出来る。

後ろは山本が足止めをしている、グレイアムが前で戦う壁になっている。

政宗が安田を護衛している。

私の横を安田の銃弾が駆けて、追い抜いて行った。


小さく悲鳴が聞こえ、小姓の男が倒れ込んだ。

前にいる敵はあと一人、私は進んだ。

ところが、コンテナの間から家来衆がばらばらと飛び出して来た。

伏兵…囲まれてしまったか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ