第47話 X-DATEの意味
第47話 X-DATEの意味
ぺさんがあの男と別れた…?
「俺さ、今いる組から風俗関係の仕事まかされてて、女の子集めるのにスマホ使うから、
そっち方面に強い武本の会社の事も、自然と聞こえて来るんだよ。
あの旦那、さんざんお前の元嫁さんの事利用しといて、
会社が手に入ると決まったら、はいさよならみたいな…とか」
やっぱり…ぺさんはあの男に利用されていたのだ。
「あいつ今は銀座の高い店で派手に遊んでるよ、俺も見てる」
「島津殿、ぺさんは? ぺさんはどうしてるか知ってるか?」
「さあね…親と一緒にいるんじゃないかな? だいぶ歳みたいだし」
私が見た時、ぺさんの両親はすでに年老いていた。
そろそろ面倒をみる人も必要な年齢だろう。
きっと自宅で親の世話をだけをして、ひっそりと暮らしているのだろう。
そうしてそのまま彼女自身も年老いていくのだろう、たまらない。
家に帰ると、いつものように夕食の支度がしてあり、
いつものように合戦の時間が近づいて来た。
イベントもいよいよ近く、今日からそのための勝ち点調整をする予定だった。
格下と対戦するには、いかに低得点で勝利するか。
決勝で政宗の「MANIA CLUB」と対戦するには、道中を有利に進めなければならない。
政宗のところも当然そうしており、私のところにも同じ指示が来ていたのだった。
他の連合と同じように、「クラブLOVELY」でも合戦前に外部チャットで事前に集合する。
今日も「X-DATE」は来ていた。
今では連合の皆とも打ち解けあっており、冗談を言い合うほどだった。
宇佐美はこの「X-DATE」の背後に、ぺさんがいるのではないかと言う。
「X-DATE」は法人だ、構成員は何人いるのだろう。
そしてこの法人のどこに、どうぺさんが関与しているのだろう。
流れて来る「X-DATE」からのチャットに、私はぺさんを探した。
武本の会社は買収され、事実上倒産した。
要職も交代となり、新しい人事が新聞の片隅に載っていた。
竹中…半兵衛か重治か知らぬが、それがぺさんの再婚相手だったのだろう。
そんな人事よりも、ぺさんが気になって仕方がない。
「どうした謙信?」
英語を教えてくれている甘粕が、教本を置いて言った。
10月も半ば近い、ある休日の午前中だった。
「あ…申し訳ない」
「…姐さんの事だろ? どうしてるんだろうな…」
甘粕も私と同じ思いだったか。
私は気分を変えようと、話題も変えた。
「ところで甘粕は祭りの仮装を何にするか考えたか?」
「ああ、ハロウィンの…政宗のやつが伊達政宗で行くって言ってたから、
俺も何か戦国武将で行こうかと」
「政宗の伊達政宗か、伊達じゃないくせして…あ、そうだ」
私はふと思いついて、スマホを取り出した。
「『X-DATE』の『DATE』て、何て意味だ?
英語がわからなくて、甘粕や政宗が『エックスデート』と読むまま、
私もそう読んで来たけど…」
甘粕に習っているとは言っても、私に英語はまだまだ難しかった。
英語は綴りと読みが一致しないのがどうにも理解し難い。
甘粕の名が「グラハム」と綴って、「グレイアム」と読むように…。
「ああ、『DATE』は『だて』って書いて『デート』…『日付』て意味な。
『X-DATE』で、『予定実行の日付』。
日本では『デート』と言うと、『逢い引き』を意味する事が多いね」
「『だて』…! 」
それを聞いて、甘粕がはっとした。
「『だて』…伊達…『X』は見たまんまバツ印を意味する事もあるから、
『X-DATE』は日付のカウントダウンじゃなくて、『伊達じゃない』って意味になるぞ…!」
「『伊達じゃない』…甘粕!」
伊達じゃないのは政宗だけじゃない、本名が「成実」のぺさんもまた伊達じゃない。
「うん、確か姐さんも名前が『成実』…『伊達成実』の『成実』だ。
姐さんも『伊達じゃない』…わかったぞ、『X-DATE』の正体が。
『X-DATE』は姐さんが直接関わっている」
「甘粕もそう思うか、私も『X-DATE』はぺさんが代表だと思う。
ぺさんがその正体なら、何もかも合点がいく」
私たちがサクラである事も、何もかもを承知で「クラブLOVELY」に来てくれた事。
その上でソーシャルゲームごときに、回収を抜きに多額の私財を投じた事。
そしてその資金を億単位で用意できる人物である事。
それほどのプレイヤーでありながら、自身が目立とうとしなかった事。
何より私や連合員らの影になって、支援に徹した事。
それらは全てぺさんでなければ出来ぬ事…。
ごちゃごちゃとした賑やかな音が近づいて来て、部屋の襖が開いた。
「俺、ハロウィンはこれで行こうと思うんだけど、謙信にグレイアム、どう?」
やたらとホスト臭く、やたらとイケメンな伊達政宗が楽しそうに入って来た。
私は伊達政宗という武将を知らないが、きっとそういう人物なのだろう。
「政宗、『X-DATE』の正体が大体わかったぞ」
「マジ?」
「姐さんだよ、姐さんも『伊達じゃない』だ」
「あ…そっか! 姐さんも確かに『伊達じゃない』だ!
なんで気付かなかったんだろ、こんな簡単なことだったのにさ…」
伊達政宗は笑って、私と甘粕の間に座った。
「ところで二人こそハロウィンの仮装考えた?
謙信はもちろん『上杉謙信』だよね? 俺と戦国あわせしてよ」
「ちょっと待て、俺も戦国武将で行くよ? 誰がお前らだけで戦国あわせなぞさせるか」
「えっ、俺らの邪魔するんだ? てか、グレイアムは何の武将?」
甘粕と政宗はまた喧嘩になり、取っ組合いを始めた。
そんな二人の様子を私は笑った。
本当に仲が良いのだな…。
私はいたずら心で、二人の間に油を注いでみた。
「甘粕景持…上杉謙信第一の家臣、そうだろ甘粕?」
そんな甘粕と政宗のために、私は会社で皆に相談した。
その日はちょうど信玄殿も来ている日だった。
信玄殿は私の相談に眉をひそめた。
「…結婚式?」
「はい…彼らは男同士にござりまするが、愛し合い、永遠を誓うておりまする。
結婚式のような、何か記念になる事をしてやりとうござりまする。
それと、これは私からなのですが…彼らを養子に迎えとう存じまする」




