激動の一日の終わり
この世界の住人が使える『魔法』の秘密が分かり、これからの生活に活かせないかと俺は自宅で計画を立てていた。
もちろん、ヴィーヌ達5人も一緒だ。
「ヴィーヌ、そう言えば、お前ら一体何を食って、生活してきたんだ?」
ソファに座り、くつろいでいたヴィーヌに尋ねる。
「そこら辺にいる、…生き物」
「生き物なんかいたか?」
ヴィーヌは少し考えて答える。
「ガクトが、私を助けてくれた時、襲ってきたのが…いたでしょ。それ…だよ」
「えっ、あんな奴食ってるのか?」
「うん、とっても…おいしい」
少なくとも俺は、全く食欲を掻き立てない、産物だったのだが、こいつらにとっては生命線なのだろう。
「どうやって、取ってたんだ?」
ちょっと、笑みを浮かべて、ヴィーヌが答える。
「『魔法』を使って、雷を落としたり…燃やし尽くしたりして、…捕まえた」
なんで少し嬉しそうなんだ?
もしかしてこいつは、隠れSなのだろうか。
「でも、これからは…注意する。ガクトに…言われたから」
「ああ、頼むぞ。あと、あの生物のことは、これから『魔物』と呼ぶことにする。俺が知っている限り、あんな生物は存在しないからな。ちゃんと区別しないと」
「『魔物』。うん、…覚えた」
少し、ヴィーヌが笑みを浮かべた。こいつは知るということが好きなのだろうか。
「よーし、そろそろ飯にするか」
「「「「……っ!」」」」
その言葉を発した瞬間、今まで何も反応しなかった4人が、ビクンと動いた。
『飯』という言葉の意味を覚えたのだろうか。随分、都合のいいことだけを覚えるものだ。
この世界にも、夜が訪れた。
俺がこれからのことを考え、食材の量を調整しながら作った料理を、なんの背徳感もなしに平らげると、何事もなかったように、ベッドに倒れこんだ。
5人で仲良く川の字になり、俺のベッドを占領している。
本当に仲良しなのだろう。
俺は5人が使った食器を、最低限の水量で洗い流した後、全員が眠りに就いたのを確認して、一人机で考え事を始めた。
「これから、この世界で生きていくには、まず彼らの協力が必要になる」
眼前で寝静まっている、5人組に目をやる。
(まず、第一に食料と水だ。特に水は絶対に必要になる。計算してみたが、どんなに節約しても、持つのは1週間〜2週間が限界だろう。それ以降を凌ぐためには、やはり魔法の力を頼る他ないだろう。そのためにも魔法の仕組みをもっと知らなければ)
グーっと背筋を伸ばし、今日という1日を振り返る。
「それにしても、まさかこんなことになるとは、全く想像もつかなかった。神に願って、神が本当に叶えることなんてあるんだなぁ。しかも、すぐに。でも、少なくとも、彼らは俺を必要としている。俺の知識を。俺という存在を。だから、彼らの期待に応えなければ。教師なんだから」
小さな独り言を長々と述べると、立ち上って、リビングに布団を敷く。
敷いた布団に寝転がり、目を閉じる。
「まあ、やるだけやってみるか」
そう小さく呟くと、激動の1日が終わりを迎えた。