期待の反動
私は酷くなる虐めを耐え抜き、小学校を過ごし切った。
その頃には仲の良かった友人ともただの被害者と加害者の関係になっていた。
全く、人間とはなんて醜い。
平等を求めているのに不平等にさせてしまう。
いや、少し違う。平等を求めるがあまり不平等を嫌う。
ある一定の基準から秀でても、落ちこぼれてもいけない。住みやすくなったというがただの欺瞞でしかないのかもしれない。
私は全力で抗い、戦った。
虐めを無視し、担任と親と親戚と、私に関わる大人達の期待に沿うように戦った。
……そして。
「ほっ、あった」
予定していた難関中学に合格した。
私はその時、泣かず、笑わず、驚かず、呆然としていた。
正直、合格したのは分かっていたが、やっと私の逃げ道ができたと思ったからだ。
「マリ、よくやったな」
「マリ、ありがとね」
「マリちゃん、あなた賢いのね」
「これは、将来大物になるな」
家族や親戚は私を讃えた。自分のことのように喜んでくれた。
私もその笑みを見ると、少しだけ笑えた。
「お父さん、お母さん、ありがとう」
その言葉を最後に親孝行は終わってしまった。
中学に入っても私は圧倒的な頭の良さで特別扱いをされてしまった。
「流石だ、烏野。お前だけ先のページに進もう」
「烏野さん、また満点よ。担任として誇らしいわ」
私への教師からの期待はクラスメートの、そして学校中の生徒の不満と嫉妬へと変わってしまった。
「烏野、お前の教科書見やすくしといてやったよ」
クラスにいるある男が私の教科書に陰湿な落書きや誹りを油性ペンで描いていた。
「ほら、綺麗だろ。はっはっはっ!」
不敵に笑う少年に腹立たしさなど覚えなかった。
感じたのは卑屈になっていく私の心だけだった。
そして、期待と嫉妬に身を、心を、全てを傷つけられた私は、ついに限界を超えてしまった。
「バァーン」
ある授業中に勝手に机を叩きつけ、教室を飛び出た。
「烏野、どうした?」
教師の声を無視して、家に帰った。




