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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
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魔法の欠点

ヴィーヌ以外を自分の家に残し、外へ出た。どうしても気になることがある上、ヴィーヌ以外はまだ意思疎通が取れないためだ。

「よーし、この辺でいいだろう」

自宅から少し歩き、集落の外に出た。

辺りは、枯れ木と雑草ぐらいしかない、まさに荒野である。

「で、聞きたいことなんだが…」

「うん、何…?」

「あの、不思議な力は何なんだ?」

ヴィーヌは、訝しげな表情を浮かべる。

「不思議な力って、何の…こと?」

「えーと、俺を助ける時に使った炎とか、ロイと話す時に使ってたやつとか、そういうもののことなんだが」

「あー、あれなら皆…できるよ」

「そうなのか?」

「うん、ロイもティカもルースもパトラも、ここにいる人達は…みんな使えるよ」

「へぇー」

(あんな異能力が全員使えるとは、一体この世界はどうなってるんだ)

そう考えていると、ヴィーヌが提案をしてきた。

「良かったら…見る?」

「いいのか?」

「疲れるけど、少しだけなら」

「なら、頼む」

「うん」

そう言った、ヴィーヌは何もない荒野に右手を伸ばす。伸ばした手のひらには、以前と同じような、魔法陣らしきものが浮かび上がっている。

「はぁー!」

力を込めたその声が響くと、ヴィーヌの周りを白い光が包む。

数瞬で光が消えると共に、魔法陣も消えていた。

「うん? 何も起きて……」

「ズドーーーーーン!!!」

何もない荒野に、突然現れた雲から凄まじい轟音をたて、雷が落ちた。

開いた口が、ずっと閉じずにいた。

「ふうーーー」

ヴィーヌは長い溜息をついて、ヘタリ込んだ。

激しい運動をした後のように、疲れている。

「やっぱり、疲れ…る」

開いた口を強引に動かし、ヴィーヌに尋ねる。

「さっきの雷、ヴィーヌがやったのか?」

「雷って、あのピカピカのこと……? それなら私がやった」

「それって、普通の人間なら絶対にできないよ」

「そうなの? なら、私…凄いんだ」

それにしても、本当に疲れているようだ。少しの間、動けそうにない。魔力切れというやつだろうか。

「おい、ヴィーヌ本当に大丈夫か?」

「うん、何か食べれば…治ると思う」

「そうか、ならこれを食え」

そう言って、ポケットの中からクッキーを取り出す。何かあった時のため、非常食として家から持ち出していたものだ。

「ガクト、ありがとう…」

そう言って、ヴィーヌにとって初めてであろうクッキーを頬張った。




クッキーを食したヴィーヌは、彼女が言った通り、元気になった。

「これ、美味しい、また…食べさせて」

「あっ、ああ」

彼女が起こした雷に未だ動揺しているが、頭を切り替え冷静になって考える。

(俺が昔、RPGのゲームを極めようとした時、ゲーム内で魔法を使ったことがあったな。その時は、魔法を使うための魔力は、宿で休めば回復していたが、こいつは少し違うのかもしれない)

俺の推理を証明するために、ヴィーヌに尋ねる。

「ヴィーヌ」

「何?」

「さっきの力を使った後、何もせずに寝ていたら、次の日に同じ力を使うことはできるか?」

「前にそんなこと…あった。でも、その時は起きてからも、動けなかった」

「そうか、ありがとう」

(この力は眠ることで回復はしない。ゲームとは全く仕組みが違う。でも、何か物を食べると動けるようになる。つまり、この力は、魔力という抽象的なもので起こしているのではない。食物エネルギー、いわゆるカロリーを消費して発動させているのだ)

「ヴィーヌ、今日からその力を『魔法』と呼ぶことにする」

「『魔法』?」

「ああ、そうだ。だが、その魔法をあまり多用するな」

「どうして?」

「お前らのためだ。必要な時は俺が指示する」

「ガクトがそう言うなら、…分かった」

笑顔を浮かべて、答えた。

(もし俺の推理が完璧に当たっていたら、ヴィーヌ達が魔法を使えば使うほど、余計なカロリーを消費し、栄養失調に向かって、拍車をかけてしまう。その恐れがある以上、俺が止めなければいけない)

俺はヴィーヌ達を守る決心をした。

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