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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第三章 第二の来訪者編
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逃走

私が声を荒らげてから、ルーナは数日間話しかけてこなかった。

何かを話そうと顔を向けるのだが、考え込むように黙り込んで、結局、会話が生まれることはなかった。

所詮、人間はこんなものだ。

他人のことを忖度(そんたく)するのにも、限度はある。

これは、私が望んだことじゃないか。

何を今更、気にしている。

これでいいのだ。

……これで。

しかし、この安寧の日々は突然軋みを見せた。




「おいっ、マリ」

話しかけてきたのは名前も知らないクラスメートだった。

「何?」

私は冷たい口調で問いかける。

「お前の世界のこと、教えてくれよ」

「……」

突然、尋ねられたことに何も言えなかった。

記憶から消したかったものが、たった一言で蘇ってしまったからだ。

「……私の世界のことなら、ガクト君にでも聞けば?」

溢れ出そうな感情を必死に堪えて、そう答える。

「先生には聞けねぇよ。忙しそうだし。俺、気になるんだよ。だから、さあ。教えてくれって」

少年は興味本位の目で私を追い詰める。

「私は、向こうの世界のことは思い出したくないの。だから、諦めて」

「そんなこと言うなって。頼むから、教えてくれよ」

彼の言葉に反応したのか、他の生徒も集まって来始める。

「おっ、なんだなんだ」

「マリの世界のこと?」

「俺も知りたい」

……嫌な目だ。

もう見たくない、私を顰蹙(ひんしゅく)させるような嫌な目。

「ちょっと、マリさんは嫌がってるでしょ」

ルーナが私に気づき、必死に庇ってくれている。

だが、どうしてだろう。

私には偽善にしか見えない。

「でも、俺達の教育の理念って、マリの世界のものなんだろ。だったら、知らなきゃいけないんじゃないか?」

「そうだそうだ」

クラスメートが共同で私を追い詰める。

ほら、やっぱりこうなった。

私みたいな社会不適合者に学園に通う資格なんてなかった。




「バァーン!!!」

私は机を強く叩き、教室を飛び出した。

「マリさんっ!」

私の行動にルーナは声をあげる。

私はその声からも、クラスメートからも逃げるように学園を走った。

「やっぱり、私には……。誰とも関わらないのが……」

私は走った。

息が切れかけても。

体が痛んでも。

脳が強制的に動きを止めるまで走り続けた。


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