閉じた世界
「まっ、マリさん……」
今日も今日とて私に声をかけてくるクラスメートがいる。
私の目の前に座っているルーナという少女だ。
美しい金髪をたなびかせるこの少女はいつも私に向かって話しかけてくる。
何を私に求めているのだろうか?
「何?」
できる限り、苛立ちを帯びた口調で返答したつもりだが、彼女はそれでも聞いてくる。
「ここの問題の解き方を……」
「そんなの黒板にそのまま書いてるじゃん」
黒板に指差し、俯いて彼女を視界から外す。
しかし、彼女は顔を私の下に潜り込ませて聞いてくる。
「はあ、何?」
「いや、どうしても分からなくって……、教えてもらえませんか?」
彼女の目は輝いている。
断るとさらに面倒臭くなりそうだ。
「だから、ここの数字をここに代入して、計算する」
「……はあ。なるほど」
彼女は感動したように問題に取り組み出した。
一体、こいつは何がしたいのだろう。
今まで会って来た人間とは全く違う。何がしたいのか分からないし、正直困惑する他ない。
でも、今までと同じ様な雰囲気もこのクラスには感じる。
彼女以外の極数人の生徒は、私に冷たい視線を送ってくる。
見覚えのある冷たい視線を。
私はもう世界を閉ざすのだと決めた。
退屈で、不条理で、理不尽で、不平等な世界とは縁を切ると決めた。
私にはそんな世界に生きる甲斐性も勇気もない。
こもってる方が私には合っている。
こんなことを感じたのはいつからだろうか?
敢えて言うなら、生まれてすぐかもしれない……。
今日も今日とて、ルーナは話してくる。
無視する私に対して、一生懸命に声をかけてくる。
本当にこの子は何なのだろう。
この子だけでもない。
クラスメートの数人は私が感じたことのない雰囲気を見せてくる。
「この、古典の……」
はあ、面倒臭い。
そして、怖いな。
こんな日々は早くやめたいな……。




