迷い人
ある日本の某場所。
電子的な機械、最新鋭のモニターが数台、パソコンが数台。
電気と機械で満ちたその部屋に、ポツンと少女が回転椅子に座っていた。
黒髪ショートで目がぱっちりと開いた小柄な少女。
何日か風呂に入っていないのか、髪が少しばさついてはいるが、綺麗に整えれば誰からも美人、美女と言われるであろうその少女は眠気を感じながらも、モニターに向かい、作業をしていた。
一つの画面では、何かの取引を行い、また別の画面ではRPGのネットゲームを嗜んでいる。
一体彼女は何がしたいのかと言いたいところだが、常人に彼女の考えを理解できるものはいない。
ただ、一つだけ分かることがある。
彼女が時折発する言葉だ。
「はぁー、つまんない」
こんな言葉は誰でも使うだろう。
その言葉を何度も呟きながら、椅子に座り続け、少女は理解し難い作業を行い続けた。
「コンコン」
突然、部屋を叩く音がした。
彼女はその音に反応し、コードだらけの床をゆっくり歩き、何も言わず、扉を開けた。
「今日の昼ご飯です」
白衣を着た女性がトレイに乗った料理を少女に手渡した。
少女は会釈をすると、何も言わず椅子へ戻る。
少女はトレイに乗ったパンをひと齧りすると、咀嚼を止めた。
彼女の体はその食事内容に見合い、痩せ細っていた。
もの凄いスピードでタイピングを始め、訳のわからない数字と文字の羅列が入力されていく。
そして、彼女は溜息を一つ。
「逃げたい。死にたい」
言葉を二言呟くと、椅子に大きくもたれかかった。
「はぁー」
再び溜息をつくと、眼前にあるモニターが突然消えた。
「えっ?」
彼女はカチャカチャと操作を繰り返す。
しかし、何も反応がない。
「何これ、どうなってるの?」
少女は焦りの表情を浮かべる。
電源ボタンを何回も押し、モニターを大きく揺する。
「どうしたらいいの?」
自問自答を繰り返し、何度も何度も再起動を試みるが、直ることはなかった。
「はぁー」
彼女は諦め、椅子にもたれ掛かると項垂れた。
その瞬間、突然部屋を幻想的な光が包んだ。
「何、これ?」
不可思議極まりない状況に思わず立ち上がった。
「少女よ、君は何を願う?」
幻想的な光から、老人のような暖かみのある声が響いた。
「うわっ、どこから?」
驚きを体現した様子で、あちらこちらを見回す。
あるのは幻想的な光と電子的な機械だけなのだが。
「少女よ、もう一度問おう。君の願いは?」
再び謎の声が響いた。
「私? そっか。誰か分からないけど聞いてくれるなら話す。私はどこかへ行きたい。世俗との関わりを断てるどこかへ。私みたいな人が、この世に生きていてはいけないから」
何者かも分からない誰かに願いを教えた。
「分かった。君の願いを叶えよう」
「えっ?」
光はどんどん大きくなり、何も見えなくなった。
「少女よ。目を瞑れ。目を開いた時、君が望む場所へ辿り着いているだろう」
謎の声に導かれ、少女は目を瞑る。
光の中に消え、少女は眠りについた。
「うっ、うーん」
瞼にはいつぐらいかの太陽の光が輝いていた。
いつの間にか、仰向けになっていた体を動かすと、手には土の感触がした。
目を開けると、青空と太陽が燦々と照っていた。
「本当にどこかにきちゃった」
荒野の真ん中に落とされた少女は小さな声でそう呟いた。




