ヴィーヌの本懐 未来
……二週間後。
学校前。
「みんな、再び集まってくれてありがとう。選考結果が確定したので、今から報告したいと思う」
俺が登壇しているのは、前と同じ体育館だ。
不合格者を含めた全ての受験者と先生の姿を期待する住人が集まり、体育館の中は人でパンパンだった。
できるだけ、早く済まさねば。
「早速ではあるが、合格者の名前を呼んでいく。教員は全12名。成績上位者順で呼んでいきたい。ただ、下位の者も厳しい条件下の元、生き残った精鋭だ。偏見は絶対に持たないでほしい」
俺は手元にある資料を一瞥し、答えた。
「一人目、ヴィーヌ」
「えっ?」
客席の前列に立っていたヴィーヌは、驚いた様子を見せる。
「ヴィーヌ、前へ」
「はっ、はい」
ヴィーヌに指示を出すと、階段を登り、壇上に上がる。
「彼女が首席のヴィーヌだ。皆、拍手を」
俺が紹介すると、観客者が惜しみない拍手を送る。
ヴィーヌはほんのり頬を赤らめる。
そして、深々と礼をした。
再び拍手が喝采する。
「ヴィーヌ、一言どうだ?」
「わっ、分かりました」
ヴィーヌは恭しく、挨拶を始める。
「みなさん、ありがとうございます。私はヴィーヌと申します。私の名前は、ここにいるガクトさんに付けてもらった名前です。今でも、この名前は誇りであり、大切なものです。さて、話は変わりますが、私がなぜ先生を希望したのか、少しお話したいと思います。私は、ここにいるガクトさんの指導する姿に、図々しくも憧れてしまいました。そして、悩みに悩んだ結果、先生を志すことに決めました。今、この結果が出て言うことでもないのですが、受験をして良かったと思います。私の本懐を満たし、そして未来を豊かにしてくれる経験となりました。だから、支えてくれたガクトさんと住人の皆さんに感謝します。そして、これから先生として立派に努めたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!」
美しく見事な挨拶は、全てを引き込み感動させた。
そして、その立ち居振る舞いに皆、惜しみない拍手を捧げた。
「はいっ、では次の者……」
俺は再び資料を一瞥した。
……帰り道。
夕暮れのオブリビアの街を、ゆっくりと眺めながら、帰路についていた。
「ガクト」
優しい声が俺の後ろから響いてきた。
「ああ、ヴィーヌか。挨拶、お疲れ」
俺は振り返り、自然に話し出した。
「本当にびっくりした。私、首席だったなんて」
「ああ、正直俺もびっくりしたよ。一次試験、ほぼ満点だったからな」
「ええっ!」
「知らなかったのか?」
「自信あんまりなかったんだけど…」
「それ、他のやつの前で絶対言うなよ」
そう言って、お互いクスクスと笑った。
「まあ、とりあえずおめでとうだ。これは贔屓でも何でもない。お前が勝ち取った切符だ。絶対に無くすような真似しないでくれよ」
「うん、頑張る。ガクトも応援してね」
「ああ、俺のここでの初めての生徒の一人だからな。俺もしっかり応援するよ」
俺の言葉にヴィーヌは笑みを浮かべた。
「それじゃあ、私は先に行くね…」
「ああ、気をつけろよ」
ヴィーヌは駆け出し、少し進むと止まった。
「ガクト!」
「うん?」
ヴィーヌは再び俺の側へ戻り頬にキスをした。
「えっ!」
「じゃあね」
俺は呆然とその場に立ち尽くし、夕焼けと照れくささから、頬が赤く染まった。




