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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第二章 オブリビア建国編
40/70

ヴィーヌの本懐 悩み

「ルート選手、敵陣に切り込むっ! フェイントを躱して、ルース選手にパスだ! キーパーも逆を突かれ、反応が遅れた。ゴール!!!」

ルートとルースが手を合わした。

「わぁーーーーー!!!!

熱い青春展開に会場のボルテージも上がる。

そう、俺は今、サッカーを見ている。

パトラがプロデュースした次の案は、スポーツだった。

その第一弾として、サッカーが使われたのだが、先日の競天馬と同様に、住民達は造られたスタジアムに皆、集まっていた。

「盛り上がってるわね」

「そうだな。正直(やかま)しいが……」

疲れた表情を浮かべる俺の隣には、微笑を浮かべるヴィーヌがいた。

「これっ、サッカーって言うのね?」

「ああ。俺がいた世界では盛んに行われていたスポーツだ」

「へぇー。ガクトのいた世界って、いろんなものがあったんだね」

「まあ、そうだな」

俺はその内に顔が陰っていた。

「どうしたの?」

「いや、なんでもない。ただ……」

「ただ?」

「あんまり、いっぱいあり過ぎるのも、結構辛いもんだと思ってな」

「どうして?」

「以前、ゼロから生み出すのは難しいって言ったろ」

「ええ」

「まさにそれだ。物や考え方があり過ぎて、全く新しい物を生み出すことがしにくい。だから、人は先人の知恵に頼るしかない。何度も同じことを学び、何度も同じことを教え、その繰り返しをずっと続けなければいけない。それって、本当につまらないと俺は思うんだ」

「でも、私達の街では全てが初めてで、全部役立ってるでしょ。だったらいいじゃない。ポジティブに捉えましょうよ」

彼女は微笑を浮かべ続け、そう答えた。

「まあ、そうだな。今更、元の世界のことを顧みても仕方ない。生きるために、一方的に使わせてもらおう」

俺はそう言って、口角を上げた。

「ルース選手ハットトリック!」

「わぁーーーーー!!!」

ゴールネットを揺らしたルースに会場が歓声を上げる中、俺とヴィーヌは小さく手を叩いた。

その時の彼女の表情は、どこか悩みに満ちたものであった。




観戦を終え、スタジアムを出て行く中、俺はヴィーヌを連れ、帰路につくこととなった。

「そういえば、ヴィーヌはしたいことないのか?」

「…………っ!」

ヴィーヌは思わず、ビクッと震えたように見えた。

「うん? どうかしたのか?」

「ううん。問題ないわ」

「それで、どうなんだ? 何かやりたいことはないのか?」

「う〜ん、特に思いつかないかな」

ヴィーヌは表情を曇らせながら、そう言った。

「そうか。お前が望むんだったら、協力したかったんだが、無いなら仕方ないか」

「ええ、私は大丈夫だから」

俺達はその後、無言で歩き続けた。




「あっ、いらっしゃーい。ガクト」

「ああ」

俺はヴィーヌと別れ、ビストロティカに訪れた。

「今日はどうする?」

「ティカに任せるよ。何でもいいから、オススメを三品くらい出してくれ」

「分かった」

俺は暖かなロウソクの灯りに照らされながら、膝をついて耽っていた。

一緒に暮らしていた5人の中でも、一番世話になったヴィーヌにまだ何もしてあげられていなかったからだ。

「何もない……か。どうしたらいいか?」

俺が小さく独り言を漏らすと、ティカが料理を運んできた。

「はい、今日のサラダ。どうぞ、召し上がれ」

「ああ、頂きます」

体を起こして、フォークで一口。

ほのかな酸味が心地よい、美味しいサラダであった。

しかし、俺の顔は笑みを浮かべることができなかった。

「あら、お口に合わなかった?」

ティカは少し心配そうな顔を浮かべていた。

「いや、そんなことはない。いつも通り、美味しいぞ」

俺は、咄嗟に笑顔を作り、そう受け答えた。

「なら、よかった。でも、今日のガクト、何だか様子が変ね」

「分かったか。まあ、そうだろな」

「何かあったの?」

「聞いてくれるか?」

「私で良ければ」

俺は少し考え、ティカに話すことを決めた。

仄暗いロウソクの灯りが照らす中、俺は口を開いた。

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