パトラのお遊戯 カジノ
ルースが活躍して数日、俺は建設中の学校を一瞥しながら、街を歩いていた。
「もうやることはほとんど無くなったな。これは、いいことだが、なんだか寂しいな」
独り言を呟きながら、通りを曲がると、見覚えのない大きな建物が屹立していた。
「なんだこら?」
思わず、大声を出してしまった。
「こんな建物知らんぞ。一体誰が建てた?」
俺はそう言いながら、建物の様子を窺う。
外壁は赤黒か塗られており、金や銀を使った装飾が高級感を醸し出していた。
店舗の看板には、
「パトラズカジノ」
と記されている。
「パトラが関係してるのか?」
俺は疑問に身を任せ、不気味な建物の中へ入っていく。
中には紅い絨毯が敷かれ、女性が二人並んだ受付と、奥へと続く階段があった。
「これはこれはガクト様。何か御用でしょうか?」
受付の女性が中に入ってきた俺に問いかける。
「あっ、ああ。これは、パトラが作ったのか?」
俺は疑問に満ちた表情を隠して、そう言葉を返す。
「そうでしたか。パトラ様のところへご案内致しますので、ついてきて頂けますか?」
「ああ、分かった」
俺は受付の女性に導かれ、階段を上がり、最上階にあるパトラの部屋の前まで連れていかれた。
「パトラ様。ガクト様がおいでになられました」
「そう、分かったわ。部屋に入れて」
その言葉を聞くと、女性は扉を開けた。
部屋の中は絢爛豪華に彩られ、様々な装飾品がキラキラと輝いていた。
「では、私は失礼致します」
受付の女性は、恭しく部屋を出て行った。
「ガクト、よく来てくれたわね」
パトラは蠱惑的な笑みを浮かべ、そう答える。
「パトラ! なんだこの建物は? 俺は聞いてないぞ」
「ロイに伝えておいたんだけど、聞いてなかった? 私の頼みで、私に賛同する男達に作ってもらったの」
「なんのために?」
「お遊びをするためよ」
「お遊び?」
俺はパトラが言った意味がよく理解できなかった。
「この国には楽しいことが全然ない。だから、私がプロデュースして文化として広めるの」
「その一つ目がこれってわけか?」
「そうよ。ガクトの蔵書にあったカジノってのを再現してみたの。こういう賭け事の場は経済を回すのにうってつけでしょ」
よく分かっている。日本国では感じられているのだが。
「ロイに許可は取ったのか?」
「ええ、もちろん。快く了解してくれたわよ」
「なら、まあいいが。あんまり羽目を外すなよ」
「分かってるわ」
笑みを絶やさず、淡々と答えるパトラにある提案をされる。
「ガクト、折角だから見ていかない?」
「見ていくって、カジノをか?」
「ええ」
「まあ、そこまで今日は忙しくないし、見てみるか」
「なら、私について来て」
そう言って、重厚な扉を開き、手招きしている。
俺はパトラに従い、歩き始めた。
階段を下ると、騒がしい声が響いてくる。
「ベットはこれでよろしいですか?」
ディーラーがそう答える台には、おそらく魔法で再現されたであろうルーレットが、置かれていた。
ディーラーに相対するように、プレイヤー達が頭を悩まし、ベットのコインを数字の上に置く。
「では、ベットが確定致しました。参ります」
ディーラーはルーレットにボールを一つ投げた。
回転するボールをプレイヤー達はじっと見つめながら、手を合わせて祈っていた。
「カランカラン」
ボールが音を立て、窪みに入る。
「番号13番です」
「ああ〜」
プレイヤー達が皆天を仰ぐようにうなだれた。
「今回、当選された方はいないので、私の勝利となります。続ける方はいらっしゃいますか?」
「やるに決まってる!」
「ほら、ディーラーさん。早く早く」
「皆、楽しんでるな」
俺はその光景を見て、パトラにそう呟く。
「でしょう。ディーラーもプレイヤーも。初めてするのに皆ハマっちゃって。新しいことをするのが楽しいのよ」
笑みを絶やさず、パトラはそう言った。
「そうだな。これなら、カジノも大丈夫そうだ。でもくれぐれも、あまり客からむしり取るなよ」
カジノを照らす、仄暗い火の下、俺とパトラは微笑を浮かべていた。




