ルースの警備隊
「で、話とはなんなんだ?」
「まあ、美味い料理を食いながら、ゆっくりと語ろうじゃないか」
俺はルースを連れ、ティカのレストランで食事をしながら、話をしていた。
大事な要件をルースに任せようと考えていたからだ。
「はいっ、サンダーバードのソテー」
「おおっ、美味そう!」
俺は出てきた皿に目を奪われ、会話の内容を少し忘れてしまう。
「ガクト、いい加減にしろ! 用がないなら、俺は帰るぞ!」
「おお、すまんすまん。まあ、カリカリするな。はむっ!」
料理を食べながら、相手を諭す。はたから見れば、とても腹の立つ行為だ。
「で、結局何をさせたい?」
ルースは怒気を帯びながら、尋ねてくる。
「端的に言えば、この国を守ってもらいたい!」
ルースは、怪訝な表情を浮かべる。
「どういうことだ?」
「一言一句そのままだ。ルースには仲間を連れて、この国の警備をしてもらいたい」
「なぜ俺がそんなことを…?」
俺は微笑を浮かべて答える。
「お前が前言ってたろ。この街を守りたいって。その夢を叶えさせてやろうって言ってるんだ」
ルースは、一瞬呆気にとられるが、なんとか正気を取り戻し返答する。
「いや、別にその仕事をするのは構わないのだが、今必要なことか?」
「ああ。法律ができ、ルールとして定着すると、よく思わないと思う人間が必ず現れる。そうなった時、いざこざが起こって、結果的に国に悪影響を及ぼす。だから、それを取り締まる存在が必要だ」
「そんな重要なこと、俺で大丈夫だろうか?」
ルースは、自信なさげにそう答えた。
「大丈夫だ。お前の正義感と強さがあれば、きっとうまくいく」
俺は甘言を言ったつもりはない。ただ、事実を言っただけだ。
「分かった。やってみよう」
「そうか、それは助かる」
「はいっ、食後の紅茶だよ」
ティカは、ルースの就職を祝うように、とびきり美味しい紅茶をそっとテーブルに置いてくれた。
「まったく、この金ってのはいいな。稼げば何でも食べられる。何でも、いい思いができる」
一人の男が平日の昼間から、町中の食事処で豪遊していた。
「はぁ、全く最高だ。あの法律ってのも、バレなきゃ意味ないし、金を奪えば遊び放題。食べ放題。あの男もなかなかいいことしてくれるな」
その男は金を人から強奪しては、食事をする。
いわゆる、悪党というやつだった。
「おっ、いいやつみっけ」
男の前には、華奢な女性がいた。
男はその女性に飛びかかり、人通りの少ない路地裏へ連れ込んだ。
「おいっ、姉ちゃん。金をよこせ。そうすりゃ、痛い目を見させたりしないからさ」
「やっ、やめてください! 魔法を撃ちますよ」
「別にいいぞ。撃てるんだったらな。撃ったら、あんたが監獄行きだ」
「そっ、そんなこと…」
「法律忘れたのか? 他者への魔法の攻撃は、重大な犯罪だぞ」
男は下卑た笑みを浮かべ、女性を強く脅迫した。
「やっ、やめてください! これは必死に稼いだお金です」
「うるせぇな。そんなに痛い目を見たいのか。なら、お望み通り…」
「バァーーーン!!!」
爆音と共に、強烈な衝撃が走った。
「監獄に行くのはお前の方だ。そこの男!」
現れたのは、銀色の鎧を着こなし、剣を携えたルースだった。
いや、正確にはルースを隊長とした、鎧の騎士達であった。
「おっ、お前ら何だ?」
「我ら、オブリビア警備隊だ。そこの男、お前は今この女性を脅し、金品を奪おうとしていた。これは、恐喝罪に値する。そのため、今からお前を捕らえる」
男は嘲笑したような笑みを浮かべる。
「はっ、笑わせるなよ。こう見えても、俺の魔法の力は結構強い。お前ら全員吹っ飛ばしてやる」
「今ので、攻撃する言質をとった。逃げるなら今の内だ」
「はっ、何言ってやがる? いくぞ、ほらっ!」
男が凄まじいスピードで魔法陣を編んだ瞬間、ルースは男の懐に入り込み、備えていた盾で上空に男を押し飛ばした。
「ぐわっ!」
重力に従って、地面に激突した男にルースは切っ先を当てる。
「まだやるか?」
「いっ、いやーーー!」
男はべそをかき、地面に突っ伏した。
「逮捕しておいてくれ」
ルースは、仲間の警備に男を任せ、襲われた女性の元へ向かう。
「大丈夫でしたか?」
「はいっ、助かりました」
「人気の少ないところは危ないので、注意してくださいね」
「本当にありがとうございました」
女性は、深く礼をすると、ゆっくりと歩いて行った。
「全く、ガクトの言った通りになってしまったな。金銭関係の事件が多発している。警備隊のパトロールも、もっと厳重にしないといけないな」
ルースの警備隊が始まって以降、逮捕者は後を絶たない。
この国が本当の安寧を迎えるには、もう少しかかりそうだ。




