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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
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熱々の白粥

「おっ、目が覚めたか。本当によかった」

何とか自宅にたどり着いた俺は、金髪の少女をベッドに寝かせ、懸命の救命処置を行い、意識を取り戻すことができていた。

「よし、お前は栄養失調だから、消化のいい料理を作ってやる。少し待っとけ」

「…………」

「まあ、そんな体じゃ、話すこともままならないよな。何も気にせず、休んどいてくれていいから」

「…………」

俺は暗黙の了解を確認すると、部屋を出た。

訳も分からない世界に来たせいで、電気、ガス、水道といったライフラインは全くもって、使い物にならなかった。

そのため、家にあったライターと新聞紙、その辺に落ちていた木の枝などを使い、外で焚き火をしていた。

その上に土鍋を置き、米と災害時用に備蓄していた水、塩などを入れ、白粥を作る。

できた白粥を皿に盛り、少女の元へ運ぶ。

「調理師免許を持つ俺の自信作だ。消化の良さや必須栄養素なんかもしっかり考慮してある。さあ、食べろ」

スプーンに乗せた白粥を、そっと少女の口元へ運ぶ。

「…………」

少女は無言で首を振り、躊躇った。

「大丈夫。うまいから。ほら、食え」

半ば強引に、口に運ぶと、少女は咀嚼し始めた。

「よし、偉いぞ。食べられるだけでいいから、しっかり食え」

気のせいかもしれないが、咀嚼する少女の顔は、どことなく嬉しそうだった。




お手製白粥を完食すると、少女の表情は生気を取り戻し、明るいものになっていた。

(いまなら、話せるかもしれない)

「じゃあ、急で悪いんだが、この世界のことについて聞いてもいいか?」

「………………っ?」

首を傾げている。

(言語が違うのか?)

「ハロー?」

「………」

「ニーハオ?」

「………」

「オラ?」

「………」

「ボンジュール?」

「………」

主要何カ国の言語はペラペラなのだが、どうも通じないらしい。

(この世界独自の言語があるのだろうか?)

そう思った俺は、棚の中から紙とペンを取り出し、少女に渡した。

少女は訝しげな表情を浮かべていたので、実際に紙に文字を書くジェスチャーを見せ、少女に伝える。

しかし、彼女は首を傾げ、理解していない様子だ。

「もしかして、言葉がないのか?」

「……こ……と……ば……?」

初めて少女が、声を発した。

麗しい小鳥のような声だ。

少女の声のニュアンスからすると、どうやら予想通り、言葉というものが存在しないらしい。

「これは、困ったなぁ。言葉がなければ、どうしようもない」

そう困っていると、少女はゆっくりと立ち上がった。

「おい、大丈夫なのか?」

「…………っ」

服の裾を掴み、必死に何かを訴えている。

「おい、何だ?」

「…っ、…っ!」

少女は外を指差し、俺を引っ張って連れて行こうとしている。

「外に何かあるのか?」

言葉の意味を理解してはいないだろうが、首を縦に振っている。

「分かった、分かったから」

少女に導かれるまま、俺は外に飛び出した。

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