ティカのレストラン 新鮮な鶏肉
結論から言おう。
俺達は、新たな魔法を生み出した。
それは、ある種人類の夢であり、機械で実現できても、未だ夢となり続ける代物。
イコール、飛行である。
そう。俺は今飛んでいる。
肩甲骨から、体躯より遙かに大きな白い翼を生やし、空気の壁に乗って飛んでいるのである。
「うわっ、こえーーーー」
初めての体験に、不安が漏れるのも仕方ない。
高度2000メートルを猛スピードで滑空しているのだから。
「大丈夫? 酔った?」
そう言ってくるのは、レストランを開業予定のティカである。
「ああ、少し酔ったかもしれない」
何故こんな経緯になったのか、ご説明しよう。
数日前のことである。
日課のようになった、ティカとの食糧調達をしていた時のことだ。
上空から不自然な程巨大な影が差し込み、俺達覆った。
「なんだ?」
ふと、顔を空へ向けるとプテラノドンのような巨大な翼竜がいた。
「うわっ! やばそうだなー」
そう漏らす内に、翼竜はどこかへ去ってしまった。
「ねぇ。魔法を使えば空を飛べるんじゃない?」
ティカが袖を引っ張り、聞いてくる。
「う〜ん、重力を減らしたりできれば、浮かぶことはできるだろうが、重力っていうものの実体が掴みにくいし、常に魔法を使ってなければいけないし、現実的には無理かな」
「そっか……」
と、その場ではそれで終わったのだが、帰宅してからティカが魔法でこの翼を編み、実際に試してみると、意外と上手くいき、現在に至るというわけだ。
「あっ、いたいた」
見つけたのは、紅い鳥。全身を赤い羽毛で覆われ、火を吐く鳥。安直だが、ファイアバードと名付けたものだ。
「よっしゃ、やるぞ!」
「うん」
その言葉と共に、二人の鳥人は大きく、翼をはためかせた。
俺はパラレル飛行でファイアバードの懐へ飛び込み、手に持ったナイフで襲う。
「おらっ!」
すると、空の住人の赤鳥はひらりと攻撃を躱す。
「あれっ?」
「ガクト、私が」
すると、魔法で両手にナイフを作り出し、激しく回転しながら、赤鳥を切り裂く。
「つえーな」
「ガクトよりは、強いよ」
「ガァ、ガァ」
振り向くと色違いの黄色い鳥と青い鳥が、そこにはいた。
「ちっ、サンダーとアイスもきたか」
「大丈夫。任せて」
そう言って、数瞬で懐に入り、二色の鳥を斬りつける。
「はい、終わり」
「全色揃ったな。これで、十分だろう」
この三色の鳥は、それぞれ肉質が違って美味だ。それぞれ、もも肉、ムネ肉、手羽の食感と味がする。全種類揃えれば、様々な料理に使える。
「クゥオオオン!」
俺達が浮かれていると、何かの鳴き声がこだまする。
振り返ると、神話に出てきそうな天馬。もとい、ペガサスのような魔物がいた。
先程の鳥とは異なり、強烈な威圧感と存在感を放っていた。
「私が……」
「やめておけ! 今すぐ逃げるぞ」
放つ威圧感から、勝つのが不可能と判断し、その場を離れようとすると、瞬間移動でもしたように、眼前に詰め寄られる。
「クゥオオオン!」
しかし、甲高い鳴き声をあげるだけで何も攻撃してこない。
「危ない!」
ティカが反応し、ナイフを構えるが、ペガサスの放つ威圧感に怯む。
「クゥオオオン!」
天馬は、何かを懇願するように鳴き声をあげる。
「なんだ、何か欲しいのか?」
「クゥオオオン!」
俺はポケットに入れていたチョコを渡す。
「ほら、食えるか?」
そうして、手に置いたチョコを天馬は口にする。
どこか嬉しそうな顔をすると、俺の体に顔を寄せ付ける。
「おおっ! 懐いたぞ。これ、大丈夫じゃないか?」
「本当に?」
「クゥオオオン!」
そう言って、天馬は目を背中にやる。
「乗っていいのか?」
「クゥオオオン!」
オッケーぽいので、背中に乗らせていただくと、勢いよく駆け出した。
「おおっ、これはいい」
俺達は、そのまま空を駆け回り、二人の鳥人は一匹の天馬を連れ、帰路についた。




