ティカのレストラン 水の調達
俺は、この大多数の住人達の食糧を確保するため、料理したいと自慢げに言っていたティカと元住人のカント、数人の従者を連れ、街の外に出ていた。
カントは、数週間前に、元住人と名乗ってきた男のことだ。
案の定、名前がなかったので適当に俺が名付けた。
「カント、日本語には慣れたか?」
「ああ、まだ少し詰まるところもあるが、大体は大丈夫だ」
このように、ここの住人達は、言語を丸ごと簡単に覚えられる。
感受性が豊かなのだろうか?
「それで、住人達に例の件、言っておいてくれたか?」
「ああ、しっかりと言いつけておいた」
例の件とは、言語の習得と国の作成の手伝いだ。
言語の習得は、時間の問題だろうが、国を造るとなると、途方も無い時間と資源が必要になる。
そのため、魔法というチートを使って、急速に国力を高めている次第だ。
「ガクト、この辺に水が本当にあるの?」
「いや〜、正直言ってわからん。ただ、水脈があった限りは、湧き出ているオアシスか湖的なものがあると思うんだが……」
そう俺達は、こんな感じで、ずっと荒野を彷徨い続けている。
かれこれ三時間程、歩きっぱなしだ。
「おおっ! あれがそうではないか?」
突然声をあげたのはカントだった。
俺もその方向を見ると、確かに水平線のようなものが見える。
俺達は、その水らしきものがある方向へ、直歩いた。
「おお、これはなかなかだ」
カントの予想が当たり、そこには巨大な湖が存在していた。
「ペロッ」
ティカが勝手に試飲する。
「うん、使える。井戸水とほとんど変わらない」
「そうか。ならこれを利用しない手はないな」
この湖はかなりの大きさがあり、ある程度制限して使えば、かなり長期間使い続けることもできそうだ。
「で、どうやって運ぶんだ?」
カントが質問する。
「確かにな、ここから手運びだと、相当きつそうだ」
集落までおよそ3キロメートル。人力で運ぶにも限界がある。
「なら、前ガクトが教えてくれた水路を作ったら?」
「いい案だが、距離的に造るのに時間がかかる。その内に、水が枯渇してしまうよ」
「何言ってるの? こういう時こそ、あれでしょ」
「……ああ、そうだな。あれがあった」
俺達は持ち帰れるだけの水と妙案を手に持ち、帰路に着いた。
……翌日。
昨日とは打って変わって、集落中の住人を集め、集落から湖までの直線を数十メートル感覚で人が並ぶように配置した。
「よーし、みんな! 設計図は覚えたか?」
「「「覚えた!」」」
およそ数千人の声が辺りに響いた。
魔物が寄ってこないか心配だ。
「一斉に行くぞ! せーの!」
その掛け声で、俺のいる湖側の方から順々に魔法が発動されていく。
「ドドドドドドドドドドドドッ!」
轟音を立てながら現れたのは鉄塊、もとい金属製の水道管だ。
「隣同士の水道管を、繋げていってくれ! 設計図通りなら可能なはずだ!」
俺の掛け声に反応し、全長3キロの鉄塊が大層ご立派な水道管へと変貌した。
「ティカ、後は頼むぞ!」
「うん」
一番湖の近くにいたティカが頷きを見せる。
ティカが魔法を発動し、絡み合うように光が螺旋形になる。
光から現れたのは、スクリュー式のポンプだ。
「これでいい?」
「ああ、十分だ。これならいける」
そして、出来たポンプを水道管と湖の中に取り付け、手回しで水を吸い上げる。
「コボッ、コボッ」と鈍い音を立てながら、スクリューに巻き取られていく水は、水道管に勢いよく流れていく。
設計図通り、微妙な傾斜を立てて造られた水道管の中をポンプの勢いと重力に従って、ゆっくりと流れていった。
「うまくいったな。後は頼むぞ」
俺は従者の一人に、ポンプを任せ、集落に歩き始めた。
……一時間後。
「水は来ているか?」
集落に辿り着いた俺は、昨日のうちに作った貯水池に来ていた。
水道管の終着点は、貯水池の上に取り付けられている。
「ジョボジョボ」
「やっときたね」
俺の隣についてきていたティカがそう言うと、言葉に導かれるように少しずつ、だがどんどん水が溢れてきた。
「これでなんとかなりそうだな」
「うん」
俺は溜まっていく水を、少しの間眺め続けた。




