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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第二章 オブリビア建国編
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裏切りとの再会

「お前は誰だ?」

「…………っ?」

言葉にならない声をあげているだけだ。

「あんた、昔この街にいた?」

パトラが青年に声をかける。

「…………っ、…………っ!」

何かを訴えようとしている。

「すまないが、誰か魔法を使って翻訳してくれないか?」

「僕がやるよ」

そう言ったのは、ロイだった。

「はあ!」

魔法陣が俺と青年を包み込み、青年の言葉が俺の頭に浮かんできた。

「俺は以前、ここに住んでいたものだ。何かを感じ取り、長の命でこの場所に舞い戻ってきた。一体、何があった?」

俺は彼の言葉に少し腹が立ち、言葉にして、念じる。

「お前が、この街を裏切った元住人の一人か。ちょっと、礼儀がなってないんじゃないか?」

「いや、そんなことはどうでもいい。早く話を……」

「どうでもいい? こいつらがどんな生活を送ったかも知らないのにどうでもいいだと。帰れ。ここにお前が来る必要はない」

彼の言葉に激しい憤りを感じ、猛抗議した。

「す、すまない。詫びをいれる。だから、ここで何があったのかだけ教えてくれないか? それを知れば、俺は帰る」

「本当だな。何かあったといえば、まず俺がこの地に降り立ったってことと……」

「ちょっと待て。降り立ったとは、どういう意味だ?」

「文字通りだ。俺は異世界の住人で、ある日この街にどっかの誰かさんが送り込んだんだ。証明もできるぞ。お前らのような魔法も使えないからな」

彼は心底驚いたような表情を浮かべながら、話を続ける。

「……それで、他にも何かあるのだろう?」

「ああ、思い当たる節といえば、つい昨日この街を壊した魔物を倒したことだ」

「はっ……?」

「だから、あのデカくて黒い魔物を……」

「倒したというのか?」

「そうだ」

俺は、何分かぶりに口を開いた。

「おーい、ルース!」

「なんだ?」

「あれを持ってきてくれ」

「ああ、あれだな」

ルースは理解したように、どこかへ向かって小走りする。

……数分後。

「ほら、持ってきたぞ」

「な、なんだあれは?」

俺の頭に彼の驚嘆の声が漏れてきた。

「ほらよっと」

ルースが地面に置いたのは、タイラントドラゴンの首であった。

記念と勝利の証を兼ねて、首だけは燃やさずに取っておいたのだ。

ただ、あの臭いは見事に残留しているのだが……。

「これ、あの魔物の首だ」

「見たら、わかる。誰がやったんだ?」

俺は、5人の方に目をやる。

「こいつらだ」

「またまた、冗談を」

「冗談じゃないって」

「本当に?」

「本当に」

「この者達だけで?」

「この者達だけで」

「………そうか。理解できた」

彼は放心したように、その場に佇んだ。

少し、時間が経つと彼は、話し始めた。

「ありがとう。俺は居場所に帰るよ」

「そうか。結局、お前はどこから来たんだ?」

「それはまた追々だ。多分、また戻って来る」

「うん?」

言った意味がよくわからなかった。

聴き直そうとしたのだが、彼はもう歩き始めていた。

「で、あいつはなんだって?」

パトラが追及してくる。

「よくわからなかった」




……一週間後。

「ドドドドドドドドッ!」

建国のための作業をしている時、突然ぞろぞろと人がゆっくり移動する足音が、聞こえてきた。

「なんだ、なんだ?」

俺が音の主に向き直ると、およそ数千人の大旅団がそこにはいた。

「ガクトっ!」

音に反応したのか、5人も集まってきた。

「また、来させてもらった!」

魔法を発動して、そう伝えてくるのは、一週間前にきた青年だった。

「どうして、戻ってきた?」

「俺達をこの街に、もう一度住まわしてもらえないだろうか?」

懇願するように頭を下げながら、そう言った。

「なぜだ? この街を捨てたんだろう」

「俺達は、この街を離れて、彷徨っていた。やがて、辿り着いた安息の地で、資源を採取し、持っていっていた食料を切り崩して、生活していたのだが、それも限界に達し始めたのだ。だから、頼む。図々しい願いだとは思うが、どうか受け入れてくれ」

俺は暗い表情を浮かべ答える。

「すまないが、今の俺達にはこの数を養えるほどの力は持っていない」

「そんな……」

彼は悲しみに暮れる。

俺は暖かな表情で返答する。

「……だが、協力があれば、どうにかなるかもしれない。お前達は、しっかり尽くしてくれるか?」

彼の悲しみの表情は消え去り、喜びの表情が浮かびあがった。

「もちろんだ」

「そうか。なら、一つけじめをつけたいんだが……」

「なんだ?」

「この街から退去させた、長ってのに、こいつら5人に謝罪してもらいたい」

「なんだ、と…」

彼は焦りの色を見せる。

「私に何か用か?」

旅団の奥から、いかにも年老いた老人が顔を出す。

「お前が、長さんか。こいつらに頭を下げろ」

これは、脅迫でもなんでもない。ただのケジメだ。

「どうして、私が?」

「こいつらは、裏切られた住人と再び暮らそうとしている。それを叶えるには、それなりのけじめが必要だ。だから、間違った張本人に謝罪を求めているんだ」

「私は間違ったことなどしていない」

俺は溜息を一つ付き、言葉を選んで放つ。

「自分が全て正しいと意気がるな。少なくとも、この件に関しては、彼らの方が正しい。困難を乗り越え、強大な敵を穿(うが)った。それは紛れも無い事実であり、彼らが正しい証拠だ」

「ぐぬぬ」

長は、口をつぐむ。

そして、5人の前まで歩み寄ると、魔法を発動して、頭を下げる。

「すまなかった! あの時は、私も言い過ぎてしまった。だから、私達をこの街に住まわせていただけないだろうか?」

5人は、目を丸くして、俺に声を出した。

「あの〜、このおじいさんが、一緒に住むとかいってるんだけど、マジ?」

ティカが代表してギャルのような口調でそう言った。

「ああ、俺はそのつもりだが。嫌か?」

「どっちでもいいけど、得することとかあるの?」

「まあ、国造りは早くなるだろうな。あと、出来ることも色々と増えるはずだ」

「そう、ならいいわ。私達は、ガクトに従う。ガクトの意思は、私達の意思でもあるから」

「そうか。だってさ、長さん。よかったな」

俺は無邪気な笑みを長に見せつける。

「あっ、ありがとう……」

膝を落とし、涙を流しながら、長はそう答えた。

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