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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第二章 オブリビア建国編
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新たな目標

災厄の巨龍タイラントドラゴンとの戦いを無事生き残り、俺達は途方に暮れていた。

それはなぜか?

何もすることがないからだ。

魔物の肉も保存できる上、農耕もそれなりに安定してきた。

魔法を使い、守りを固めれば、正直優雅に暮らせる。

果たして、どうしたものか?

俺はそんなことを考えながら、戦いの翌日に巨龍を加工していた。

「ちっ、硬いなー」

発達した漆黒の鱗は、ナイフの刃が簡単に通らないほど、硬く強いものだった。

「くっ、くっさ!」

ようやくのことで、鱗を引き剥がし、巨龍の肉が現れたのは良かったのだが、掃除していないトイレに、生ゴミを長期間放置したような、とにかく形容し難い異臭を放っていた。

「これは、食えたもんじゃないな」

食べられないものだと勝手に判断し、近くにいたロイに声をかける。

「ロイ、これはどうも食えそうにない。焼いてくれ」

近づいてきたロイも顔をしかめる。

「うっ、くさっ! 確かにこれはダメそうだね。僕が責任を持ってやっておくよ」

「ああ、くさっ! 頼むよ」

俺は鼻を押さえながら、その場を離れる。

集落に戻った俺は、農業に勤しむティカとルースの姿を見つけた。

「おっ、そろそろ収穫できそうだな」

畑の野菜を覗き込みながら、そう答える。

「ああ、このキャベツというやつが特に良さそうだ」

「新しく植えた作物も、順調。8月頃にはできそう」

ルースとティカは本物の農家のようにそう答えた。

(ちな)みに、ティカが暦を使っている件について答えるとするならば、数字の概念や計算を5人が理解したため、現世界の暦に従い、カレンダーを作り、覚えているから使っているのだ。

カレンダーは、俺がここに来た3月末を基点に始めている。

「ガクト、これからどうするの?」

唐突にティカにそう聞かれた。

「どうするって言われてもな。あまり思いつかないしな。ティカは何がしたいんだ」

ティカは一切の曇りなく答えた。

「私は食料を育て、捕まえ、料理したい。それが楽しいもの」

「そうか、お前に合っているかもしれないな。ルースはどうなんだ?」

「あまり、想像したこともないが、強いて言えば、この集落を守りたいかな」

ルースは、生真面目な顔でそう答えた。

「ルース! お前、意識高いな」

「よくわからんが、ありがとう」

そう言うと、俺は笑いながら、二人と別れた。




俺は部屋に戻り、ソファーに深く座って、考え事を始めた。

「あら、先に帰っていたの?」

何かの作業をしていたパトラが、部屋に帰って来た。

「あっ、ああ。ちょっと考え事をな」

「考え事?」

銀髪を左右に揺らしながら、聞き返してくる。

「あの巨龍を倒してから、正直やることが思いつかなくてな。怠惰に過ごすのも悪くないかもしれないが、働かざる者食うべからずって言うし、何かしたいんだ」

「ふ〜ん」

あまり、関心がなさそうにパトラがそう返した。

「パトラは、何かやりたいことはないのか?」

「私? 私は特にないわ。基本的にしんどいのは好きじゃないし、遊べるならやってもいいけど」

「そうか。その答えが一番困るんだが」

「そんなこと、言われても知らないわ。考えつかないもの」

パトラは、それが当たり前のように答える。

「なら、ロイかヴィーヌが何がやりたいかとか知らないのか?」

「そうねー。ヴィーヌは分からないけど、ロイなら一つあるわ」

「ほおー、なんだ?」

「確か、何かを研究したいとか言ってたわね」

俺は納得するように首を上下に振った。

「研究者か。確かにロイに似合っているな」

「私には、何が楽しいのか分からないんだけどね」

パトラは、再び興味がなさそうな顔を見せる。

「ありがとう。参考になった」

「ええ。お役に立てたなら、よかったわ。それじゃあ、私はまた外に行くから」

そう言って、ゆっくりと外へ向かっていた。

「シェフに守護者に研究者、それに遊戯か。皆、やりたいことはあるんだな」

部屋の中に独り言の声が響く。

「ただ、それを出来る環境がない。なら、俺達で……」

俺は今後の方針の糸口が見えた気がした。




「で、報告ってなんなの?」

ティカが不満そうに言ってくる。

「こら、ここでは敬語を使いなさい」

「面倒くさい」

そう、ここは家裏の青空教室である。

俺はここに、生徒兼、仲間を集めた。

ある報告をするために……。

「で、結局なんなんですか。先生」

「ああ、今後の方針について説明をしようと思ってな」

「方針、とは?」

ルースが尋ねる。

「一言で言うと、『国』を作ろうと思う」

「国?」

皆、不思議そうな顔を浮かべる。

「そうだ。簡単に言えば、多数の人間が集まった共同体のことだ」

「どうして、そんなものを作ろうと考えているの?」

ヴィーヌが質問する。

「俺は皆の話を聞いて、少なくとも何かやりたい気持ちがあると知った。だが、現状それを満たせる環境がない。だから、何かができる環境を作る。国っていう明確な目標を立ててな」

俺の言葉に納得するように、皆頷く。

「………………っ」

皆の動きの中に、聞き覚えのない声が聞こえた。

振り向くと、俺の知らない青年が立っていた。

「誰?」

「………………っ?」

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