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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
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二つの朝日

5人は手を繋ぎ、組み合わせるように魔法を編んでいった。

「大丈夫か? 一発本番だぞ」

俺は眼前で広がる5人の苦悶の表情に、危惧をしていた。

太陽光を再現するなんていう、馬鹿げた魔法なんて使ったことなどなかったからだ。

彼らは現在進行形で、使ったこともない代物を生み出そうとしているのだ。

これは、途方も無い難易度だ。

「私達なら、作れる。…絶対、に」

ヴィーヌが苦しみながら、激励を飛ばす。

「できなくても、きっと、ガクトがどうにか、してくれる」

ロイが癒しの言葉を与える。

「あの魔物を倒して、今日の朝ご飯にしましょ」

ティカが希望の一言を放つ。

「絶対に俺達の街を、壊させない!」

ルースが強い意志を語る。

「今、私は最高の楽しみの中にいる。それを邪魔させるわけにはいかない」

パトラが熱く冷静に鼓舞する。

5人はお互いを信じ、ガクトを信じ、魔法を信じ、そして自分を信じて必死に(もが)き戦っていた。

その思いは、破天荒な奇跡を呼び込んだ。

巨龍が、外壁を瓦解させたと同時、5人の魔法陣が一つに合わさり、巨大な魔法陣を宙に描く。

彼らは今まで、並列つなぎのように打っていた魔法を、無理やり合体させ、直列つなぎのように昇華させた。

「「「「「いっけーーーーー!」」」」」

最後の希望として、叫び声をあげながら魔法が展開された。

………その瞬間。

景色が白一色に染まり、他色は一切の足掻きも許さず、消し飛んだ。

「シャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

白くなった世界に、災厄の巨龍の断末魔の叫び声が響いた。

巨龍を焼き尽くした光は、とても強く、そして優しく、暖かい、光であった。

その光は、時間と共に少しずつ消失を始め、白んでいた世界は、少しずつ色を取り戻していった。




「うっ、ううっ」

俺が目を覚ましたのは、光が消失を始めて、少し経った頃だ。

「終わったの、か?」

俺の眼前には、巨龍の倒れている姿と、壊された外壁、無傷の街、そして巨龍を凌ぐ大きさの魔法陣が映っていた。

「おいっ、大丈夫かっ!」

俺は倒れている5人の元へ走った。

「おいっ、おいっ!」

駆け寄り、体を揺する。

「ううっ、あっ、ガクト」

ヴィーヌが目を覚ました。

「おっ、終わったのか?」

「疲れた〜」

「うまくいったのかい?」

「動けないわ」

ヴィーヌに呼応する様に目を覚ました。

「よかった。みんな無事で」

俺は少し涙を浮かべながら答えた。

「それで、魔物はどうなったの?」

催促するように、ヴィーヌが聞いてくる。

「ああ、あの通り、見事に倒したぞ!」

俺は涙を拭い、巨龍を指しながら、勝鬨(かちどき)の声をあげた。

「終わったのね!」

「ああ。その通りだ」

俺の言葉に5人は、安心の涙と歓喜の喜びが現れた。

「「「「「ああああああああ!」」」」」

意味も文法もない叫び声が、彼らの心をはっきりと示していた。




「ガクト、本当にありがとう! 本当に天才だわ……」

ヴィーヌが俺を褒め称えてくれる。

「本当に天才だ」

「ああ、天才だね……」

「天才、天才」

「………天才」

呼応するように「天才!」と褒められた。

だが、俺は自嘲するように答えた。

「そんなことはない」と。

「どうして?」

俺の言葉に反論するように、強く尋ねてきた。

「あくまで俺の考えだが……。天才って、頭のいいことを指さないと思うんだ」

皆、疑問の表情を浮かべる。

「天才とは、人が成し得ないことを、才と努力を使って、生み出すこと。0から1を生み出すことなんだ。俺は結局、先人が生み出してきたことに頼りきり、ただ、記憶してきただけだった。それは、秀才とは言えても、天才とは言えない」

5人の真剣に聞く姿勢を確認し、続ける。

「1から10に変えていくことと0から1を生み出すことは、圧倒的に違う。後者の方が圧倒的に難しい。だが、お前らはそれをやった。0から1を生み出した。全くやったことない魔法を、あの土壇場で生み出した。だから、俺は言う。お前らこそ天才だと」

そう言うと、少しの間があり、皆笑みを浮かべ始めた。

「ふふふっ、そんなことないよ。少なくとも私達にとってはね」

ヴィーヌが答えてきた。それに続くように、言葉が飛んできた。

「ああ、俺達はガクトの知識が無かったら戦うことすらできなかった」

ルースは(たくま)しく、そう言った。

「食べ物も、ガクトはくれたしね」

ティカは可愛らしく、そう言った。

「色々、楽しませてくれたし」

パトラは麗しく、そう言った。

「そして、仇を取ってくれた」

ロイは優しく、そう言った。

「だから私達は、全員認めてる。ガクトが天才だったことを。たとえあなた自身が、そう認めてなくてもね」

そして、ヴィーヌは美しく、そう言った。

俺はその時、この世界に連れてきてくれた何処かの誰かに、本当に感謝した。

俺が感じていた喪失感を、取り戻した気がしたからだ。

「そう…だな。天才のお前らが言うなら、俺も天才かもしれないな」

俺は冗談を高らかに言った。

涙と満面の笑みを添えて。

「じゃあ、次はどうしようか? 何がしたい?」

俺は5人に投げかける。

答えはこうだった。

「わからない」

だったら、こう返そう。

「これから、考えよう」と。

魔法陣の太陽が姿を消しつつある中、夜が明けて、昇ってきた太陽が、俺達を強く照らした。

二つの太陽が見せる朝日は、俺達の将来を祝福するように、強く、穏やかに輝きを放っていた………。

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