希望の光
「ガクトの指示だ。出来る限り、たくさんの魔法を打つわよ」
パトラが、交戦している3人のもとに駆けつけた。
「了解だ。考えうるだけの魔法を打つぞ」
ルースが強く意気込む。
「あくまで、規模は小さくね」
遅れて駆けつけたヴィーヌが、助言する。
「魔法で殲滅するのではないのか?」
ルースが不思議そうな顔を浮かべる。
「ええ、攻略の糸口を見つけるだけよ」
「ガクトはどうした?」
「後方で、ギリギリまで調べるって」
少し険しい顔を浮かべながら、ルースは答えた。
「そうか、ガクトを信じるしかないな」
「ええ、ガクトは、私達の指導者で救世主だもの」
「ティカ、ロイ! お前らは、まだ魔法がたくさん打てる。頼むぞ」
「オッケー」
「わかった」
二人は、ルースの指示を受け、頷き魔法の準備に取り掛かる。
「まずは、これだ。いくよ!」
準備を終えたロイの手のひらには、魔法陣が浮かび上がり、光を放つ。
ロイが放ったのは、雷魔法だ。
タイラントドラゴンの上に、瞬間的に雷雲が立ち込め、一筋の雷が一閃。
ドラゴンの脳天に直撃した。
「シャアアアアア!」
ドラゴンは、痛みを感じるように声をあげた。
直撃したところは、数十秒の間焦げ、壁を破壊するドラゴンの動きを止めたが、少しした後、焦げは消え、動き始めた。
「くっ、やはりダメか」
ロイが落ち込みに暮れる。
それを無視するように、ティカが魔法を放つ。
「これなら、どう?」
ティカが放ったのは、地震魔法。
ドラゴンの周囲だけを、激しく揺らす魔法だ。
「嘘でしょ?」
ティカは思わず、そう呟いた。
なぜなら、激しく震える足場を意に介さず、悠々と作業のように壁を破壊する姿が、そこにはあったからだ。
「次は、私がいくわ」
そう言い放ち、すでに準備を終えていたパトラは、氷結魔法を放った。
瞬間、壁を攻撃する一本の足が、氷塊に変わった。
………が。
「やはり、効かないの?」
凍ることそのものに意味がないと言うように、凍った足を再び壁を破壊する道具として使い始めた。
「俺が、止める!」
そう言ったルースは、魔法を使い、硬質化した金属を、直接ドラゴンの腹から突き立てた。
巨大な金属の塊が、内側から体を抉った。
しかし、黒いオーラが少しずつ金属を侵食し、数分後には何事もなかったように立ち尽くしていた。
「私もやる」
ヴィーヌは、渾身の力で大火を作り出し、ドラゴンに浴びせる。
ドラゴンは、業火の渦に巻き込まれ、動きを止めた。
しかし、一年前と変わらずに黒いオーラが全てをなかったことにした。
「もう、一体どうしたら?」
そんな諦めと取れる言葉を言うと同時、再びドラゴンは、壁を破壊し始めた。
「すまん、な。俺が絶対、突破口を見つけるから」
後方で5人が打つ魔法と、それに伴う巨龍の反応を俺は固唾を飲んで見ていた。
「氷結、地震、物理は全く効果がなさそうだな」
ドラゴンの反応を見て、推測を立てる。
「雷と火炎は、少し動きを止めたが、あまり意味がなかった」
俺は見ていた。
この二つの魔法を放った時、ドラゴンに直撃する前に、一瞬巨躯が動きを止めたことに。
しかし、解せないのは、二つの魔法の反応の違いだ。
雷の時は、一瞬止めた後、すぐに起動しだしたが、炎の時は、一瞬動きを止めてからは、ある程度起動するまでに時間がかかっていた。何かを恐れるように。
「雷と炎。この二つの共通項はなんだ? それと、このタイムラグは何を意味してる?」
俺は今まで手に入れた知識を、刹那の速さで思い返した。
「雷と炎。この二つの共通点は光っていること。違っていることは、光の質だ。あの龍の反応からして、効果がありそうなのは炎だ。炎の光が何に関係している?」
俺はその時、前日にヴィーヌが話していたことをふと思い浮かんだ。
「ヴィーヌ、その魔物が来たその日、変わったことはなかったか?」
「う〜ん。特に無かったと思うけど、そういえば、いつもより暗かったかもしれないわね」
いつもより、暗かった。
なぜだ?
俺は自問自答を続ける。
光が少なかった。
何の?
夜に光るものは、月か。
それが何に関係する?
夜にしか攻めてこない。しかも、新月の日に。今日もその新月だ。
新月が意味することは……?
「そうか。そうだったのか。あいつの行動には全て意味があった。炎の光を嫌がったことも。夜の、しかも新月の日に来ることも」
俺は一つの確信を見出し大声で叫んだ。
「太陽だーーー! 太陽の光を作り出せーーー!」
そう、この龍は太陽光を怖がっていた。似たような紅い光を放つ炎に、反応していたのはそのためだ。
新月の日に来たのも、説明がつく。月光も結局のところは、太陽光が跳ね返り生み出された産物だ。それを感じ取り、巨龍は新月の日に来たのだ。
俺は、いや俺達は、光を見出した。
文字通り、希望の光を。
俺の言葉を聞き、5人は頷いた。
それと同時に、一斉に魔法を編み出す。
………壁の破壊までおよそ5分。
………夜明けまで、あと30分。




