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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
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タイラントドラゴン

俺は初めてその姿を見たが、ヴィーヌ達が話していたものより、圧倒的にやばそうであった。

全長10メートルはある体躯、それを支える強靭な足、その先に生える爪、全身を包むドス黒い鱗、凶悪な顔から覗かせる牙。

この魔物の持つ全ての要素が、存在感の凄みを増させていた。

「とりあえず、土手っ腹に一発、ぶち込んでやれ!」

「了解!」

「イェッサー!」

ルースとティカが砲台につけられた導火線に火をつける。

……数秒後。

「ドッカーン!」

「ドッカーン!」

爆音をあげて二つの鉄球が飛翔した。

「バン、バーン!」

二つの鉄球は、巨龍の腹に見事直撃した。

「…シェアアアア!」

巨龍が悲鳴をあげる。

「よっしゃ、成功だ。物理攻撃が効きそうだ。続けるぞ……?」

攻撃を受けたところに、謎の黒い瘴気のようなものが集まり、当たったことなどなんのそのと言いたいばかりに、傷は消え去っていた。

「おいおい。マジかよ」

ロイが大声で言ってくる。

「あれが、前言ってた、あいつの厄介な部分さ。どうする?」

数秒悩み、回答を出す。

「とりあえず、砲撃を続けろ。ロイがルースと交代して、打ってくれ」

「わかった」

砲台の元へ、ロイが走る。

「ルースっ!」

「何だ?」

「ロイがそっちに行く。交代して、前線に行け。その剣であいつを切り裂くぞ」

「了解した」

「ルースっ!」

ロイが砲台まで辿り着いた。

「ああ、頼むぞ」

「もちろんさ」

「ルースっ! もう一つ言っとくが、やばいと思ったらすぐ逃げろ。無駄死にする必要はないからな」

「心得た!」

俺の指示に、溌剌(はつらつ)とした返事をすると、猛スピードで巨龍に向かって行く。

「ヴィーヌっ! パトラっ! お前らはルースの援護だ。ルースがやばくなったら、盾を張って、援護しろ」

「わかったわ」

「いいわよ」

「シャアアアアアアア!」

巨龍は唸り声をあげながら、大きな爪を突き上げ、振り下ろしてきた。

「やばい、ルースっ! 退避しろ」

「いける、心配ない!」

ルースは振り下ろされた巨大な前足を、自分にぶつかる直前にスライディングするように回避。

即座に魔法を発動し、剣を硬質化させて、刹那の速さで切りつけた。

「シュピーーーン!」

鋭く、速く、振り抜かれた剣は、その姿を留め、反対に切りつけられた前足は、足の先端部分が、美しく切断されていた。

「あっぶねー、ルース危ないじゃないか」

「成功したから、いいだろう。それに、お前に見せてもらった回避術がうまく使えると思ったから、やってみたんだ」

こいつは、俺がジャイアントボアの時に見せたように、屈んで滑り込む動きを取り入れていた。こいつも学習しているのだ。

「オゥゥゥゥゥ…」

心なしか、巨龍も弱っているように見える。

「よし、攻めるぞ! やれー!」

一斉放射の指示をする……が。

「おい、ちょっと待て」

すぐに停止させる。

「ボワァーー」

不気味な音を立てながら、切られた足が黒いオーラに覆われていき、何事もなかったように再生していった。

「マジですか。これはもう、打つ手なしかもしれない」

俺はこの瞬間思った。

この魔物は、ふらーっと町に現れて、傍若無人に逆らいようのない暴力を振るう。

まさに、自然災害のように。

「こいつの名は、タイラントドラゴンだ」




俺が諦めの言葉を言ってから、形勢は明らかに逆転した。

タイラントドラゴンの爪は、岩でできた外壁を(えぐ)り、放たれる黒いオーラは、少しずつ外壁につけられた棘を侵食していった。

「やばいな。ガチでやばい」

俺は頭を抱えた。

「どうするの? これじゃあ、前の二の舞になる」

心配した様子で、ヴィーヌが言ってきた。

「ああ、そうなんだが。正直、弱点が見えてこない」

俺が、闇弱(あんじゃく)だったのか?

俺の考えが間違っていたのか?

追い詰められて、自己否定をしてしまう。

焦燥感に浸っている場合じゃないのに。

「ガクト、どうするの? このままだとやられてしまうよ」

パトラが追い打ちをかけるように、聞いてくる。

「そう…だな。規模が小さめの魔法を打ってくれ。とにかく、色々な種類で」

「わかったわ。皆にも伝えてくる」

そう言って、パトラは歩き出す。

「あの壁が持つのは、長く見積もっても、あと1時間ぐらいだ。そのうちに答えを見つけないと」

「私も、魔法を使ってくる。体が持つ内にお願いね」

「ああ、必ずやってやる」

ヴィーヌが走っていく。

さっき、自信満々に言ったが、正直保証できそうにない。

予測を立てるには、決定打に欠けるものしかない。

だから、今から見つけるしかない。

それが俺の役目だから。

「皆、頼む。限界まで耐えてくれ」

大声で呼びかける俺に、頷きを見せる。

……外壁の破壊までおよそ1時間。

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