災厄の再来
俺達はやれるだけのことはやったつもりだ。
魔物の攻撃方法、集落の防衛方法、予期せぬ事態のための対処策、ありとあらゆる状況を考え、対策をした。
「今日も、お疲れさん。よく頑張ったな」
「はぁ…はぁ…」
「ふう…ふう…」
「ほぉ…ほぉ…」
「ぜぇ…ぜぇ…」
「ひー…ひー…」
皆、それぞれのやり方で息を切らしている。
もちろん、魔法を使い続けた結果だ。
俺が教えて作ったのは、戦艦の砲台やその玉、ナイフの金属を使った、剣や槍、体を守る鎧などだ。
それを魔法の力を使い、再現した。
「いやー、思わぬ収穫があったなー」
疲れていない自分は呑気にそんなことを言う。
よく考えてみれば、とてつもなく失礼なことだ。
「それを…知る…ために…魔法…使い…過ぎ…だよ…」
息を切らして、ヴィーヌが怒りの表情を浮かべる。
「結局、魔法で疲れる予定だったからいいだろ。後で、色々食わしてやるからさ」
「それで…何…が…分かった…んだ?」
ルースが疲れた表情をしながら、尋ねてくる。
「お前らの魔法のことだ」
「今まで…の…こと…以外…でか?」
「ああ。と言っても、凄く単純なことなんだが…」
「話を…引っ張る…な」
ルースが苛立ちを見せる。
「分かった、分かったから。あんまりカリカリするな。その…魔法なんだが、再現する事象や物体が複雑だったり、規模がデカかったりすると、その分、体力の消費が激しいってことだ」
「どういうこと…だ?」
「例えば、この剣」
魔法で作られた、銀の輝きを放つ剣を手に持つ。
「意外と重いな。それでだが、この剣は結局のところ、刃、柄、鞘の三つのパーツで出来ている。装飾とかを省いたとしたら、案外単純な武器だ。これを作っていた時のティカは、俺が様子を見ていたが、そこまで疲れたようには見えなかった」
「そう、なのか?」
ルースがティカに尋ねる。
「まあ、そうかもしれないわね。案外、簡単に出来たかもしれない」
ティカの言葉を聞き、話を続ける。
「逆に、この砲台はどうだ?」
重厚で重量のある、兵器に触れて答える。
「砲台は、そもそもパーツも、材料も多い。爆発的な勢いに耐える金属、運ぶための車輪、打ち出すための穴、玉を送り出すための火薬の仕組み。そんな複雑で大変なこの砲台を作った時のパトラは、一回で行動不能になる程へたれこんでいた」
「本当なのか?」
「ええ……そう……ね」
少し訂正がいるようだ。現在進行形でパトラは行動不能だ。
「確かに、正しそうだな。覚えておこう」
俺は真剣な表情を浮かべて答える。
「そのことが分かった今、無闇に魔法を使うことをやめろよ。前も言ったが、使う時は、俺が指示する。指示されて気分を害するかもしれないが、絶対に後悔させないと俺は誓う。だから、頼むぞ」
皆、表情は明るい。
「「「「「もちろん」」」」」
その言葉は、集落中に響き渡った。
俺は部屋に戻り、ソーラーチャージャーで充電した、タブレットを弄っていた。
もちろん、電波が立つわけがないが、ネットを要しない機能は、電力があれば使えた。
「必要な準備物は、これでよしっと…」
魔法で生成したものを、タブレットに打ち込み、確認していく。
「あいつら、よく眠ってるな」
俺が深夜、作業を行っている中、5人はバズーカでも打ち込まなければ、起きそうもない程、深く眠りについていた。
「まあ、あんだけやったんだから仕方がないか」
今日の出来事を思い返しながら、5人の寝顔を眺める。
皆、気持ち良さそうに寝ているが、パトラだけは何かいやらしさを感じる。
セクハラをしたら、懲戒免職の上、監獄行きだ。
あれ、今どこにもお偉いさんも警察がいないんじゃないか?
なら………。
ダメだ。ダメだ。
俺は何を考えているんだ。
「すうー、すうー、すうー」
俺が至極くだらないことで葛藤している中で、寝息を立てながら爆睡している。
「全く無防備過ぎて、困ってしまうな」
独り言をずっと呟きながら、タブレットに目を移す。
「夜ってことに、何か意味があると思うんだがなぁ…」
何も思いつかない上、電波が無くほとんど使い物にならないタブレットを、親指でコツコツと叩く。
「ドドドドドドドドッ! ズドーーーーーン! ゴロゴロゴロ!」
「おおっ!」
急な揺れと、凄まじい落雷が俺を驚かした。
「近いな。もう来るか」
俺は規模の大きさに、そんな予測を立てる。
「ううっ……、ガクト?」
ヴィーヌがさっきの音で目覚めたようだ。
「ヴィーヌ、明日、多分魔物が来る。しっかり寝とけよ」
起きたばかりのヴィーヌに、命令するようにそう答えた。
………翌日の夜8時頃。
「いよいよだ。皆、準備はいいか?」
金髪の少女は答える。
「もちろんよ」と。
青髪の少年は答える。
「準備万端だよ」と。
赤髪の幼女、いや少女は答える。
「ぶっ飛ばしてやるわ」と。
茶髪の男は答える。
「今度こそ、倒す」と。
銀髪の美女は答える。
「せいぜい、楽しむわ」と。
皆、己の信念の元、覚悟を決めていた。
その覚悟に誘われるように、それは、ゆっくりと、堂々と、威圧的に近づいてきた。
「全て、予定通り、予測通りだ。万全は尽くした。あとは俺達が戦い抜くだけだ。さあ、知力と体力と魔法を使い、あの魔物を狩るぞ!」
「「「「「おおっ!」」」」」
その掛け声に呼応するように。
「ウオゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
凄まじい唸り声が、開戦の証となった。




