暗澹の一年
全てを失った集落は、見るも無惨な景色であった。
無限に湧き出ていた水や植物は、一切の姿を消し砂となり、吹き付ける砂埃が、ガタガタになった住居をより汚していた。
まさに、地獄。
棲みつくものなど皆無に等しい集落に、5人の愚者達は住むこととなった。
「まず、どうしようか?」
私は出来るだけ、体力の消費を減らすために、魔法の力を制限して使う。
「横たわってる死人達を、どうにかしなくちゃいけないんじゃない?」
パトラは道端で倒れている一人の住人を見据えて答える。
「そうね、一体どうしようか?」
「死人の処理なんて知らないから、住居の中に入れておけばいいんじゃない?」
あまり興味なさそうな顔でそう答える。
「まあ、亡くなった人も外に放置されるよりは、安心かもね。やろう!」
そう答えると、他の4人も頷き、行動を始める。
「ふっ!」
ルースが倒れていた人間を持ち上げる。
そもそも、ガタイが良く、力持ちでありそうなルースではあるが、硬直した死体を持ち上げるのは、苦労している様子だ。
「はっ!」
近くにあった民家に数人を運び込む。
「よし、これでいいだろう」
ルースが仕事の完了を知らせてくる。
「ありがとうね。助かったわ」
「いいや、お安い御用だ」
そんな掛け合いをしていると、私の服を引っ張ってくる者が一人。
赤髪の幼女、ティカだ。
「お腹すいた。どうしよう?」
「取りに行こうか? 全員で行く?」
ロイが会話に割り込む。
「いや、一人で行こう」
「えっ、どうして?」
「皆で狩りに行っても、僕達のこの力は大して変わらない。無駄に人員を割くよりは、誰かが狩りに行き、残りが力を温存して待つのが得策だと思う」
「なるほど。じゃあ、毎日交代制で狩りに行って、獲物を取りに行こう」
「了解した」
「分かったわ」
「オッケー」
皆の同意を確認して、誰が行くかを決める。
「とりあえず、今日は私が行くわ」
私は皆に了承を取り、一人、荒野へと歩き出した。
私達は、その日から毎日、交代制で荒野へ出向き、魔物を魔法で狩りながら、食料を手に入れていった。
ごく稀に見つかる、食べられる植物や、たまに空から降ってくる雪や雨には、何度も命を救われた。
しかし、虚しいことかな。魔物にも有限性がある。
何匹も魔物を取り続ければ、次第にエンカウントする魔物は減り、一匹も出会うこともなかった時もあった。
獲物が減れば、食料も減る。それに伴って、私達の体は徐々に痩せ細っていっていった。
それでも、私達は運命に抗った。
食べる量を管理し、節約や断食などを行い、なんとか耐え凌いだ。
しかし、運命は常に残酷だった。
寒さに震える季節になり、食料が今まで以上に枯渇した。
懸命に努力するが、それを嘲笑うように食料は底をつき、皆、満身創痍の状態になっていた。
「今日は…私の…番…ね。行って…来る」
お腹の減りと、意識障害からまともに伝えることもできないが、それを聞いている彼らも、頷くことが限界だった。
過酷な冬の季節をギリギリ生き残り、暖かくなり始めたある日、トボトボと私は狩りに出た。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
数歩、歩くだけで、息が切れる。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
呼吸するのすら苦しい。
「あっ、あれは」
霞む視界に見えたのは、何日振りかに見た魔物の姿であった。
「取ら…な…きゃ…」
私は全く力の入らない腕を、脳に無理やり命令させ、前に突き出す。
「はっ………」
魔法を放とうとした直前、視界が黒く染まり始めた。
「だ……め……。私…が……取ら……な……」
視界は全て黒くなった。
力も入らない。
何も考えることもできない。
金髪の少女は、荒野の真ん中で倒れた。
「……大丈夫か?」
その謎の言葉が、少女が最後に記憶した言葉だった……。




