表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
2/70

少女との出会い

「本当に何も無いなー」

独り言を垂れ流ししながら、学知は周りを見渡す。

外に出て、初めて気づいたが、民家らしきものは一つだけでなく、ポツポツと点在していた。

そう呼称して良いものか気になるが、一応集落らしい。

俺の家はその集落のど真ん中に、建っていた。幸い、大した傷は無いようだが、移動の際に消えてしまったのか、屋根は無くなっている。

部屋に一度戻り、護身用のナイフとフライパンを手にし、集落を散策することにした。

この集落の文明レベルは恐らく、縄文時代よりもひどい。農耕用の田畑もなければ、外敵を遮断する囲いすらない。誰かが攻め入らなくても、自然に消滅してしまうのが目に見えてわかる。

「それにしても、人気が無いな」

誰かが俺を呼んだとするならば、少なくとも一人はいるはずだ。

人間がいて欲しいという期待と不安を抱えながら、集落の中を彷徨う。




30分ほど、歩いてみたが誰も見つからない。仕方がないので、民家らしき建物に入ることにした。

ナイフに手をかけながら、最大限の警戒をして、民家に入る。

そこには、数人の人間が倒れていた。

「おい、大丈夫か?」

大声をかけ、呼びかけるが返事がない。全ての人間の脈を測るが全く感じることができなかった。

というか、皆、体が乾ききり、ミイラのようになっていた。

「死んでいる、のか?」

死体の状況や、ここの環境から、なんとなく死因は見当がついた。

栄養失調だ。

田畑すらないこの集落では、飢餓に苦しむのは当たり前だ。予測だが、この人気の無さは、飢餓で人が死んでしまっているか、生きていても苦しくて動けないのかのどちらかだろう。

死んでいては、どうすることも出来ないので、部屋を後にする。

部屋を出て、茫洋に広がる荒野を見つめた。 囲いが無い集落では、地平線までくっきりと見えた。

その中に一つ、人影のようなものが見えた気がした。

自分の考えに疑いを持ちつつも、一縷の望みをかけて、人影に向かい走った。




「ぜえ、ぜえ」

人影までは思った以上に距離があり、およそ400メートルほどを全力疾走した。

本ばっかりを読んで、運動をあまりしなかった弊害だろうか、息切れが治らない。

なんとかたどり着いたその人影は、紛れもなく人間だった。

腰ほどまでに伸びた、長い金髪をもつ少女だった。

「おい、おい、大丈夫か?」

「………………っ!」

「おっ、息がある。これなら助かるかもしれない」

折れそうなほど、儚く、華奢な体を慎重に抱え上げ、お姫様抱っこの形で持ち上げる。

まだ、息を切らしてはいるが、無理やり肺と心臓に命令を下し、もう一度走る。

はぁはぁと息を切らし、200メートルほど進むと、突然妙な呻き声が聞こえた。

声の主が気になり、振り返ると俺は絶句してしまった。

「何だ、これは?」

日本どころか世界にもいないであろう、未知の生物。

4本足で睨みつけるその姿は狼を彷彿とさせるが、似ても似つかぬ異形の存在だ。

「こいつ、まさか俺を狙ってるのか?」

そう一言を漏らした瞬間、猛スピードで襲撃してきた。

「やばっ………………」

「ボォーーー」

刹那のうちに、異形の存在は炎に包まれた。

俺に抱えられていた少女が、手を伸ばし何かをしていた。その手には円形の魔法陣のようなものが浮かんでいる。

「お前、一体何を………?」

少女は意識を失っていた。

「おい、おいっ、おいっ!」

起きた事象を瞬間的に忘れることを決断し、自分の部屋へ全速力で駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ