表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
18/70

災厄の巨龍

火に照らされ姿を見せたのは、異形の龍だった。

黒く、暗く、飲み込まれそうな鱗を全身に張り巡らせ、4本足で(まか)り通る。凶悪な笑みを浮かべると、全てを噛み砕く、牙を覗かせる。

その巨龍を目にした時、集落にいたもの一同は、思った。

非常に危険だと……。

「あの、龍を追い払うぞ!」

集落の皆に、その指令が知らされる。

「おう!」

「了解だ」

「俺らの力、見せてやるぞ」

指令に呼応するように、集落中の人々が頷く。

「私達も、やろう」

ヴィーヌはティカに確認を取る。

「うん」

ティカは暗黙の了解をして答える。

「よし、タイミングを合わせて、一斉放射だ。あの魔物を焼き尽くすぞ」

一人の男が勇敢に指示を出す。

「俺が指令をしてタイミングを教える。その時に頼む」

「了解した」

「分かったわ」

集落中の人々が、再び頷きを見せる。

「シャアアアアアアアア!」

巨龍は威嚇の咆哮をしながら、4本足の一本を、集落に向けて、叩きつけようとした。

「よし、今だ」

魔法で瞬間的に一斉送信された指令は、全くのラグがなく伝えられ、一秒の狂いもなく、火炎魔法が放たれた。

一つの標的に魔法陣が集まり、一つの大きな魔法陣となって、巨龍を囲む。

瞬間、紅い光と、衝撃波を伴って、巨龍が燃え上がる。

「ボワァァァァァァ!」

数秒のラグがあって、爆発的な炎から放たれた衝撃波は、轟音となって聞こえてきた。

「よし、やったぞ。魔物を討ったたぞ!」

指令を出した男が、勝鬨(かちどき)の指令を、魔法で伝える。

「よっしゃああ」

「やったのね」

「俺らの強さ、見たか」

千者千様、それぞれ歓喜の声をあげ、喜びを表現している。

「はあー、何事もなくて良かったわ」

私は緊張の糸が切れたのか、溜息をつき言葉のイメージを周囲の人に漏らす。

「溜息は、よくないわよ」

ティカが呆れた表情で、そう伝える。

「あなたも、ボーッとしてないで、少しは喜んだら」

ルースに向かって、そう伝える。

「はっ、本当なのか?」

ルースの苦い表現は、消えていなかった。

「何言ってるの? もう戦いは終わったでしょ」

ルースは苦い表情をより翳らせる。

「いや、違う」

彼がそう言った瞬間、炎の中から凄まじい勢いで、黒いオーラが溢れ出した。

「急いで、準備しろ。まだ、終わってないぞーーーー!」

ルースは、頭がどうにかなりそうな強烈なイメージを集落中に発信した。




黒いオーラは包んでいた炎をゆっくりと侵食していき、かき消していった。

「何だ、炎が消えていってるぞ」

ルースの魔法で、集落中の人々が、巨龍の異変に気付き始めた。

「倒したんじゃなかったの?」

「まだ、だ」

「いやぁー」

皆、上を下への大騒ぎで困惑していた。

「落ち着け! もう一度やれば、きっと倒せる」

先程指令を出した男が、再び指令を出す。

「了解」

「分かったわ」

皆、頷きを見せる。

「よし、今だ。いくぞ!」

千人の魔法の暴力が、再び、巨龍を襲う。

「ボワァァァァァァ!」

炎は天高くまで、火柱をあげた。

「やったか」

指示者の男がそう漏らす。

しかし………。

「オゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

唸り声をあげ、黒いオーラが現れると、炎は少しずつ、鎮火を見せてゆく。

「なぜだ?」

男は苦悶の表情を浮かべた。




そこからはいたちごっこだった。

魔法で襲いかかるが、黒いオーラでかき消され、再び魔法を放ち、オーラがかき消す。

ずっと、その繰り返しだった。

ただ、無限に回復する龍と、有限性のある魔法は、徐々に差を生んでいった。

染み出た黒いオーラは、植物や水を少しずつ侵食し、夜通し行われた戦いが終わる頃には、ほとんど姿を消していた。

「シャアアアアアアアア!」

もうすぐ夜が明ける頃、巨龍は諦めたのか、最後の唸り声をあげ、踵を返し、ゆっくりと歩き始めた。

ある程度、歩いたところで、漆黒の翼を広げ、地面を一打ちすると、猛スピードで飛び去っていった。

「やっ、やっと、……終わっ…たの…ね」

私がその言葉を漏らしている頃には、人々はほとんど行動不能になっていた。

その龍は、まさに災厄。災害。自然の理の様に過ぎ去るのを待つしかない。そんな存在であった。

ボロボロになった人々と集落を、幻想的な朝日がただ照らしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ