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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
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楽園の宴

「じゃあ、私達の過去に何があったか、話すね…」

ヴィーヌが覚悟を決めたように言った。

「ああ、頼む」

ヴィーヌは深呼吸を一つ付き、語り始めた。

「今から結構前。ガクトの時間の概念だったら、多分、一年前ぐらいに遡る。この頃は、まだこの集落も綺麗だった…」




「私が過ごしていた街は、今よりずっと綺麗で、人がいっぱいいて、笑顔に溢れていた」

ヴィーヌはそう語りながら、情景を思い出していた。

建築技術が発達していないため、住居は大して今と変わらないが、今のような荒野のど真ん中にただ取って付けたような景色とは全く異なり、集落の周辺には湧き水や植物が溢れ、一種のオアシスとなっていた。

その集落には、人々がおよそ千人ほどいて、お互いを助け合いながら、暮らしていた。

「その時はもちろん、今みたいに言葉を話せなかったから、魔法で会話をしていた。ガクトが言った通り、魔法を乱発していたら、倒れていたかもしれないけど、何もせずにでも生まれてくる水や植物で、食糧に困ることもなく、普段から魔法を使うことができていた」




………約一年前の集落の中。

「今日の分の食べ物は取れた?」

ヴィーヌの脳内に、イメージを伝えてきているのは、眼前に立つロイだ。

「ええ、そこらの魔獣を何匹かね」

黒こげになり、姿が全く分からない元魔獣を両手に引っさげ、答える。

「おお、これはまた立派だね」

興味深そうに元魔獣を覗き込む。

「でしょ、今日はパーティーだよ」

「それはいい。集落の皆に伝えておくよ」

笑顔を浮かべて、魔法を使う。

「ええ、よろしくね」

「じゃあ、また後で」

「そうね、また」

会釈を交わし、ロイと別れる。

これがこの集落の日常だ。

溢れる食糧を取り、魔法を使い、狩猟や会話に使う。

そのサイクルを続けることで、滅びることなく、発展し続けてきた。

資源や食糧は枯れる様子も見せず、これからもずっと発展していくだろう。

私は、集落の様子を見ながらそう思っていた。

……その日の夜。

「あら、久しぶり」

たなびく銀髪の美女。パトラが話しかけてきた。

「久しぶり。パーティー楽しんでる?」

「ええ。楽しんでるわ。あなたが色々獲ってきてたおかげでできているらしいじゃない。ありがとうね」

「ううん。たまたまうまくいっただけだから。まあ、今日は楽しんでいってね」

「そうするわ。他の男の人達がやけに私に話してきて、困ってたの。あなたと話せて楽しかったわ。また、会ったらよろしくね。それじゃあ」

手を振り、スタスタと歩いていく。

「ええ、また」

挨拶を交わし、パトラと別れる。

「男の人か…」

彼女が去った後、ボソッと言葉を漏らした。

正直、パトラに寄って集る男共は、バカだと思う。

彼女の魅力的な美貌に惚れるのは十二分に分かるが、何度も何度も振られている他の男の様子を見て、なぜ学習しないのか、心底理解しがたい。

集落の男共に勝手に呆れていると、赤髪の幼女が近づいてくる。

「ヤッホー」

軽快な挨拶で語りかけてきたのは、もちろんティカである。

「こんばんは。どうしたの?」

「全部食べたけど、どれも微妙。他に美味しいのないの?」

「そうね〜。私が何か作ろうか?」

ティカは笑みを浮かべる。

「ホント。なら、お願い」

「ええ。じゃあ私の家に行って、食糧を確認しようか」

「分かった。ついて行くわ」

魔法を使った会話で、了解を取り、自宅へ向けて歩き出した。

…その時。

「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!」

大地が悲鳴をあげ、揺れとなって暴れ出した。

「大地の揺れ。最近、多かったけど、今日はやけに強いわね」

耐震工事ができていない集落の中の住居は、今にも崩れそうになっている。

「ああ、私達の家が……」

ティカがその光景に悲痛な表情を浮かべている。

「大丈夫か?」

私達を見て駆けつけたのは、集落の中でもトップクラスの体躯を持った男、ルースだ。

「ええ、怪我はないわ」

少し安心した様子で、ルースが答える。

「そうか、それなら良かった。とりあえず、動くと危ないから、落ち着いて行動してくれ」

「分かったわ。ありがとう」

「ああ………?」

言葉を残して、踵を返そうとした彼は急に動きを止めた。

「ど、どうしたの?」

「な、何だあれは?」

彼が見ている方向へ目をやると、暗闇が映っていた。

「何もないじゃ……はっ!」

暗闇の中に、とてつもなく大きな影が見えた気がした。

その影は集落の火の光に照らされて、よりはっきりと輪郭を見せ始めた。

「あれは、何だ? 魔獣なのか? 今まであんなもの見たことがない」

おそらく集落の中でも相当の猛者である彼が、異常なほど焦りの色を浮かべている。

「オゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

けたたましい唸り声と共に、落雷と凍てつく寒さを引き連れ、それははっきりと姿を現した………。

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