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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
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文字と数字

家にあった小さなホワイトボードを、自宅裏の壁に釘で打ち込み止める。

5人には、余っていたノートとペンを渡し、準備は万端だ。

「じゃあ、まず『文字』と『数字』ついて教える」

「せ、先生!」

「なんだ、ロイ?」

「これって、どうやって使うの?」

ロイの目線の先には、机に置かれたペンとノートがあった。

「それって、私がガクトに初めて会った時に、見せてくれたものだよね?」

唐突にヴィーヌが遮る。

「ああ、そうだ。ヴィーヌは、理解していると思うが、ここのボタンを軽く押して、ノートに書くんだ」

実際に試して、ヴィーヌ以外の4人に説明する。

「すごい、黒くなった」

ロイが初めて見る光景に驚いたようだ。

「それで、そのノートとペンってのをどうすればいいの?」

興味のなさそうなパトラが尋ねてくる。

「俺が前の黒板に書くことと同じことを書け。よく見て、間違えがないようにな」

「そんなことでいいなら、楽そうね」

パトラが少し笑みを浮かべる。

「じゃあ、使い方は分かっただろうから、早速実践してもらうぞ」

「はーい」

気楽な声と共に、やっとの事で授業が始まった。

「改めて、『文字』と『数字』について、教える。まず、これを見てくれ」

書庫のような家から引っ張り出した、幼稚園児〜小学生低学年レベルの教科書を差し出す。

「これが、文字の基本、『ひらがな』だ」

「「「「「おお〜」」」」」

皆が歓声をあげる。初めて見るものに興味津々なのだろう。

「俺が全部この板に書くから、お前らもノートに写して、しっかり覚えろよ」

そう言って、50音を一頻(ひとしき)り書ききると、それに倣ってノートに書き込む。

「これを覚えておけば、うちにある本が読めるようになるはずだ」

「そうなの?」

ヴィーヌが特に食い付きを見せる。

「ああ、もっと難しい文字で書かれたのもあるが、一部の本は読めるはずだ」

「ガクトの家にいっぱいある本、気になってたんだ。それが読めるなら覚えなきゃね」

ヴィーヌがより真剣にノートに書き込む。

文字の発音と、形をしっかりと教えると、授業の前半戦は終わりを迎えた。




「次は、『数字』についてだ」

『数字?」

皆、疑問の表情を崩さない。

「俺も何度か言ってると思うが、時間や距離なんかを測るものだ」

「もしかして、昨日とかもそれに関係する?」

ロイが質問してきた。

理解が早い。

「そうだ。それは数字を使ってはいないが、関係はしている」

そう答えると、ロイが自慢気に笑みを浮かべる。

「とりあえず、文字と一緒で、前に書いたものを写してくれ」

0〜9までの数字を黒板に書く。

「これが、数字だ。形として覚えるのはこれだけでいいが、この数字を組み合わせることで、より多くの数を作ることができる」

「ガク…、先生!」

ルースが尋ねてきた。

「なんだ、ルース」

「その、3ってのは、どんなものなんだ?」

「3は3だが……」

答えが曖昧だが、仕方がない。『数字』そのものを説明するのは非常に難しい。人間が自分の感覚で生み出した抽象的なものであるからだ。

「そうだな……。例えば、これなんてどうだ?」

そう言って、足元に落ちていた石を拾う。

「ここに石がある。この石を机の上に1つ置く。今、机にのっている石は1個だ」

また、一つ石を置く。

「今、のっているのは2個だ」

最後の一つをのせる。

「これで、3つだ。机にのって石は計3個だ。この石の数を3というのだ。分かったか?」

顔をしかめている。

伝わらなかっただろうか?

「ああ、そうか。石がのるたび、数が増えているんだな。それで今の個数が3というわけか」

「そうだ。数が増えるたび、数字の位が増え、減るたび、数字の位が減る。この仕組みと数字の形を覚えていてくれたら今はそれでいい」

「それを覚えたら、何が得になるの?」

パトラが聞いてくる。

「そうだな……。説明が楽になるってのもあるが、ものを作ったりする時、ちゃんと理解していれば、うまくいきやすいってことが一番かな」

「例えば?」

パトラが追い討ちをかけてくる。

「家だ。計算っていって、数字を使ったことをすると、家が強固で綺麗なものができる」

「へぇー」

納得してくれたようだ。

「それじゃあ、そろそろ終わりにするか。暗くなってきたし」

太陽は地平線の陰に入り、もうすぐ沈みそうな様子だ。

「分かったわ」

ヴィーヌがそう答えると初めての授業は終わりを迎え始める。

「まだ、理解できてないことは、今後教えていくから、また頼むぞ」

「ああ」

ルースが声をあげる。

「それでは、授業を終わる。起立!」

皆、立ち上がった 。

「礼!」

「「「「「ありがとうございました」」」」」

挨拶を教えたつもりはないのだが、しっかりとやってくれた。

全くこいつらは本当に頭がいい。


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